建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年4月号〉

interview

地域特性を生かしたまちづくりを展開

人と大地がひびきあい躍進する快適都市

音更町長 山口 武敏 氏

山口 武敏 やまぐち・たけとし
昭和 34年 3月 北海道立帯広柏葉高等学校卒業
昭和 36年 4月 音更町に奉職
昭和 57年 4月 音更町振興部広報広聴課長補佐
昭和 58年 4月 音更町振興部広報広聴課長
昭和 60年 4月 音更町振興部企画課長
平成 4年 4月 音更町振興部市街地開発推進室長
平成 5年 5月 音更町振興部長
平成 9年 2月 音更町を退職
平成 9年 4月 音更町長に就任
今や全道一の人口規模を擁する町に発展した音更町は、市制施行に最も近い町といわれ、地理的条件にも恵まれて、農業生産や十勝川温泉を中心とする観光資源も豊かだ。今後ますますの発展が予想される音更町のまちづくりを、山口武敏町長に語ってもらった。
――町長1期目の4年間を振り返って、どう自己評価していますか
山口
この4年間というのは、十年計画で実施している第3期音更町総合計画の最終4年間を担当したことになり、この3月をもって、計画も終了となりますから、言うなれば総合計画の総仕上げにあたります。
財政的に苦しい町政運営でしたが、それでも生涯学習として図書館を完成させ、また生きがい・健康対策として温水プールも完成させました。どちらの施設も町民からの要望が強く、特にプールは、平成12年度は音更町の開町100年にあたり、その100年記念事業の一環として行いました。
 また、全道において、ほぼ85%の市町村が過疎化現象になっている中で、第3期計画で4万人と人口目標を掲げたところ、去年の12月に4万人を突破することができました。したがって、第3期総合計画の大まかな目標は達成できたと思っており、自分としてはおおむね満足しています。
――近隣の帯広市との連携や広域行政については、どう考えていますか
山口
これは、これからの時代背景にも関係しますが、連携については、音更町は1つの独立した自治体ではあるが、全ての政策や事業を市町村独自で行っていく時代ではないと考えています。これからは機能的なメリットを持ちながら、近隣の市町村と協力すべきだと考えています。
このことにおいては、十勝そのものは、広域行政が進んでいる方で、帯広を中心として管内19町村が、その周りに衛星上に位置してお互いに協力関係にあります。その中で特に音更町は十勝川を隔てた町で、その点から考えると、生活圏は帯広市になります。そこでつながりを強く持った上で、音更の力が及ばない時は帯広市の力を借り、お互いに連携を図りつつ、行政を行うべきだと考えています。
 また合併は、その町にとって発展につながり、町民が豊かになるメリットが無ければできません。行政が町の発展の可能性を探し出した上での結論になると思います。しかし十勝は先に述べた通り、独特の地域性がありますので、合併ではなく連携する事についてはやりやすい面があり、合併については色々と案は出ているものの、最終的に判断するのは町民であり、町の主体性を見失わないようにしなければなりません。
――4万人を突破した事で、音更が市制移行に一番近い状況ですね
山口
平成17年までは合併によって3万人、単独では5万人を超えなければ、市になれないという規定があります。確かに商業的には、観光事業がありますので、町と市では格が違い、経済面での発展のためにも、皆さんは市への昇格を願うでしょう。
しかし、現在では、第4期計画において2010年には4万5千人、もっと長期的にみれば、5万人のまちづくりを目指しています。その事によって生活用水や排水処理などが必要になっていきますので、それ以上人が増加するとなると対応しきれなくなり、再度まちを最初から再生を図らなければなりません。
 そのため、現在5万人をめどに、現存している施設を活用できる状態でまちづくりを行い、急激に発展するのではなく、地道にまた確実に発展するまちづくりを行っていきたいと考えています。
――音更町は、小麦と大豆においては日本一の作付け面積を維持するなど頑張りを見せていますね
山口
十勝は現在、16年連続の2千億円超の農業生産をあげています。音更はその十分の一の2百億円超です。音更における十勝の他の市町村と共通した産業と言えば農業になります。そこに同じ十勝として提携する面があります。
確かによく十勝以外の人々には「十勝の農業は頑張りを見せている」といわれますが、しかし問題点もあり、食料自給率や農業生産者の所得をどのようにして向上させるかということが課題と考えています。
 また気候風土に恵まれた土地のおかげで今までは、何でも作れる環境でしたが、果たしていつまでも原料出荷で良いのかということが疑問として残ります。これはやはり、付加価値を見出し、第2次産業化していき、農業生産品を「ブランド化」にもっていくべきだと考えています。今までの十勝では、各市町村がその「ブランド化」を個々で行っていましたが、これからは十勝ブランドとして取り組んで、知名度を上げていくべきだと考えています。
――ブランドという意味では、音更の十勝川温泉は全国的にも有名ですね
山口
私たちのまちの温泉は、「モール温泉」という、お湯としては大変珍しい植物性の温泉で、その点は恵まれていると思います。その事をキャッチフレーズとして「美人の湯」として取り組んでいます。しかし1つの観光地だけでは、現状以上の集客は難しいので、新たな体験型観光などが必要と考えています。
また十勝の他の市町村との連携を考えて、帯広空港とつないだ道東の入口として、また道東観光として売り出していきたいと考えています。
また観光だけには限らないことですが、まちづくりにおいて従来の考えを改め、まちが業者に頼るのではなく、まちが後押しをしてまち全体が1つになり考えていくべきだと思います。
――最後に2期目に向けての抱負を
山口
第4期計画をスタートさせるにあたって、まちの将来像として、「人と大地がひびきあい躍進する快適都市」を目指しています。これは、雇用の拡大や自然環境の保護、やさしく健やかな地域の創出、住民自治の推進といった政策を進めていく考えです。
そして財政を健全化していくことですね。これは、今まで公共事業などに投資したものを取り返すために、町民にはある程度のことを我慢してもらう事になってしまいますが、財政を健全化にすることが、第一の柱になります。
現代は町村の破産宣告もあり得る時代ですから、我が町もそうならないように抜本的な財政改革をしていきます。音更町が小さな行政府として機能するように、また自主財源を持てるようにと産業育成をしていき、「行政と住民とのパートナーシップ」に基づき、たくましいまちづくりを行っていきたいと考えています。

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