現場寄稿/平成30年度 犀川遊水地五六川牛牧排水樋門整備工事

現場寄稿/平成30年度  犀川遊水地五六川牛牧排水樋門整備工事

樋門整備により内水被害から地域を守る

 

平成30年度 犀川遊水地五六川牛牧排水樋門整備工事
青木あすなろ建設株式会社 名古屋支店 犀川牛牧樋門作業所 青山 裕之


工事位置図

1.はじめに

木曽三川のうち長良川と揖斐川に囲まれた犀川流域は、もともと水はけが悪い土地であり内水被害が続出していました。そのため犀川流域の治水安全度を高めることを目的として「犀川遊水地事業」が昭和56年度に着手され、河道整備や排水機場の整備などが実施されています。本工事は、犀川遊水地事業の一環として、長良川支流の犀川に流れ込む五六川と起証田川の両河川断面を拡大するとともに牛牧樋門、牛牧排水樋門及び築堤護岸の整備を実施するものです。

2.工事概要

工事箇所

本工事は、2つの樋門(牛牧樋門、牛牧排水樋門)と築堤護岸工および仮締切工(二重締切 幅5.0m、高さ6.0m、延長293m)で構成されています。牛牧樋門は、内空断面 幅10.5m×高さ5.5m、延長22.5mの4連ボックスカルバートからなる大規模かつ大断面の樋門です。また牛牧排水樋門は、内空断面 幅6.3m×高さ3.4m、延長69.8mの2連ボックスカルバートで隣接する排水機場と地中で接続される構造となっています。

CIMによる3次元モデル

この2つの樋門は堤防周辺の安全性を確保するために、可とう継手や可とう矢板を用いることで堤防の挙動に追随することが可能な「柔構造樋門」が採用されています。現地地盤は軟弱で地下水位が高いため、施工時の安全確保のため地下水位低下工法(スーパーウェルポイント工)により地下水位を低下させながらドライワークで作業を進めています。現在、慎重に掘削を進めており、掘削完了後2つの樋門を同時に施工する予定です。

二重締切上の防じんネット設置状況

3.働き方改革の推進について

本工事では働き方改革の推進にも取り組んでおり、生産性向上につながる技術を積極的に導入しています。堤防開削では測量から施工までICTを活用し、築堤盛土でも転圧管理や法面整形でICT施工を実施する予定です。その他、樋門本体は構造が複雑なためCIMによる3Dモデルを作成し、問題点の早期発見や作業員の安全教育に活用しています。また現場は完全週休2日を実施中で、タブレットとスマートフォンを活用したテレワーク会議やペーパレス化にも取り組むなど様々な角度から現場を見つめなおし業務の効率化を図っています。

4.近隣住民に配慮した施工について

工事場所周辺の犀川遊水地は河川敷に遊歩道やグラウンドなどが整備されており、憩いの場所としても利用されているため、騒音、振動、粉じんなど近隣住民に配慮しながら工事をすすめています。特にこの地域は強い横風が起きやすいことから、現場の周囲に防じんネットを設置するとともに粉じん濃度を測定しながら作業を行っています。また砂利敷きの工事用道路は近隣家屋に近接しているため、工事用車両の粉じんを軽減させるためにタイヤ洗浄機の使用や散水による粉じん抑制対策を実施しています。

5.工事の現場見学会について

現場には多くの来客者が頻繁に来現されるため、来客者が安全に現場を一望できるように「現場見学ヤード」を整備しました。昨年、大学生の現場見学会を催したときは、建設産業に興味を持っていただくために工事概要だけでなく樋門の構造や周辺地域の歴史についても大型パネルを使ってできるだけわかりやすく説明しました。学生からは工事関連以外にも休日や残業、女性社員の待遇などについて様々な質問を受けました。近年、建設産業の労働環境は大きく改善されていることを説明すると、意外な様子の人や真剣に話を聞かれている人が多数見受けられ、多くの学生が建設産業に興味を抱いていると実感しました。

大学生の現場見学会の様子

6.おわりに

本工事はあまり例のない大規模樋門を2つ同時に施工する計画で難易度の高い工事であると予想されますが、品質向上に努め安全第一で工事を進めてまいります。
今後も現場見学会などを通じて安全で清潔感のある現場労働環境や最新の建設技術、周辺環境への配慮を紹介することで、多くのかたに犀川遊水地事業ならびに河川事業へのご理解を深めていただくとともに建設産業の発展に貢献していきたいと思います。

完成イメージ(点線内本工事範囲)


現場寄稿カテゴリの最新記事