1 雨量データ観測システム
@ 雨量 日本全土を網羅する気象庁の気象業務法に基づく雨量観測システム(amedas)は、全国1,316箇所(平成8年9月現在)、平均17平方キロメートルに1基設置されているが、洪水対策としてこれを補完する建設省所管の雨量観測所は2,885箇所(平成8年9月現在)設置され、その大部分はテレメータでオンライン配信されるシステムがすでに構築されている。
従来、気象庁所管の雨量と建設省所管雨量計、あるいは地方自治体が設置したデータラインで活用するシステムが出来ていなかったが、地方自治体とのオンライン接続については、平成8年度から5カ年計画で情報システムの整備を概成させる予定である。また、気象庁とのオンライン接続については、建設省と気象庁は共同で水防活動の利用に適合する予報を実施していることから、平成8年4月に「洪水予報にかかる建設省・気象庁連絡会」を設置したところであり、洪水予報、気象・水文観測情報をオンライン接続することを検討している。
また、全国23カ所に雨量レーダーを配置し、一部を河川情報センターを通じて配信をしているが、現在は精度の向上、洪水流出の自動予測、降雪地域での降雪状況の観測実用化などの研究を急いでいる。
図−5 雨量レーダー観測網
A 水位、流量 全国1級109水系の基準地点に水位、流量観測所を設けており、水位の計測結果をリアルタイムで送信している。1級水系には、基準地点の他、補助観測地点を設けており、観測データ数は20,821である。このほか、1級水系には建設省所管のダム(小規模生活ダムを含む)、堰が合計で234箇所あるが(平成8年4月1日現在)、これらの貯水位、流入量、放流量もリアルタイムで送信されるシステムになっている。
2級水系についても、1級水系と同様なシステムが、都道府県で構築されつつある。
B 水質
水質データの観測は、水質汚濁防止法に基づき、都道府県知事が、毎年、国の地方行政機関の長と協議して、公共用水域及び地下水の水質測定計画を定め、統一的、効率的に水質汚濁状況の監視を行い、公表している。
河川管理者は、流水を利水者に配分する責任を有するところから、シアンなどの流出事故に対応出来るよう測定計画箇所以外にも水質観測点を設け、一部は24時間の自動監視を実施している。さらには今後5カ年以内には、重要な上水道用水供給河川においては、魚やバイオセンサーによる毒物監視システムを導入し、管理用光ファイバーを通して、常時監視システムの完成を図ることとしている。
2 通信、管理用回線網の整備
@ マイクロ通信回線 現在管理用通信手段としては、建設省独自のマイクロ回線を運用している。この回線は阪神淡路大震災を始めとし、大震災時にも確実に稼働し、高い信頼性を保持している。
今後はこのマイクロ通信回線のディジタル化、二重化を推進するとともに、これを利用したマイクロ電話の移動通信システム(k−cosmos)の配備を急ぐことにしている。
図−6 マイクロ通信回線網 (省略)
A 光ファイバーケーブル 河川管理用光ファイバー網は、雨量情報や洪水や渇水などの画像送受信のほかに、堤防や水門、排水機場などの施設管理に、また水質等の監視などに河川管理用として、さらには流域との双方向通信の手段として必要であり、今後道路管理者、下水道管理者などと調整しつつ、光ファイバネットワーク基盤を形成する計画で、このうち河川関係では平成7年度末までに約600qを完成している。
2010年までに総延長を約500,000qまで敷設する計画で、五カ年計画では約11,000qを予定している。なお、政府の高度情報化推進本部で決定した方針は、2010年までに光ファイバー網の全国整備を図ることにしており、光ファイバー通信事業者の要請があれば、河川空間の専用について許可する方向で現在最終調整段階にある。
3 河川情報公開システムの高度化
雨量、水位、警報などのリアルタイム洪水情報や、ダムの貯留量などの渇水情報は、財団法人河川情報センター(frics)を通じて地方自治体や一般市民に有料配信している。このシステムは1986年に開発した画像提供方式(キャプテンシステム)で全国4,000台の端末に24時間体制でサービスしており、平成6年度には約900万件のアクセスがあり、洪水や渇水対策を支援している。
このシステムは、サービス開始以来、本年で10年を経過した柔軟性のないシステムであるので、次世代型システムであるデータ通信方式(受信側で2次処理が可能)に全面的変換を果たす計画であり、平成9年度から5カ年以内には新システムへの移行を完了させる。
図−7 fricsの提供画面
また、平成9年度から、防災情報の各戸配信の可能性を検討するため、郵政省と共同し、一定規模の住宅団地に対し、新たに敷設する光ファイバーおよびcatvネットワークを介して、震度、河川水位、雨量等の防災情報を提供するモデル実験を実施する。
- @ 対象地区:神戸市北区鹿の子台
- A 対象戸数:約300戸
- B 実験実施時期:平成9年度より3年間
- C 配信情報の内容:
- (イ)防災情報 ・レーダー雨量、河川水位等、河川情報センターで現在保有している防災情報
・震度情報(平成9年度内に提供)
- (ロ)自治体行政情報(神戸市が実施) ・神戸市政情報、神戸観光案内、震災記録等
- (ハ)電子新聞 ・新聞様式のデータ配信。写真や広告をクリックすると、関連する映像も見ることができる。
4 水質、水文データベースの 標準化、構造化
雨量、水位、流量や水質データについては、「水文観測業務規定」に基づき観測、収集、整理を行っているが、現在これらは統一的な方法で、電子的な構造化、標準化がなされていない。このため、データは電子化されていても共用できない構造になっており、また公表している「流量年表」「水位年表」「水質年表」は紙データとして作成されており、リアルタイムデータなどを始めとして電子的な方法では流通、公表がされていない。
業務の高度化やデータの公開、河川以外の機関が収集したデータの共同利用のためには、電子データの構造化、標準化が必要であるので、各機関の支援、評価を得て日本スタンダード構造を制定すべく作業中である。一次案の完成は1997年3月を目標としている。
5 公開型水質、水文データベースの開発
水質、水文データベースの標準化、構造化の完成後、これを活用して公開型水質、水文データベースを作成し、一般に提供するシステムを開発する。
一次案の作成は1997年度末までに完成させて、各学会、利用者の評価を得て、システムを完成させる考えである。
6 ハザードマップ
これまで、全国の1級水系と主要な2級河川において、過去の浸水実績区域を表示した「浸水実績図」や洪水氾濫シュミレーションを行い浸水区域を予想した「浸水予想区域図」、計画高水位より低い沿川の地域が浸水すると仮定し、浸水区域を表示した「防御対象氾濫区域図」などを河川管理者が公表してきたが、1994年より、これらを利用し避難、誘導に直接役立つ「ハザードマップ」の市町村作成を、河川管理者が支援するシステムを設けて、引き続き推進することにしている。
7 河川水辺の国勢調査
全国の1級水系と2級水系において、1991年から、河川の環境を定期的、継続的、統一的にモニタリングを行っているもので、その内容は河川の水際部や瀬と淵などの河川調査、魚介、植物などの生物調査、河川空間利用実態調査などであり、毎年調査結果をとりまとめて公表している。
図−8 河川水辺の国勢調査リスト