建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2002年2月号〉
寄稿
大阪府建築都市部におけるこれからの取り組みについて
大阪府 建築都市部長 石川 哲久
石川 哲久 いしかわ・のりひさ
昭和23年1月1日生
昭和45年3月東京大学工学部都市工学科卒業
昭和45年4月建設省入省
平成 8年7月建設省住宅局住宅整備課長
平成 9年7月建設省住宅局建築指導課長
平成10年7月大阪府建築都市部技監
平成12年4月大阪府建築都市部長
■はじめに
我が国は、地価の高騰に代表されるバブル崩壊以降、長期にわたり経済成長率か低迷し、失業率も高水準に推移しておりますが、大阪は、我か国の中でも特に厳しく、「絶対的な衰退の危機」とも言える状況に直面しております。
このような中、国において聖域なき構造改革が提唱され、社会の制度や枠組みそのものが大きく見直されており、本府におきましても、昨年9月に「大阪版構造改革」とも言うべき「大阪府行財政計画(案)」を作成したところです。
この中で、府は、総合計画で目標に掲げた「暮らしが安心」「人が元気」「都市が元気」を目指して、厳しい財政状況の中、大阪再生に向け果たすべき役割をきっちり果たしていくことといたしました。
建築都市部としても、この3つの目標を目指して、国で提唱されている「都市再生」をキーワードに、今後、以下の各種施策を展開していきたいと考えております。
■美しいまちづくり
まず、大阪に人と企業を引き付けるために、「美しいまちづくり」に取り組んでいきたいと考えています。
具体的には、違法な広告物の発注を抑制するために、広告主の責任を明確化する屋外広告物法施行条例の改正や、氾濫する違法なはり紙や立看板などを地域住民等が主体的に撤去できる制度の創設など、違法屋外広告物対策の強化を行います。また、本年5月に施行される予定の建設リサイクル法を的確に運用することにより、建設資材の不法投棄の防止と最終処分場の延命化に努めてまいります。
■インナーエリアの再生
次に、防災面や住宅・住環境面に多くの課題を抱えるインナーエリア(大阪市縁辺部及びその周辺市街地)において、新しい都市拠点の形成と密集市街地の再整備を進めてまいります。
密集市街地の緊急整備は、昨年12月の政府の都市再生本部会合で、「都市再生プロジェクト(3次決定)」に盛り込まれました。大阪では、府内にある約6,000haの密集市街地のうち、特に大火の可能性の高い危険な市街地、約2,000haを重点地区として、今後10年間で整備することとしております。そのための総合的、先導的な取り組み地区として「寝屋川市大東沿道地区」も位置付けられ、未整備の都市計画道路を重点整備するとともに、これと一体となった沿道建築物の整備を展開していきます。
一方、これら「インナーエリアの再生」を集中的、重点的に取り組むためには、本府の財政状況下では、おのずと限界があります。このため、地方分権に伴う地方への税財源移譲が実現するまでの緊急的・過渡的措置として、地方公共団体の自主性・主体性が発揮できる「都市再生包括交付金制度(仮称)」の創設を、国に対して強く要望してまいります。
■福祉のまちづくり
まだ、高齢者や障害者などすべての人が安心して暮らしていける「福祉のまちづくり」に取り組んでまいります。
平成5年に全国に先駆けて制定しました福祉のまちづくり条例を、急速な少子・高齢社会の進展、障害者の社会参加意識の高まりなどの現下の社会状況を踏まえて改正するとともに、平成12年11月に施行された交通バリアフリー法に基づき、既存の鉄道駅舎へのエレベーター設置を進めてまいります。
また、約370団地、13万戸ある府営住宅においては、現在策定中の「府営住宅ストック総合活用計画」に基づき、建替に際して、バリアフリー化された住宅を全戸で供給するとともに、既存住戸や団地内のバリアフリー化、既存中層住宅へのエレベーターの設置、これに伴う住み替え制度の拡充などを行います。これらにより、バリアフリー化された住宅を、府営住宅ストック全体の、現在の約2割から、平成22年度までに、倍の4割に引き上げたいと考えております。
■おわりに
本府の財政状況は依然厳しい状況が続いておりますが、大阪が持つ都市機能や都市基盤等のストックを活用しながら、公民のパートナーシップのもと、長い歴史と文化資産を踏まえ、今後とも、建築都市部では、すまいづくりとまちづくりを総合的に進めてまいりたいと存じます。
密集市街地の整備イメージ
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