建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年4月号〉

interview

第一次産業の再活性化が北海道のキーポイント

現場主義に徹して、行動で課題を解決していきたい

民主党北海道代表 衆議院議員 鉢呂 吉雄 氏

鉢呂 吉雄 はちろ・よしお
昭和 23年 1月 25日生まれ
昭和 46年 3月 北海道大学農学部卒業
昭和 46年 12月 今金町農業協同組合職員
昭和 63年 5月 今金町農業協同組合参事
平成 2年 2月 衆議院議員初当選(以降4期連続当選)
平成 8年 1月 大蔵政務次官
平成 8年 11月 衆議院石炭対策特別委員長
平成 13年 9月 衆議院農林水産常任委員長
平成 15年 1月 民主党副幹事長
平成 15年 4月 議員を辞職し、北海道知事選挙に出馬
平成 15年 11月 北海道8区から4区へ国替えし衆議院議員当選(5期目の当選)
平成 16年 1月 民主党北海道代表
昨年の衆議院議員選挙で、民主党は大躍進を遂げ、北海道選挙区は11人の当選を果たした。1月に行われた民主党北海道定期大会で、代表に就任した衆議院議員・鉢呂吉雄氏は、「民主党北海道に対する道民の期待は大きい」と語る。同氏に北海道経済の行方、参議院選挙に向けての抱負などを伺った。
――北海道で今、優先的に取り組むべき課題は何でしょうか
鉢呂
それは経済を再び活性化させることだと考えます。現在は、経済が少し持ち直してきたといわれていますが、それは東京や名古屋を中心とした輸出産業を中心とする一部の産業、地域での話です。かつては、時間の経過と共に、景気の波及効果が地方にも顕れるといわれましたが、今は決してそうではありません。輸出産業も下請けで行う部品製造などは、海外から逆輸入している状況ですから、その意味では、経済構造的には地方は切り離されていると私は感じます。
――再生に向けてのキーポイントは
鉢呂
やはり、北海道が自主的に自立的に再生を図っていくしかありません。その中での北海道再生のキーポイントは、やはり第一次産業です。北海道の第一次産業は、農産物や水産物の原料生産だけで終わっていることが、経済発展における最大の問題点だと、以前から常々言われています。それらを加工・製造し、最終商品として出荷するところまで考えていくことが、北海道経済の命題とされていました。
しかし、私はむしろ中央集権的な、型にはまった補助金や公共事業に依存してきた点に、経済発展の芽を摘んだ原因があると考えます。今後はむしろ民間の発想を視点の中心として変えていく必要がありますね。
民間企業の視点を持った上で、どのように民間活力を誘発するのか。それを地方分権という形で、北海道庁を中心に目を向けていくことが大切です。それによって、今までよりは遙かに少ない予算で、効果を現すことができるはずです。
――民間の活力を高めるためには何が必要と考えますか
鉢呂
例えば農業では、原料生産を地方で行っていますが、さらに製造・加工などで手を加え、札幌のような膨大な消費人口を抱える都市で販売するように、地産地消のシステムを、より具体化していかなければなりません。
特に、食の安心・安全性が求められており、肉骨粉やbseも外国からの輸入食品が原因だったことから、外国食品に対しての消費者の不信感は決定的になってきています。そうした背景から、北海道の第一次産品の有利性が発揮されてくるはずです。道民一人一人が、地域の経済人の発想というものをさらに大切にする一方、産地の農家も、個人またはグループで付加価値を自ら高めることが大事です。
実際に成功している例としては、蘭越で確立された蘭越米というブランドで、大変、好評を得ています。そうした独自ブランドというものを、確立すれば、北海道の再生の道は十分にあると思います。
――そのために行政側は、何を行うべきですか
鉢呂
オーストラリアでは、その農水産物の商品化から販売までも含めて州が行っています。北海道の食品産業の歴史は非常に浅いので、北海道も道庁には優秀な人材がいますから、そうした役割を担うならば、達成できると感じます。
――地元選挙区である北海道第4区の情勢は
鉢呂
第4区は、札幌市の手稲区、小樽市、そして後志の郡部と、3つの地域が一体になっており、私は、北海道全体を象徴するような選挙区だと思っています。札幌市は非常に人口の集中した、商業などの第三次産業中心の都市であり、小樽市は北海道の中では歴史のある経済都市で、郡部は農業や漁業を中心とする第一次産業の地域です。
――先の衆議院選挙では、8区から4区への国替え選挙となりましたが、大きな違いはありますか
鉢呂
8区と4区は、非常に似ていると思います。函館市が小樽市と同じく歴史のあるマチで、観光主体ですが、他の町村は農林漁業が主体です。そこで、8区での経験を活かして、4区管内の地域の活性化に貢献していけると思っています。
ただ、8区と4区の唯一の違いは、4区には人口が多い、大消費地である札幌が近くにあることです。やはり4区では、札幌と結びつけて、海外からの観光客を迎え入れることも良いのですが、札幌人との交流のための「場」と「人」というものを整備していけば、さらに観光産業の活性化に繋がると思います。
札幌の人々にとって、地方は癒しの地域として、魅力的だと思いますね。この4区には、北海道では数少ないサクランボやブドウ、リンゴなどの果樹や、野菜、魚介類も沿岸の魚種が揃っていることから、新鮮で美味しく安全な食糧を提供できます。
先般、東京の国会議員との会話で、「道民は北海道で一番旨い物を口に出来る、こんなに贅沢な地域は無い」と言われました(笑)。まさにその意味で、新鮮さだけは地元住民が享受できるわけで、その点で北海道の消費者は恵まれていると思います。
――先の民主党北海道大会で、代表に就任されましたが、今後に向けて党として求められる役割は
鉢呂
北海道議会の中では野党という立場ですが、国政では第一党という地位を得たので、道民に対する責任を持たねばならない立場です。この非常に厳しい北海道の経済と、道民生活を明るいものにしていくための責任は、我が民主党が負わなければなりません。
そのためにも、政治はしっかりとしたリーダーシップで具体的な構想を指し示す必要があります。
道政にあたっては、私は鋭く厳しい批判者の目に立つと同時に、やはりもう一つの政策を常に提示して、単に提案者が出したものについて判断するのではなく、自ら道議会の中においては、立法阻止、議員条例というものを積極的に行うこと。あるいは、執行者が考えたものに対しては、必ずもう一つの具体的な提案を示すことが大切です。
例えば、予算では対案、組み替え予算案を提示するという形で、顔の見える民主党北海道であると同時に、なによりも道民の考えを現場で聞き取るという現場主義に徹し、そして行動でそれを解決していくことです。
今回の焦点となった道警の報償費問題については、国費も7割くらいが含まれているわけですから、国とも連携して組織ぐるみで裏金づくりがあったとすれば、1日も早く事実を全面解明しなければなりません。道庁不正経理事件のように、全て明らかにして、道民と一体となって、道警が歩める仕組みを作り、早くこの問題を解決して、難しい経済や道民生活の議論に切り替えることが、当面は最も大事だと思っています。
――今夏に行われる参議院議員選挙への対策は
鉢呂
昨年の衆議院議員選挙の結果からいえば、道民の民主党への期待は非常に大きいと思います。現在、予想される参議院議員選挙の候補者では、無風選挙になってしまう恐れがあります。したがって、私たちは二人目の擁立ができるかできないかを、真剣に検討しています。
二人目を擁立すれば、道民の投票における選択肢を必ず広げることができ、また投票率も上げることができます。そして、なによりも二人当選させることによって、参議院の段階で、政権交代した際に、安定与党としての政権運営ができます。
――しかし、従来の民主党1、自民党1の形でいえば難しいのでは
鉢呂
確かに二人を当選させるのは、過去のシュミレーションからいけば、不可能に近いことです。やはり、候補者像というものを絞り、若さをアピールできる人や、清新なイメージの人、今までの候補者にない他の分野に精通した人、あるいは無党派の方々など幅広い支持を得られる人などですね。
また、どちらかといえば、我が民主党は経済界との連携が上手くいっているとはいえませんから、その経済界と連携のとれる候補者などを求めていきたいと思っています。
政権交代をかけた昨年秋の衆議院選挙は、一歩及ばずでしたが、北海道では第一党で過半数の議席をいただきました。その道民の期待を裏切らないように、民主党北海道の基盤、地盤を固めることが大事ですね。

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