建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2001年10・11月号〉
interview
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名将たちの故郷・名古屋市
国際交流拠点都市を推進するまちづくり
名古屋市長 松原 武久 氏
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松原 武久 まつばら・たけひさ
生年月日 昭和12年1月26日 |
愛知学芸大学 学芸学部(昭和35年3月卒業) |
昭和 |
35年 |
4月 |
守山東中学校教諭 |
昭和 |
44年 |
4月 |
神丘中学校教諭 |
昭和 |
59年 |
4月 |
大森中学校校長 |
平成 |
3年 |
4月 |
教育委員会学校教育部長 |
平成 |
5年 |
4月 |
教育次長 |
平成 |
7年 |
4月 |
教育長 |
平成 |
9年 |
1月 |
教育長退任 |
平成 |
9年 |
4月 |
名古屋市長就任 |
平成 |
13年 |
4月 |
名古屋市長再任 |
その他 |
平成 |
12年 |
8月 |
国際環境自治団体協議会理事就任 |
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わが国の東西の分岐点であり、交通の要衝である名古屋市は、古くから工業都市として発展してきた。財政規模2兆7千億円と、人口は200万人強で、まだまだゆとりと成長の望める都市だ。信長、秀吉、家康といった三代英傑の他、加藤清正、福島正則、前田利家といった数々の名将ゆかりの地でもある。名城・名古屋城を起点に、整然としたまちが形成されてきたが、国際都市博を控え、都市の国際化がさらに加速することが予想される。それだけに、国際社会に対応したまちづくりが求められる。松原武久市長に、名古屋の将来像とまちづくりの理念について語ってもらった。
- ――名古屋市の概況と近況はいかがですか
松原
-
名古屋は、名古屋城の築城に始まる400年近い歴史と文化をもち、明治以後はわが国を代表する産業都市の一つとして発展を遂げ、世界的な産業技術の中枢圏域である中部圏の中枢都市、「ものづくり」の中心地です。トヨタに代表される自動車産業やファイン・セラミックスなどの製造業が中心です。
中心部は戦災復興事業、周辺部は民間の土地区画整理事業により、市域のほとんどが市街化されており、100m道路や整然とした区画街路など、「グランドデザイン」によってつくられた都市であるのが特徴です。
面積は約326平方qで、愛知県は人口は約217万人。県内総生産は三大都市圏である愛知、岐阜、三重といった名古屋圏の中でも、トップで、全国の約1割、愛知県の製造品出荷額は22年連続で全国一という大都市です。
名古屋は愛知、岐阜、三重の名古屋圏にあっては、まさにセンター的な位置にあり、都市機能においても東京、大阪に比較的依存せず、全ての要素を備えていることが求められる立場にあるので、ここに来れば全てが揃うという、いわば自己完結型の都市構造となっています。
しかし、それでいて東京・大阪ほど過密ではなく、空間的・時間的なゆとりがあります。
- ――かなりのポテンシャルを持った都市であることが分かりますが、21世紀に入って、どんな都市像を理想とし、目指していますか
松原
-
昨年9月に、市は21世紀初頭の名古屋のまちづくりの指針となる長期総合計画「名古屋新世紀計画2010」を策定しましたが、この中では生活・環境・文化・産業のすべての分野にわたって、調和のとれた「誇りと愛着の持てるまち―名古屋」の実現をスローガンにしています。
これに基づき新世紀計画では、8つの都市イメージを掲げています。8つとは「福祉・安全都市」つまり市民が「ほっ」と安心して暮らせる福祉と安全のまちであり、「生きがい実感都市」つまり生涯学習、NPO活動など、市民がいきいきと暮らせるまち。循環型環境都市つまりごみ、地球環境問題への地域からの積極的な取り組みを促進すること。「快適空間都市」つまり花・水・緑の創出により、まち全体を公園のような雰囲気にすること。「にぎわい創造都市」つまり都心や港、堀川など、名古屋の魅力を再発見し、「ときめき」と「にぎわい」のあるまち。「文化ふれあい都市」つまり名古屋の誇る歴史や文化を育て、国内外へ発信すること。「情報・産業技術都市」つまり地域の情報化の推進と産業技術都市の新たな展開。「国際交流拠点都市」つまり観光・コンベンションなどを通じた活発な国際交流と情報発信と、ホスピタリティあふれるまちです。
- ――それらを実現するために、どんな政策を実施していますか
松原
-
基本的には、すべての分野にわたって調和のとれたまちづくりを推進していくことが必要ですが、最近の社会情勢などをふまえ、特に4つの項目に市政の重点を置いています。
一つは、安心・安全なまちづくりで、地域の助け合いの風土を育てるとともに、行政として本当に困っている人を必ず救うセーフティネットをつくることです。
二つ目は、環境先進都市づくりで、名古屋に新しい環境文化の風を起こし、循環型社会のトップランナーをめざすことです。
三つ目は、国際交流拠点都市づくりで、世界との人・もの・情報の交流を活発にするとともに、世界に発信する活力と魅力のあるまちづくりを進めることです。
四つ目は、名古屋独自の教育プログラムの推進で、「まちづくり」は「人づくり」ですから、名古屋の将来、世界の将来を担う子どもたちが、豊かな人間性を持ち、自分の頭で考え、判断し、実行できる、国際的に通用する人材として育つような条件づくりを進めることです。
- ――それぞれの政策につき、どのような事業に着手していますか
松原
-
安心・安全なまちづくりを実現するためには、福祉・医療政策が重要で、介護保険アドバイザー事業、在宅サービスセンターの整備、特別養護老人ホームの整備などを進めて介護保険サービスの充実を図っています。
特に高齢者のためには、ひとり暮らし高齢者への生活支援食事サービス、あんしん電話、自立支援事業を実施しています。
世帯を守る扶養者のためには、子育て支援窓口の充実、保育の充実、のびのび子育てサポート事業、子育て情報プラザの整備を進めています。一方、近年急増している子どもの虐待対策として、なごや子どもサポート連絡会議を開催したり、シェルターの設置を進めています。
(後編)
全国の自治体がそうであるように、名古屋市の財政も厳しい状況に置かれている。だが、国際都市としてのレベルアップに向けて、財政再建の課題に取り組みながらも、単なる緊縮財政とはせず、松原武久市長は、自ら教壇に立った経験を活かして独創性のある人材育成や、世界的な課題となっている環境対策、とりわけごみの減量化対策にいち早く実績を上げ、道筋をつけた。2005年の日本国際博覧会が行われる頃には、グローバルスタンダードに則しつつも、個性ある都市像が構築されるものと期待される。
- ――市長は、教育現場の経験もあるほか、教育行政の実績もお持ちですが、人材育成については
松原
-
名古屋独自の教育プログラムを推進しています。例えば、相談体制の充実、スクールカウンセラーの配置拡大、「ふれあいフレンド」の派遣、専門相談体制の充実などです。
また、きめ細かい教育のため、小学校1年生で30人以下の学習集団を構成したり、中学校では小人数指導、ティームティーチングの実施、新世紀学校づくり推進事業、開かれた学校づくりの推進として学習ボランティア制度、トワイライトスクールの推進、「夢・チャレンジ」事業などを行います。
- ――名古屋市では、環境対策や、特にごみの減量対策において、全国にもさきがけて実績を残しましたね
松原
-
そうです。環境先進都市づくりに向けて、地球温暖化防止対策など、環境保全施策を推進しており、1997年に環境保全のための国際的な会議を市主催で行いました。そこでco2を2010年までに20%削減する目標を立て、参加者の合意を得て共同宣言しました。これに沿って、名古屋市ではグリーンコンシューマー運動を展開する一方、自動車排出ガス対策として、低公害車の普及促進、ディーゼル車のNOX・PM対策も実施しています。
また、ごみ減量対策としては、資源循環型のごみ処理システムの構築、市民、事業者、行政が一体となった名古屋方式の行動計画(エコライフ・アクションプラン)を策定し、さらに「3rの積極的な推進」つまり生ごみ資源化システムの構築、使用済み製品の流通・再生利用の促進、リサイクル活動の促進、分別収集の徹底化を図りました。容器リサイクル法を実施したのは名古屋だけで市民の皆様のたいへんな協力を得て、大幅な減量につながったのです。
- ――最近はグローバルスタンダードが主張され、世界が標準化しつつありますが、まちづくりへの影響は
松原
-
名古屋市では、国際交流拠点都市づくりを進めています。交流基盤の整備として、まず中部国際空港の建設です。また、世界への情報発信、2005年日本国際博覧会の開催など、国際化社会に相応しい態勢の構築は着々と進んでいます。
あわせて、歴史ある名古屋のオリジナリティーを発揮すべく、名古屋城本丸御殿の復元も進めていく予定です。
経済面では産業文化観光を推進するとともに、ささしまライブ24地区を始め名古屋駅周辺地区新世紀グランドビジョンを策定しています。
- ――それらの政策執行上の課題、問題点は
松原
-
市は非常に厳しい財政状況にあり、行財政の改革が不可欠です。創意・工夫をこらして必要な財源を確保し、「簡素・身近・透明・迅速」な市政を推進することにより、新世紀計画の着実な実現を図っていきます。このために、3つの課題や方策に取り組んでいます。
一つは、市民−企業とのパートナーシップで、ボランティアやNPOなどの市民活動との連携、PFIを始め民間の資金・ノウハウの活用を進めます。
二つ目は、生活者の視点に基づくことを徹底するため、行政評価を実施し、「市民にとっての効果」という視点から施策・事業を評価・検証しています。
都市自治体の自主性の確立に向けては、自己決定・自己責任による真の地方自治を実現するため、地方分権の一層の推進による事務・権限の移譲と地方税財源の確立が課題です。
- ――財政再建と景気対策のバランスは
松原
-
名古屋市の財政は、平成12年度から歳入と歳出が均衡しない「赤字財政」となっており、非常に厳しい状況が続いています。平成13年度の収支見通しは、287億円の歳入不足となっています。
しかし、市民生活や地域経済に直接関わる基礎的地方公共団体である市としては、必要な行政サービス、社会資本の整備、地域経済の活性化施策を遅らせるようなことはできません。
このため、「名古屋新世紀計画2010」の実施計画の策定に併せて、行財政改革計画と財政健全化計画を策定し、時代の変化に柔軟に対応できる財政基盤の確立を図りながら、まちづくりを着実に推進することにしています。景気が低迷する中、名古屋の経済活力の維持向上につとめていく方針です。
具体的には、新産業の創出支援、情報関連産業の振興、研究開発機能の強化などが柱となります。
- ――昨年の台風による集中豪雨では、大きな被害を受け、そしてこの8月にも台風が直撃しましたが、治水対策に対する考えは
松原
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昨年9月の東海豪雨災害をふまえ、河川・下水道整備など、防災対策や、緊急雨水整備事業、河川激甚災害対策特別緊急事業、公共建築物の耐震改修などを推進しています。
しかし、治水対策というものは、広域的な取り組みが必要です。現況では、圏内の各市町村ごとに行われているのが実態です。どこの市町村でも、雨水は広い河川に流すのが基本ですから、結局、庄内川に集中して、その河口に位置している名古屋市に負荷がかかる形となります。
昨年の豪雨でもかなり危険な状態となったのですから、国・県レベルで、もう少し重点投資をして治水整備を迅速に進めて欲しいと思います。
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