建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ1997年7月号〉

interview〈スペシャルと〜く〉

市政は市民が創る

北海道旭川市長 菅原 功一 氏

菅原 功一 すがわら・こういち

昭和19年6月24日生まれ、旭川市出身、道立旭川商業高校卒。
旭川市議、北海道議会議員(当選2回)を経て平成6年11月旭川市長に初当選、現在に至る。

―市長就任2年半を振り返って

菅原 

市長に就任してから、私は市長室を開放し、多くの市民との対話につとめてきました。これを通して私は、市民のみなさんの郷土に対する愛着やまちづくりに対する情熱を肌で感じました。それだけに、市長としての役割と責任の重さを改めて実感しています。
就任以来、「市政は市民が創る」ということを基本姿勢として、市民参加による公平で公正、透明な市政運営に取り組んできましたが、現在、社会的にも経済的にも時代の大きな転換期を迎えています。また、市民の価値観も様々に多様化しています。こういう時代だからこそ、市民の視点に立って未来を見つめ、市民と力を合わせて、新しいまちづくりを進めていかなければならないと思っています。
―市長自身が力を入れている事業は
菅原
昨年、10か年計画の第6次旭川市総合計画を策定しました。
「水と緑に輝く北の拠点・旭川」をキャッチフレーズに、3つの都市像を目指しています。
1つ目は、健康で安心して、充実した生活を送ることができるまちを目指した「生涯充実都市」、そして、2つ目は地域経済の活力を高め、内外から多くの人が行きかう「交流拠点都市」、3つ目は豊かな自然と環境をいかしてまちの魅力を高める「環境調和都市」です。
こうしたまちづくりを進める上で大事なことは、やはり、いかに市民とともに市政を創っていくかだと思います。市民の視点に立って考えると、量的な充足だけではなく、質的な面を重視する必要があります。建物や道路などのハード整備においてもバリアフリーなど、より使いやすいように、市民の意見を反映したソフト面の視点を積極的に取り入れて、質の高いまちづくりを目指していこうと考えています。
―具体的な政策・事業は
菅原
重点的な取り組みとしては、最近、モータリゼーションが進み、郊外に大型商業施設が立地するなど、都心部の機能が相対的に低下しています。買物公園の歩行者数の調査でも、減少傾向にあります。このような都心部の空洞化を喰い止め、都心部の魅力を高めることが課題となっています。
幸い都心の旭川周辺部には広大で一体的な整備が可能な土地が残されています。ここの再生整備を「旭川駅周辺開発計画」として、総事業費1,000億を超える、旭川市の最も重要なプロジェクトとして取り組んでいます。
また、これからの質の高いまちづくりを進める際に、基盤整備においても、「うるおい」や「やすらぎ」が大切な要素となっています。そこで、シンボル並木やメルヘン街道といった「緑豊かな道づくり」や「街あかり」といったイルミネーションによる景観づくりを進めており、水や緑、光などをまちづくりに積極的に取り入れています。
旭川に転勤で来れられ方にお聞きすると、「自然が豊かで、便利。本当に住みやすいまちだ」と賞賛されています。旭川には、こうした住みやすい財産をたくさんもっていると思います。これをさらに磨いて、自分たちのまちに親しみと誇りを持てるまちづくりを進めていきたいと考えています。
―新年度の政策予算のポイントは
菅原
先ほどの第6次総合計画の3つの都市像に対応して、平成9年度予算では、「少子・高齢社会への対応」、「地域経済の活性化」「環境の保全・改善」の3つの柱を重点テーマとして取り組んでいます。
具体的な事業としては、「少子・高齢社会への対応」として、エンゼルプランの策定や子育て支援センターの設置、さらには、高齢者への24時間巡回型ホームヘルプサービス事業やショートステイを弾力化したミドルステイ事業などを新たに進めます。
また、「地域経済の活性化」については、頭脳立地法に基づく産業施策として情報通信分野の新しい技術開発に対する取り組みをはじめ、農業では、クリーン農業の推進など、地域特性を生かした付加価値の高い地域産業づくりを進めています。
旭川は、周りに豊かな自然が多く、都市にいながら自然の恵みに身近なところでふれることができます。3つめの「環境の保全・改善」では、こうした自然環境を大切に守り育てるとともに、環境問題への対応を盛り込んでいます。今年度中に、環境基本条例を制定する予定であり、環境にやさしい車の購入資金の融資や、街路樹のせん定枝や落ち葉を堆肥化する緑のリサイクル事業などを進めます。
―旭川市を中心とした道北の広域行政について
菅原
これからの時代は、1つのまちでいろいろな公共施設をすべてそろえる、いわゆる「フルセット主義」ではなく、近くのまちがそれぞれの特長を活かしながら、お互いを対等のパートナーとして、共同利用や役割分担をしながら連携していくことが大事だと思います。
このような考えから、市長就任以来、近隣の町には何度も訪問したり、また、懇談会を開かせていただいたりしています。その中で、町長をはじめ、いろいろな方々とお会いし、まちづくりや広域的な課題などについて意見を交わし、地方拠点法の指定など広域的な取り組みを進めてきました。
また、今後、留萌方面、紋別方面、名寄・稚内方面、さらには帯広方面への高規格道路の整備が進めば、内陸部と臨海部といった、さらに大きなスケールでの連携が可能になってくると思います。
―道や国に対する要望などについて
菅原
中核市制度ができて、北海道では旭川市がただ1市のみ対象となっています。
中核市の指定により、保健所の設置など保健行政や都市開発などの権限が委譲され、より主体的に個性的なまちづくりを進めることが可能となりますので、早期の中核都市指定を目指し、準備を進めているところです。今後一層の国、道の支援、協力をお願いしたいと思います。
また、旭川は北海道第2の都市として、札幌が持っている中枢機能の一部を担うことも考えられるのではないでしょうか。
旭川を含めて北海道全体では、社会資本の整備がまだまだ立ち後れています。北海道は広大な面積を有しているわけですから、高速道路などの高速交通網の整備によって、産業・経済や文化、医療などいろいろな面で広域的なつながりを強化して、それぞれの地域が均衡ある発展をすることが重要だと思います。

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