寄稿
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今、第三千年期初頭を2年後にして、日本全体がバブル経済の崩壊という戦後処理の閉塞状況に疲弊し、信用という人間社会の根本的絆が限りなく細くなり、不安を増大させている。とくにわが国は「信用重要視の商取引慣行」が中心であるだけに、その影響は計り知れないものがある。
国の財政・行政・税制、金融・福祉・年金の6大改革や、自治体の行財政改革が思うように進まないばかりか、議論百出し、政党や団休間での整合性が図れない状況にあるからである。こうした背景下で、バブル経済の一翼となった金融・不動産分野の中で、公共住宅開発と350,000住戸を管理する当公社への世間の風当たりは日増しに強く、国や都の指導を受けながら時代に合った住宅開発のあり方を模索中である。この激動期の中でなさねばならないことは山積しているが、公共工事の発注者としては、コスト低減と都民への説明者責任を確立して信用回復に努めることが急務であると思う。
当社の建設コスト縮減検討の過程で、参考資料として収集した「ニューヨーク市住宅公社の工事発注方法」から、今後の参考になりそうな要点について述べたいと思う。なぜならば、今われわれが世界第2位の経済大国となりながら、黒船以来の社会不安を抱き、リーダーたる自信を持ち損ねているわけには、深い社会構造的原因が存在しているからである。それは民主主義社会における行政・議会・企業というマクロ社会の事業執行上の役割分担と、事業分野ごとの専門別、細分化と系列化による事業化集団(金融・不動産、建設業など)を形成してきた社会の根本規範が、建前(法令など)と本音(信用)の二重規範を使い分ける「和」重視であったことにある。
その限界が、国際化の中で露呈したものと考えられるからである。それは分野別事業化・法令化と信用取引が中心であり、官民とも儒教的倫理規範に基づく信頼が判断基準となる可能性が高いので、価値を共有できる同一言語圏内などに限定されるものであろう。とりわけ人種・宗教・文化的多元化社会である米国の「契約社会」としての事業執行方法は、先行した経済分野の国際化経験とともに確かな方向への示唆になるものと思われるからである。
1.GC :設計施工分離のゼネコン方式。請負契約 2.CM′:施工型コンストラクションマネジメント 3.CM :コンストラクションマネジメント方式。 4.DM :デザイン・アンド・マネージ方式。設計とCMが結合。 5.DB :デザインビルド方式。 設計施工受注を一元化 |
DB:日本における民間工事の典型また、当公社の性能発注もこれに近い GC:日本における公共工事の典型(A方式) CM:外国(英米等)における工事の典型(B方式) 最近の民間工事での日本型CM(C方式) DM:B方式のCMRと設計者が同一型(英米系等) |
図2 伝統的ゼネコン方式 | 図3 CM方式 |
図4 日本型CM方式 |
ニューヨーク市住宅公社組織図 |
契約管理課工事発注監理(CM室) |