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一日に約43万人が利用する新宿駅南口は混雑し、それに接する甲州街道(一般国道20号線)も慢性的な渋滞状態にある。この状況を解決すべく、新宿駅南口地区基盤整備事業が、関東地方整備局東京国道事務所により行われている。
現在の一般国道20号である甲州街道は、慶長6年(1601年)に入府した徳川家康によって整備が開始され、元禄11年(1698年)に甲州街道一番目の宿場町としで内藤新宿が開かれた。明治18年に日本鉄道(山手線)の内藤新宿駅が開設され、中央線の開通によって、宿場町から交通、商業、ビジネスなど集積度の高い現在のターミナル都市へと変貌した。
今日では、1日の乗降客数が静岡県全体の人口に匹敵する約320万人となり、池袋、渋谷、東京及び梅田駅など、他のターミナル駅を上回り、全国1位となっている。
また、駅周辺地域の飲食、小売り業は1800店を越え、東京の代表的な繁華街として毎年着実な延びをみせている。
それだけに、改札口の混雑や周辺道路の渋滞も激しく、利用者約320万人のうち、約43万人が南口を利用。そして南口駅前を走る甲州街道の歩道を利用している人は約6〜9万人であるが広場面積が狭く、1u当り437.5人という過密状況だ。オートバイや自転車の無断放置なども多く、歩行者の通行の障害にもなっており、周辺の歩道も狭く、歩道からあふれんばかりの歩行者は交通渋滞をはじめ交通事故の要因になっている。
新宿跨線橋架替工事の状況 | ||
↑JR池袋駅方面 | ||
国道20号 ←郊外方面 |
国道20号 →都心方面 |
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↓JR渋谷駅方面 |
甲州街道を通る車は毎日約6万台で、新宿跨線橋は片側3車線だが、そのうちの1車線以上は利用客を待つタクシーや路上駐車で占拠されている。路上駐車にいたっては、平日で延べ約200台、休日では約600台に及び、このため自動車の通行は事実上2車線という状況で、これが渋滞の原因になっている。
また、東京西部と都心を結ぶとともに、JR山手線等で分断されている新宿地域の道路交通の「要」である新宿跨線橋も、大正12年(1923年)の関東大震災の翌々年の大正14年(1925年)に架橋されたもので、架橋後約80年が経過している。
さらに、駅周辺には多くの高速バス関速施設があるものの、どれも分散して立地しているためわかりづらく、他の交通機関との乗り換え機能が乏しい。特に雨天時には、バス乗り場まで行くにはかなり不便で、路上発着の停留場では、満足な休憩施設もない。
新都心の表玄関である新宿駅周辺は、その特性から都市機能へのニーズが高まっているが、甲州街道沿道や新宿東口をはじめとする駅周辺エリアには、小規模のビルが多くなっているため、都市機能を充実させるための、ゆとりあるスペースを確保することが求められている。
成熟期にある現代社会の中で、生活の豊かさを実感できる街づくりや環境への配慮は時代の要請でもある。そのため、わが国の活力の源泉でもある大都市を再構築し、豊かで快適で経済活力に満ちあふれた都市に再生することは緊急の課題でもある。
その解決策として、新宿駅を「都市再生の核」と位置付け、歩行者空間のネットワーク、駐車場や広場などを総合的に整備して機能改善を図り、新しい“新宿の顔”を創出するのが、新宿駅南口地区基盤整備事業の目的だ。
これは、鉄道駅と高速バス関連施設などの交通結節点としての利便性向上を目指す総合的な乗換拠点整備事業でもあり、人・環境・アメニティ(快適性)をテーマに、老朽化が進んだ新宿路線橋の架け替え、駐車場等の交通広場やゆとり空間の創出、新宿駅周辺の回遊性の確保という3つのプロジェクトが同時進行している。
新宿・渋谷の両区にかかるJR東日本の鉄道空間とJR駅ビル(構想)を重層かつ一体的に整備することにより、渋滞の緩和と新宿駅利用者の利便性の向上を図る。
整備のポイントは、跨線橋の慢性的渋滞緩和により、交通機能を回復させるとともに、公共交通の利便性向上のために、交通結節点の機能強化を目指す。また高齢者、障害者に優しい道づくりを実現するため、たまり空間を創出すると同時に、歩行者空間のネットワーク化を図る。
良好な生活環境を創出するため、沿道環境の保全、都市緑化の推進に努める。広場などの空間を創出し、沿道との一体的な整備を進め、都市としての魅力を高める。そして、老朽化した跨線橋の架け替えで耐震性の回復を図ることだ。
そこで、新宿区と渋谷区の両区にかかるJR東日本の線路上空に約1.3ヘクタールの人工基盤を創出し、そこに各階ごとに機能を持つ有効な多層構造の建物を建設する。基盤が完成すれば、新宿駅南口は鉄道とバス、自動車、タクシーなどの連携する総合的な交通結節点として生まれ変わることになる。
その人口地盤の完成によって、ゆとりある歩行者空間とスムーズな交通の流れが実現する。また、高齢者や障害者にもやさしい人間中心の空間の創出、自然との共生(光、樹、風)、人と都市のアメニティ(快適性)を追求した駅前空間が誕生する。
JR高架部においては、幅員30m、橋長123mの現在の橋梁を撤去し、幅員50m・橋長127mの橋梁に架け替える。新しい橋梁は歩道の幅員を広くし、ゆとりある空間として歩き易いスペースをとる。その他の区間においても補強等を実施し、構造的にも耐震性を向上させる。
【新宿跨線橋架替工事】 | |
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