寄稿
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▲平取静内線 | ▲宿志別振内(停)線 |
▲比宇厚賀(停)線 | ▲比宇厚賀(停)線(フケマ橋) |
平成15年8月8日夜に高知県室戸岬付近に上陸した台風10号は、本州を縦断する北東の進路をとったが、北海道への接近に伴い本道付近に停滞していた寒冷前線の活動を刺激し、北海道の胆振・日高地方では、この前線が通過した8日から断続的に強い雨となった。
台風が三陸沖に進み、台風本体の活発な雨雲が入り始めた9日午後からは、日高地方では、1時間雨量が20〜30mmに達する激しい雨が降り続き、9日21時頃からは一級河川沙流川の東側に沿うように、細い帯状の強雨域が発生し、次々に強い雨域が進入し、10日1時まで猛烈な豪雨が継続した。
とくに、日高管内平取町のアメダス「旭」観測所では、9日22時までの1時間に、観測史上第一位となる75.5mmもの猛烈な降雨を観測した。
台風は、10日2時頃に襟裳岬付近に上陸し、同日6時に根室の北で温帯低気圧に変わったが、胆振・日高管内では、8月8日から10日にかけての3日間の総雨量は、広い範囲で100mmを超え、とくに前述の「旭」観測所で、389.5mmに達したほか、アメダス「日高」観測所で368mmなど、局地的に、350mmを超える記録的な豪雨となった。
日高地方の多くの雨量観測所で過去の大雨記録を更新した今回の大雨は、総雨量だけでなく降雨強度も猛烈で、アメダス「旭」観測所では4時間雨量が、既往最大の2.5倍の210mmを記録した。
これにより、各所で斜面崩壊や河川氾濫の被害がもたらされた。
降雨形態は、前線と台風本体の影響により、三山タイプであったが、二山目までに流域の土壌が湿潤・飽和状態になっているところに、降雨強度が最も強い三番目の山で、時間雨量40mm以上の強い雨が3〜4時間継続して降ったことにより、山腹斜面では土砂崩壊が多数発生するとともに、二級河川厚別川や一級河川貫気別川などの数河川で水位が急上昇し、河川氾濫などにより住宅、農地などに多大な被害を与えた。
室蘭土木現業所の公共土木施設被害は、8回にわたる災害査定を受け、河川で二級河川厚別川など244箇所、約244億円、道路で主要道道平取静内線など67箇所、約19億円、合計311箇所、約201億円が決定された。
今回の甚大な被害状況を勘案し、被害のとくに大きかった河川については、再度災害を防止するために、一定計画の元に河川改修的な視点を加えて災害復旧工事を実施する 「改良復旧工事」を国に要望し採択されたところである。
▲厚別川 | ▲沙流川 |
▲貫気別川 | ▲慶能舞川 |
実施する河川は、二級河川厚別川(L=19.9km)、一級河川貫気別川(L=7.6km)、二級河川慶能舞川(L=5.6km)、二級河川日高門別川(L=6.5km)、一級河川オソスケナイ川(L=0.9km)の5河川で、約112億円にのぼる改良費を加え、災害費とあわせ総額約220億円の事業費が決定され、今後2〜4ヶ年で整備を進めていく予定である。
当所の台風10号による復旧費は、災害費と改良費をあわせた総額は313億円となった。
また、河道改修とあわせ、山腹崩壊や土砂及び流木の流出が顕著であった河川については、上流域に砂防事業の実施を計画している。
ほかに、門別町、新冠町、静内町の7河川について、町による改良復旧工事が行われることとなっている。
これらの実施にあたっては、国有林などの治山事業とも調整を図りながら、地域の復興のために、恒久的対策となるよう努めて参りたいと考えている。
さらに、今回のような災害の対応には、従来のハード対策のみでは、技術的にも財政的にも限界があるため、今後、水位観測施設などの増設により河川観測体制の充実を図るとともに、関係機関との情報共有化に努め、ソフト対策とあわせた総合的な防災対策を検討し、地元自治体とより密接な関係を構築しながら、地域の一層の安全確保に努めていきたいと考えている。
室蘭土木現業所としては、一日も早く地域の皆様方が安全で安心して暮らせるよう、全職員一丸となって取り組んでいく所存ですが、今後とも、関係自治体をはじめ関係各位の皆様方のご指導、ご支援を期待するとともに、地域の皆様方のご理解とご協力をお願いするところです。
▲日高門別川 | ▲波恵川 | ▲新冠川 |