〈建設グラフ2000年1月号〉

寄稿

宮城県の漁港 豊かな海と川に囲まれて

宮城県産業経済部 漁港漁場整備課長 高橋武志 氏

高橋武志 たかはし・たけし
昭和19年生まれ、宮城県石巻市出身、石巻高校、武蔵工業大卒
昭和42年入庁
昭和55年塩釜漁港工務課長補佐
昭和57年気仙沼漁港工務課長
昭和59年漁港課建設係長
昭和63年阿武隈川下流流域下水道技術次長
平成 2年古川土木技術次長
平成 4年漁港課技術副参事
平成 7年石巻漁港所長
平成 9年仙塩流域下水道所長
平成11年現職
水産宮城
本県は、全国屈指の漁業生産県である。ノリ、カキ、ワカメ、ギンザケなどの養殖業。イワシ、サバ、サンマ、イカ類を主とする沿岸沖合い漁業。そして南洋でのカツオ、マグロ漁と北洋でのスケソウダラ漁などの遠洋漁業が盛んで、その生産量は全国で第2位で約46.5万t(平成9年)と前年に比べて13.6万t(41%)の増加、海面漁船漁業漁家の漁家所得は563万円で前年に比べて112万円(25%)の増加となっている。
しかし、公海漁業の一部規制や国連海洋法条約の発効など遠洋漁業を始めとして年々漁獲制限が強いられている。
そのため、県では新しい増養殖種の開発、漁場づくり、資源管理型漁業の実践や先端技術の導入を図り、新たな水産県への転換を目指している。

漁港の概要
本県の海岸線は、ほぼ南北に沿い、その延長は856qにおよび、これは全国で11番目の海岸延長である。
本県の漁港は特定第3種漁港の気仙沼、石巻、塩釜を含め144漁港あり、海岸線における漁港の密度は5.9qに1箇所と日本一である。
全国の指定港数は、2,944港で、長崎県(290)、北海道(285)、愛媛県(195)に次ぐ第4位で、特定第3種は全国で13港あるうち本県は3港である。

【宮城県の海岸線】

855.8km
421.1km 146.3km 30.7km 254.7km
建設省
(49.5%)
運輸省
(17.1%)
構造
改善

(3.6%)
水産庁
(29.8%)

【宮城県の漁港】
種 別 県管理 市町管理 摘 要
第4種 1 0 鮎川
特定第3種 3 0 気仙沼・石巻・塩釜
第3種 2 0 女川・渡波
第2種 21 0
第1種 0 117
27 117 本土127港・離島17港

【主な水産物の生産量と全国順位(平成9年)】(単位:トン,%)
区分 水産物の名称 本県生産量 全国生産量 全国比 順位
漁業 マグロ類(ホンマグロ,メバチ等) 56,656 338,901 17 1
カジキ類(メカジキ,マカジキ等) 8,933 27,913 32 1
サメ類(ヨシキリザメ,ネズミザメ等) 10,561 21,324 50 1
オキアミ類(ツノナシオキアミ) 33,106 63,028 53 1
タラ類(マダラ,スケソウダラ等) 29,165 397,262 7 2
養殖業 ギンザケ 9,839 9,927 99 1
ホヤ 5,486 7,848 70 1
カキ(殻付) 47,906 218,056 22 2
ワカメ 16,936 70,054 24 2
コンブ 3,892 60,101 7 3

漁場環境の特色
宮域県の海岸線は、延長856qにおよび、中央に突出した牡鹿半島により南北に両分されている。
北は複雑な屈曲をもつ三陸リアス海岸を形成しているのに対し、南は一部松島湾を除き、平坦な砂浜海岸により仙台湾を形成している。そのため、牡鹿半島以北は岩礁域に富み、魚介藻類を多産するほか、小湾が数多く存在し急深であるため良港が開けているとともに、小湾利用の養殖業が盛んである。一方、牡鹿半島以南は松島湾を利用した養殖業並びに広大な仙台湾での漁業が盛んである。
また、本県沖合海域は、黒潮分派、親潮分枝、津軽暖流域等の寒暖流が交差するため、多種多様な水産資源の生産性が特に高く、金華山・三陸沖漁場は世界三大漁場として知られている。
本県には、特定第3種漁港の3港をはじめ144の漁港と10の産地魚市場があり、間近に控えた好漁場から水揚げされる多種多様な魚介藻類と多様な水産加工業の発達により、本県の水産業は全国有数のものとなっている。
水産業振興のための基本理念
本県水産業は、地理的な優位性から資源に恵まれ、全国有数の地位を確保しました。
しかし、生産の場である海洋の収容力には限界があり、また、海の恵みである生物資源も無尽蔵ではないことが知られ、漁場として利用している海や河川等の総体的な水環境である「海洋」と持続的利用が可能な生物資源である魚介藻類の「資源」は、いずれも過去から引き継ぎ、現在を経て将来も利用する貴重な財産です。
これら財産を未来に引き継ごうとするとき、将来を生きるにふさわしい水産業を担うため、『未来へつなぐ、ひと、海洋、資源』を、21世紀における水産業振興の理念に掲げ、水産業施策を総合的かつ計画的に展開し、4つの視点の下に施策を推進します。

【水産業振興のための基本方向】
【基本的課題】

○生産確保と経営の安定化
○衛生安全対策の強化と流通・加工体制の高度化
○交流と資源の活用による地域づくり
○豊かで美しい海洋の創出

【基本理念】

未来につなぐ、ひと、海洋、資源

【基本方向】
〈生産・経営面〉 〈流通・加工面〉 〈生活・文化面〉 〈管理・環境面〉
活力ある水産業の構築 豊かで安全な食生活への貢献 魅力ある漁村の形成 資源管理と海洋環境の保全
・漁業生産の安定と生産性の向上
・新時代に対応した生産体制の整備
・産地ブランド化の促進
・漁村・漁業者のパワーアップ
・衛生安全対策の強化
・多様な製品作りと販売体制の確立
・市場機能の強化
・消費者ニーズの把握と対応
・水産業のサポーターづくり
・海洋性レクリエーションヘの対応
・多様な交流の促進
・快適な漁村空間の整備
・資源管理型漁港の実践
・栽培漁業の展開
・良好な海洋環境の保全と創造
・再利用可能資源のリサイクル促進

活力ある漁業地域のために
水産業の基盤である漁港の機能の増進と安全性、快適性の確保及びその背後の漁村の生活環境の改善を図り、もって漁業生産の確保、流通の円滑化、漁業経営の安定及び快適で活力ある漁村の形成に取り組みを図っていく。
また、活力ある漁業地域の形成を図るため、モデル地区として指定した新マリノベーション地域の気仙沼・本吉地域において「気仙沼・本吉地方産業祭り」に参画し、観光や水産物の情報等を提供し、観光客の誘因及び水産物の消費拡大を図った。
さらに、インターネットにホームページ「http://www.pref.miyagi.jp/gyojou/」を開設し、地域観光や水産物の情報を全国に向け発信し、地域の魅力等をアピールしている。

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