建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年3月号〉

interview

【北海道新幹線特集】

北海道新幹線への期待―沿線自治体の首長に聞く

北海道新幹線は夢ではない


北海道八雲町長 長谷川 洋二
──新駅が設置される八雲町にとって新幹線への期待は大きいと思いますが
長谷川
新八雲駅の設置は決定済みで、将来的な可能性を見込んだ企業用地の先行取得などの行動により、地産価値の上昇効果も表れるでしょう。
  工事が始まれば、地元はもとより周辺の町村にも建設や雇用などの波及的効果も期待されます。新幹線開業後は輸送時間が短縮され、利用者の行動範囲が拡大。人的交流が活発化し、地域間の交通量も増大します。また、観光レジャー産業の活発化、都市機能の充実、そして八雲町の定住圏としての可能性も出てくるでしょう。
──新幹線開通後を睨んだ八雲町のまちづくりについてはどう考えますか
長谷川
隣駅が設置される長万部町は、新駅ができることにより中心市街地が活性化し、同時に在来線との乗り継ぎ拠点としての役割を持つようになる。これに対し、八雲町は、広域的な地域づくりに向けて他地域と連携し、周辺市町村につなげる役割を果たします。
そして、八雲町は日本海側とのアクセスが非常に良い町なので、日本海側との新たな流動軸を作ります。そのためにも、国道277号線の整備充実、道立広域公園の整備を一つの軸として考えていきたい。具体的には、高速道路へのアクセス、町の中心部から駅へのアクセス、そして駅周辺を大型の駐車場を中心にした多機能的な役割を持つ地域として整備しなければなりません。
──大阪の地下鉄はほとんどネットワークが完成しているようですが、今後の延伸計画は
長谷川
大阪環状線内は地下鉄ネットワークが独占的にサービスを供給しています。環状線外はJRと私鉄が頑張っていますが、それを補完する形で放射状に市営の地下鉄とバスが走っています。しかし、鉄軌道系に比べるとバスは輸送力および定時性に弱いので、どうしても機能が不十分になります。それをカバーするためにはJR、私鉄、地下鉄のネットワークをさらに充実させることが必要です。
そこで、既存のバス路線で、鉄道(地下鉄)に転換できるようなところについては転換していかなければなりません。現在、大阪市周辺の鉄道は路線の総延長が約270km。そのうち、地下鉄は約120km。残り150kmは私鉄とJRです。今後の地下鉄の整備計画としては、現在の120kmを150kmまで延伸する計画です。
ただ、大阪市周辺の輸送人員において、地下鉄はjr,私鉄の半分にも満たないのです。JRと私鉄は、郊外から大量の人を運んできますからね。1日に約560万人。それに対して地下鉄は約260万人くらいですから、まだまだです。バスと地下鉄のネットワークをもう少し充実させ、両者の乗り継ぎ料金を安くするなどして、市営の市場を広げていきたいところです。
しかし、本当のところはJR、私鉄、地下鉄、バスは競合関係にあるのではなく、協調しなければなりません。というのも、私たち公共交通事業者に共通のそして最大の敵は自家用車ですから。公共交通機関を充実させて、マイカーを使わなくても動けるようにすることが必要です。不便なところで、バスがうまく機能していないところは地下鉄に置き換えてネットワークを充実するということですね。
──新幹線は八雲町を全国にprする絶好の機会ですね
長谷川
東京を中心とした中央へ、“新幹線が停車する北海道の八雲町”の周知徹底を図るprを進めなければなりません。八雲町の住み易さを大きなポイントとして、高速交通体系網の中に組み込まれた町、町全体が自然美術館という自然を生かす町のprを含めて、福祉や文化や産業の充実強化を図り、新たな移住者の受け入れ態勢、定住圏をつくるprに努めていきたい。
── 一方で、現実には新幹線の着工時期についてはまだ不透明で、不安材料なのでは
長谷川
いや、今回の鉄建公団の申請は極めて重要なことで、いよいよ工事着工が現実的になってきたと認識しています。着工が決定すれば、現在の鉄建公団の技術ならば青森―札幌間は8年程で完成します。
問題は建設費ですが、その総額は約1兆5,000億円と言われていますが、8年間で見ればこれは可能な数字であり、新幹線は夢ではなく、具体的に実現間近なことなのです。在来線の問題は確かに大きな課題ですが、これは北海道全体で考えなければならないことでしょう。
──今後の取り組みについては
長谷川
国際標準で考えるなら、そのレベルくらいまでは持っていかなければ。何しろ見知らぬ土地で道に迷うほど、寂しく不安なことはありませんから。
──地下鉄は地下を掘るので、コストの削減は難しい課題ですね
長谷川
今年12月の東北新幹線八戸開業後、次のスキームが平成15年12月頃に策定されるようですが、平成16年4月から北海道新幹線が工事着手されるよう、関係諸団体とも連携を強化し、誘致運動を進めていきます。
八雲町は開基123年を迎えました。新幹線の八雲駅の実現に加え、高速自動車道のハイウェイオアシス、そして、道立広域公園が町の重要課題の3本柱です。この3つは町の将来の夢を描くためにはどれも欠かすことができません。1年でも早い実現に向かって、全力を尽くして努力していきたい。

home