(前号から続く)
普通の人が情報を知る手段として、新聞・テレビのいわゆるマスメディアに頼るしかないのが現状である。しかし、第3者として見ている時でさえ、やり過ぎではないかと思わせる場面にしばしば出くわすのは、同じ日本人として残念というか寂しい気持ちにすらさせられる。事件報道やワイドショ−ではそれが頂点に達し、個人のプライバシ−いや尊厳を無視した取材報道がまま見られる。松本サリン事件の河野さん一家はまさにその典型的な被害者である。
3年前の北海道南西沖地震の時、函館に勤務していたため、災害報道の一端に触れる機会があった。地震発生の翌週、日本とアメリカの合同被害調査団が訪れ、奥尻島に渡る事前打合せの時のことである。島の事情に詳しい方から、被害調査だとしても、絶対個人の住宅や島民を写さないようにとの注意があった。何故かというと、普段では絶対にあり得ないような大量のマスコミ陣による取材攻勢により、島全体にマスコミ関係だけでなく全ての島外の人に対して不信感・拒否感が蔓延していると言うのである。調査団はその注意に従いつつ必要な調査を無事終了し、島を離れたのであった。
それから3年経った本年2月10日、国道229号豊浜トンネルで巨大な岩盤が崩落し、不眠不休・命がけの岩盤除去・救出活動も実らず、20名の尊い人命が失われるという事故が発生した。日々の報道に一般の関心が集中する中で、パソコン通信上ではどのようなやり取りがされていたか、「ニフティ−サ−ブ」を例に紹介したい。なお、引用文中のアンダ−ラインは筆者が記入した。
(1)土木フォ−ラムから
土木フォ−ラム(fcivil)の13会議室に[トンネル]というのがある。そこには、トンネルや地質の専門家と思われる人だけでなく、マスコミ関係の人からも意見が載せられていたが、その内4件を紹介する。
(2)ジャ−ナル・オンライン・ネットワ−クから
次は一般の人が大部分のフォ−ラム「ジャ−ナル・オンライン・ネットワ−ク(fjon)」の5会議室[マスコミへの意見]から3件紹介する。
(3)一般紙の新聞評から
このようなパソコン通信情報がある一般紙の新聞評欄に載っていた。
「ところが、最近一般には非公開のある媒体の中で、救出作業現場にいた方の声に接することができた。それを読んだ時、頭を棒でなぐられたような気分だった。現場担当者が命をかけて、不眠不休で救出にあたっていたこと、報道では「5時間の無駄な会議」と報道された間も、現場では決して手を止めることなく命がけの作業が続いていたこと。・・・」
この他、インターネット上にcnnのトンネル事故を伝えるニュースが載っているのを見付けたりもした。また、ニフティ−サ−ブを操作中たまたま建設省徳島工事事務所が事務所の広報ビデオの発刊をprしていることや、各省庁、各県がそれぞれの情報コーナーを作っていることなど、日々新たな情報との遭遇があり、しばらくパソコン通信に病み付きとなり、その都度1時間を超えて接続している有り様であった。
以上、個人的に経験したパソコン通信のことを紹介したが、このような事実に触れることが出来、この国の中で密かに新しい情報手段が芽生えている確信を持った。パソコン通信には特に倫理面・道徳面で問題とされる場合があり、現時点で手放しで評価すべき情報手段とするには課題も多くある。しかし、個人からの自由な意見・情報に直接触れることが出来、その中に参加することも容易であるという魅力はやはり大きい。それが良質のものに育つことによって、情報文化の新時代が到来することを期待する。
なお、本文は小生が電子メールで自治タイムス社に送稿した最初のものである。紙を大量消費するfaxから省資源型の電子情報へと時代は着実に移行しつつある。