<1995年10月>

interview

都市の過密緩和に向けて地方分権を推進

東京都知事 青島幸男 氏

青島 幸男 あおしま・ゆきお
昭和 7年7月17日生、東京都出身
昭和30年3月早稲田大学第一商学部卒
昭和32年同大学院(社会学専攻)中退
在学中より放送作家、作詞家、作曲家、映画監督、歌手、俳優として活躍
昭和43年7月参議院議員(全国区)発当選
昭和56年7月「人間万事塞翁が丙午」で直木賞受賞
昭和61年7月参議院議員(比例区)に当選
平成元年6月議員辞職
平成 4年7月参議院議員(比例区)に再び当選
平成 7年3月議員辞職
平成 4月第13代東京都知事就任
今春の全国統一地方選で、“いじわるバアサン”で一世を風靡した青島幸男氏が選挙活動なくして東京都知事に当選した。下町の弁当屋に育ち、漫才の台本を投稿して認められたことを出始めにタレントの道へ。後に直木賞を受賞、植木等の「スーダラ節」など、一連のヒット曲の作詞も手がけるなど異色の才人であることはつとに有名。行政官である知事というには人物も画期的だが、当選の仕方も画期的で、地方政界では、その選挙手法を見習う動きも見られる。世界都市博の中止決定と補償問題、三信組問題、地下鉄サリン事件、オウム真理教解散請求など、着任早々から“いじわる”な難問にぶつかり、ここしばらくは幾分、顔色のさえない日々が続いているが、超過密都市・東京の抱える都市問題解決に向けて、独特な視点での取り組みが期待されている。

いじわるバアサン、いじわるな課題に悪戦苦闘
――一極集中排除と地方分権が叫ばれ、国でも地方分権委員会が発足するなど、地方重視の政策転換の取り組みが活発になってきました。そうした情勢下にあって今後、東京都の向かうべき方向、役割についてどう考えますか
青島
ご存知の通り、人口や、その他諸々の都市機能が東京都区部へ過度に集中したため、通勤混雑や住宅の取得難、災害に対する脆弱性といった大都市問題が深刻化していますね。
人々がゆとりある都市空間で、健康で文化的な生活を送るためには、これらの問題を解決することが極めて重要になっています。
この大都市問題の解決には、東京、神奈川、千葉、埼玉の東京圏を、真に豊かな生活を送れる地域社会として整備し、発展させていかなければならないと考えています。
そのためにも、東京都は関係県市と連携して、東京都区部に集中した都市機能の受け皿となる業務核都市などの育成整備と、地域特性を活かした居住環境の整備によって東京圏の再編整備を進め、職と住のバランスのとれたまちづくりを進めていきます。
また、都市圏を相互に結ぶネットワークを強化し、東京圏の一体的な発展を図るとともに、防災性の高い都市整備に努めていきます。
地方分権推進法が成立して地方分権の流れが新たな段階に入っていますから、地方自治体がまちづくりなどの地域の課題に主体的に取り組むことができるよう、権限や財源の移譲など着実な推進に向けて、その具体化を国に強く働きかけていく考えです。
――世界都市博の中止決定には、かなり苦悩があったかと思いますが、問題は決定後の余波ですね。先頃、諮問機関による補償に関する答申が発表されましたが、そうした動きを含めて現在の取り組み状況は
青島
そうですね、ご案内のとおり去る5月31日、私は熟慮を重ねた結果、来年3月から開催を予定していた世界都市博覧会の中止を決定しました。
都市博の中止決定以降、関係方面へはまず文書をもって通知しました。その後、私をはじめ副知事やフロンティア対策本部長が、国や国際連合、そして国内外の諸都市など関係各方面を訪問し、中止に関する事情説明を行ってご理解いただけるよう努めてきました。そして、6月1日には三副知事と関係局長で構成する都市博の中止に伴う諸区の課題や対応策を検討する「都市博中止に伴う対策会議」を設置しました。
この対策会議において、都市博の中止に伴って影響を受ける方々の相談に対応するため「都市博総合相談窓口」の設置を決定し、6月8日には東京フロンティア対策本部と財団法人東京フロンティア協会の中に設置しました。窓口開設以来、7月末時点では都と協会で合わせて約577件の相談を受け付けました。
また、6月15日には、都市博の中止に伴い関係者に生じた損害について、公正にして迅速、誠実な対応をするための補償基準づくりを行う「世界都市博覧会中止に伴う損害の補償に関する委員会」を設置しまして、8月8日に答申をいただき、できるだけ早期の策定を目指して作業を進めてまいります。
さらに、中止に伴い事業活動に影響を受けた中小企業などの経営の安定を図るため、7月18日から都市博中止に伴う特別対策緊急融資を開始しました。7月31日までに、207件にのぼる融資相談が寄せられています。
入場券の払戻しについては、8月1日から12月28日までの間、全国の旅行代理店などの窓口で取り扱うことに決定しました。払戻し金額については、基本的には第二期販売価格で払戻しをすることにしています。
――臨海副都心開発について、地方では一極集中排除の時流に逆行するのではとの声も聞かれましたが
青島
臨海副都心開発は、東京の都市構造の、いわば多心型への転換の推進と、国際化・情報化の発展への対応の二つを開発の目標として進められてきたものです。
これは東京一極集中を促進することを意図したものでは決してなく、都市構造を再編し、東京の中での業務集積の分散化を図るもので、都心への集積を適切にコントロールして新たな副都心への移転などを推進しようとするものなのです。
また、この開発計画はいわゆる多極分散型国土形成を基本目標とする国土庁の第四次全国総合開発計画など、国の広域計画とも整合を図りつつ策定されたもので、首都圏レベルで行われている分散化の促進のための業務核都市の整備とも軌を一にするものです。
臨海副都心開発は、平成7年度末で都市基盤の先行整備を中心とした始動期の開発は終了します。
その後の開発のあり方については、学識経験者らで構成される懇談会において検討をお願いすることにしていますが、東京一極集中の問題も含めて幅広い見地から、多角的に検討が行われるものと理解しています。
――ところで、この首都圏で阪神大震災のような震災が起こった場合、計り知れない被害が想定されますが、反面、関東大震災の経験もあることから、東京都は防災に関しては先進都市との評も聞かれます。現在、自治省消防庁では防災基本計画の改定を進めていますが、東京都の防災対策についてお聞かせ下さい
青島
現在、私を本部長とする「震災対策推進本部」の下に各局の部長を委員とする「地域防災計画検討委員会」を設け、初動体制や情報収集伝達体制の確保、ボランティアの受入体制などいろいろ検討を進めているところです。
7月26日には、阪神・淡路大震災で明らかになった災害対策を進める上での課題を震災対策推進本部において検討を行い、中間のまとめを公表しました。今後は、「地域防災計画災害編」の修正を年度末までに完了する予定です。
なお、9月1日「防災の日」前後の防災事業として、8月16日に警戒宣言訓練、23日から28日まで「防災フェア’95」を、8月31日から9月1日にかけては「東京都・府中市合同総合防災訓練」、そして、10月25日には「新島津波訓練」を行う予定です。
――一方、災害とは違った意味.で都市の安全性や防災を考えさせられた事件として、地下鉄サリン事件や警察庁長官狙撃事件などが発生しました。このため、首謀者とされるオウム真理教の解散請求と宗教法人法の改正論議が注目されていますが、特に法改正については信教の自由の問題もあり、難しいテーマといえるでしょう。これらについてどう考えますか
青島
そうですね、まずオウム真理教の解散請求については、宗教法人法第81条第1項第1号と第2号前段に基づき、6月30日、解散命令請求書を東京地方裁判所に提出したところです。
今後は、検察当局と協力してできるだけ早期に裁判所の解散命令が得られるよう努めていきたいと考えています。
一方、宗教法人法の改正については、現在、文部大臣の諮問機関である「宗教法人審議会」において、様々な議論がなされていることろですから、私としてはとりあえず、審議会における今後の論議を見届けたいと考えます。

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