建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年12月号〉

interview

市町村との連携が開発行政のキーワード

事業を地域のソフトに合わせ組み立て直す

北海道開発局旭川開発建設部長 藤森郁雄 氏

藤森 郁雄(ふじもり・いくお)

昭和23年1月27日生まれ、昭和45年東京大学農学部卒。
昭和 54年 国土庁地方振興局東北開発室課長補佐
57年 農林水産省北陸農政局信濃川左岸二期農業水利事業所工務課長
59年 北海道開発庁農林水産課開発専門官
61年 農林水産省構造改善局建設部防災課長補佐
62年 群馬県農政部耕地建設課長
平成 2年 農林水産省九州農政局建設部設計課長建築第2課長
4年 北海道開発局農業開発課長
5年 農林水産省構造改善局建設部開発課農道整備調査官
6年 農林水産省構造改善局建設部設計課海外土地改良技術室長
7年 北海道開発庁農林水産課長
9年 7月 現職

国の行革、財政構造改革などで霞が関が大きく様変わりしようとしているが、藤森郁雄・旭川開発建設部長は市町村との関係を『開発局がこれまで推進してきたハード中心の事業は、それぞれの地域のソフトに合わせて組み立て直す必要がある。旭川はその実証の場として最適』と強調する。
――まず、就任の抱負からお聞きします
藤森
北海道開発局には、5年前に農業開発課長を務めていましたから2度目の勤務となります。
前職は開発庁の農林水産課長で、霞が関と地域とのギャップを自分で実際に体験したので、これからの開発行政をどうするかをじっくり考えてみたいと思っているところです。
世の中はいままさに変わり始めているところです。以前は地域が要望して霞が関が応えるという構造でしたが、今は行革や財政構造改革で霞が関が自ら変革を求められている時代です。こうした時代の変化を地域がどう受け止めているか、各地の首長と直接に話し合ってみたいと考えています。それによって変え方を考えていかなければなりません。その実証の場として旭川は適切な所だと思っています。
――管内の現状と課題については、どのようにとらえていますか
藤森
上川は優良な農業地帯を背景に豊かな地域だと思います。例えば、鉄道の廃止や営林署の縮小など構造変化はありましたが、これから変わっていくための体力も十分持っています。そうした潜在力を具体化したいものです。
大きな課題は農業、観光、建設業の三つだと思います。農業については、私は元来北海道農業の期待論者で、これからeu諸国と競っていけるのは北海道農業しかないと考えています。
そのためにも世界一高い農薬、飼料についてコストを下げる努力が必要です。民間に頼ってばかりいては出来ませんから行政のバックアップが必要です。米価が15,000円から13,000円に落ちるなど、北海道にとって農業は大変苦しい時期を迎えており、これが農業構造に大きな負担を与えています。だから、開発の歴史が浅く、負債の問題もあるので、国がどんな形ででも支えていく必要があると思います。
一方、展望が明るいのは観光です。美瑛、富良野に代表されるように、近年は年間200万人以上の入り込みがあります。これを管内全体にどう広げるかが重要です。
建設業は来年秋以降から深刻になります。3年間で15%の公共事業費が削減される予定ですから、建設業もダイナミックに変わっていかなければなりません。
――11月19日に名寄バイパスが供用開始になりますが、波及効果は
藤森
道路は地域にとって象徴的な施設です。特に名寄バイパスは将来、旭川から稚内までの高規格道路の中継点になるわけですから、産業や交通の要衝として地元が変わってくると期待しています。
――牛朱別川分水路事業も目玉ですね
藤森
川には良い面と悪い面があります。石狩川水系の中心にある旭川は川のウエイトが高く、河川災害が唯一の弱点です。それがなければ、おそらく全国で一、二を競う安全な都市なのですが。
中でも牛朱別川は危険な川です。昭和56年に牛朱別川の上流で氾濫しましたが、それを解消するための分水路が本年度、暫定的に供用することになります。900トンの流下能力がありますが、分水路によって上流から石狩川へ1,000トンが分流されます。暫定断面はこのうちトンを予定しています。
――管内の市町村との協力関係については、どのように考えていますか
藤森
自治体の首長さんが住民の意識を一番的確にとらえており、われわれが首長さんとよく話し合って方向を変えていかなければならない時代だと思います。
この春に、管内を3ブロックに分けて市町村サミットを開催し、現在は3、4人の首長さんごとに開発行政に関する会議を開催中です。直に話し合ってみると、開発局のハード中心の事業を地域のソフトに合わせることが重要だと感じます。そうした意見交換によって現行の枠組みを変えていく必要があると思います。

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