建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2003年4月号〉
interview
市民の知恵と力を結集して長期展望で施策を推進
41年間の行政経験を活かして夕張市長選へ出馬
北海道夕張市前助役 後藤 健二 氏
後藤 健二
ごとう・けんじ
(平成15年4月の北海道夕張市長選挙に出馬予定)
昭和
16年
9月
22日夕張市生まれ
昭和
35年
3月
道立夕張北高等学校卒業
昭和
37年
4月
夕張市役所勤務
平成
元年
10月
夕張市観光商工部商工課長
平成
6年
7月
夕張市振興部長
平成
7年
4月
夕張市総務部長
平成
12年
4月
夕張市助役就任
かつては、石炭のマチとして賑わいを見せた夕張市。現在はその炭鉱も廃坑し、隆盛期には12万人もいた人口も、現在ではその1割弱に減少した。今期で勇退する中田鉄治夕張市長の後、市の舵取り役を目指す夕張市前助役・後藤健二氏に、現在の夕張の課題と、市長選に臨む基本姿勢などを伺った。
――市長選挙出馬に当たっての経緯は
後藤
昨年の3月議会で、中田市長が7期目は出馬しないと表明したことから、私の元へ、様々な団体から市長選への立候補要請がありました。
そこで、いろいろと考慮した結果、個人の力には限りがありますが、皆の力を借り、市民総出で力を合わせていくことを願い、41年間の行政経験を活かしながら夕張のマチをつくっていこうと考え、その先頭に、私が立っていきたい思いから、出馬を決意したのです。
――夕張市の現況は
後藤
やはり、財政問題が最も深刻です。かつては12万人もいた人口が、現在では約1万4,600人で、一割弱です。これほど大幅な減少は、全国でも例がないです。これは、産炭地特有の現象ですが、人口が減れば市税も減少し、地方交付税も減額します。今まで、色々な形で合理化などに努めてきましたが、今後もますます厳しくなることが予想されます。
私としては、みんなの努力で歳出削減をさらに図りながら、我慢すべき点は我慢し、健全化とまではいかなくても、他の市町村並みの財政力になるまで、長期的な計画を整えて立て直していきたいですね。
――夕張には、映画祭、炭坑跡など観光資源がありますね
後藤
観光は、今迄はハード面に投資してきましたが、これはおおよそ整いつつあります。今後は、ソフト面を中心とした施策を行っていきたいですね。特に今ある観光資産、その財産、施設を活かし、さらに充実を図りたいところです。
映画「幸せの黄色いハンカチ」のロケ地で使用した想い出ひろばがありますが、夕張に来た観光客のほとんどが訪れます。
――山田洋次監督の映画で使われたロケ地ですね
後藤
全国各地から夕張に訪れた人が、その建物の中に、黄色い小さい紙に色々な願いや希望を書いて、壁や天井などに貼っていくのです。これは金をかけずに観光客を呼ぶことができますので、今後はこのように、自然を含めて既存の資源、物を大事にしながら、費用を掛けずにアイデアを出していかなければなりません。そうした既存施設を活かし、それに付加価値を付けていきたいですね。
また、映画祭も今年で14回目を迎え、内外から非常に高い評価を受けているのですが、市民の間では、財政状況から存続に対して賛否両論があるのは事実です。ただ年々、映画祭に参加する市民ボランティアが増えており、それにより今年も成功したと思います。映画祭の果たす役割は、夕張にとっては大きいのですが、その賛否両論の意見を充分に聞きながら、今後も検討をしなければいけません。
――高齢者比率も高いようですが、福祉対策はどう取り組みますか
後藤
65歳以上の人口が5,300人以上で、約37%近くになります。そうすると、財政がいかに厳しくても、やはり福祉に重点を置かなければなりません。しかし、今までのように福祉を漠然と進めるのではなく、時代に沿った福祉、重点的に進めるべき福祉とは何かを検討しながら進めていきたいですね。
――中田市長は、高齢者による町おこしを提唱していました
後藤
夕張の高齢者は、非常に明るく元気なので、やはりマチづくりに参加をしていただきたいものです。高齢者は、人生という財産と資料を持っていますので、こういう人達にマチづくりに具体的に参加をしていただき、地域の中でサポートしてもらいたいですね。
――人口を増やす施策は
後藤
現在でも人口の減少に歯止めがかかっていないのですが、今後は、定住化を図るために、できるだけ土地を安く市民に提供しながら定住化を図っていきたいです。住宅を建てる時には、何らかの補助制度を整備し、持ち家の促進を進めていきたいと思います。
――合併問題については、どう取り組んでいますか
後藤
率直に言えば、合併論議は遅れています。事務レベルでは他の自治体と情報交換をしており、議会でも質問は出ていますが、議会内での論議、それから市民間での論議はあまり行われていません。
私が首長に就任したなら、合併のメリット、デメリットを明らかにしながら、早急に論議を展開し、市民の意見を色々と聞きながら、意見を集約して方向性を定め、合併問題を考えていきたいと思います。
ただ、夕張は他地域と距離が離れており、財政状況もあまりに厳しいため、近隣の由仁や栗山、栗沢などと議論をしようにも、夕張には声が掛かっていないのが現状です。実際、合併するだけがこれからのマチづくりではないわけで、合併しても色々と厳しいことを自覚しなければなりません。
したがって、どんな方向性になるかは分かりませんが、これから道や国とも相談しながら、夕張として合併論議をどうするか、市民の考えを優先させつつ、まとめていこうと思います。
――今後の展望と抱負は
後藤
本当は、あれも造るこれも造ると華々しく主張したいものですが(苦笑)、今の財政状況ではそうもいきません。とにかく財政の健全化に努めながら、現状は厳しいけれど、みんなで頑張って、みんなが住みやすい街づくり、お年寄りが安心して暮らせる街づくり、市民が将来に向かって安心できる街づくりを進めていきたいものです。
そのためには、市民の知恵と限りない力の結集を図りながら、長期的展望にたって、様々な施策を推進していきたいと思います。
HOME