ibmとはアメリカの世界的コンピューターメーカーのことではなく、international business meeting「国際ビジネス会合」の頭3文字を取ったもので、日本のビジネスマンが世界のビジネスマンと商談を行う適所として北海道を位置付けることを構想したものである。この発想は米国トヨタ自動車販売鰹I身顧問 東郷行泰氏の著書「アメリカに夢を売った男」(ごま書房)を読んだことがきっかけであった。
同書から東郷氏のことを少し紹介すると、1924年生まれで、36歳の時にトヨタ自動車販売鰍ノ入社。国内、タイ、カナダ勤務を経て、1983年米国トヨタ自動車販売且ミ長に就任。アメリカでレクサス(日本名ウィンダム)をヒットさせ、トヨタを全米自動車販売シェアで10%の大台に乗せ、日本企業として初の快挙を成し遂げた。レーガン元大統領をはじめ多くの著名人と幅広い交流関係を持つ、米国内でもっとも著名な日本人の一人である。
東郷氏は30年近く温めてきた単発セスナ機での世界一周飛行をなんと71歳の時に実行した。その時の計画から実行までの経験談をかなりの紙数を割いて書いているが、中に「世界を飛んで知った日本の航空行政のひどさ」という1節がある。そこには氏自身がパイロットであるがゆえに指摘出来る彼我の航空行政の大きな差を生々しく書いてあり、そのすべてを引用したいくらいだが、それは皆様が直に同書をお読みいただくことに委ねることとし、特に気になる部分だけを紹介する。アメリカでは何十万機もの自家用機があり、第1線のビジネスマンにとって自家用機を使うことは当たり前になっているという。ところが、我が国では、成田がたった1日2便しか自家用機を認めていないなど、事実上自家用機の使用が不可能になっているため、アメリカのビジネスマンはやむなく民間のエアラインで来日している。このままでは、日本はビジネス過疎地になりかねないと危惧されている。
東郷氏が指摘するまでもなく、アジア諸国の急速な空港整備と比べ我が国の空港、特にハブ空港については大きく立ち遅れている。このような現状から、我が国が世界のビジネス戦争に遅れを取りかねない恐れが生じている。そこで、せめて自家用機での来日だけでも容易になるように考え、北米に近く発着数に余裕のある北海道の空港を自家用機での来日用に利用することを提案する次第である。日本側ビジネスマンは国内線で来道し、商談は北海道の空港近くで行えば、双方ともロスタイムが少なくて済む。特に夏の暑い時期には、快適な北海道の気候が商談には最適であるし、アフターファイブや休日まで考えれば、自然に親しむ多様な趣味を持つ彼の国のビジネスマンに満足感を持って帰国してもらえるのも北海道ならではのことであろう。すなわち、国際ビジネスに快適な自然環境を持ち、国際地理的な好位置にある北海道の有利性を活かそうとするのがibm構想である。
新千歳空港の本格的なハブ空港化となると、成田、関空などとの関係を含む複雑な航空行政の制約のため、思うように進展しにくいのが現実である。それに対し、純民間の自家用機であれば、航空行政の制約も少なく、利用実績を積み上げていくことで、世界に対し自家用ハブ空港としての位置付けを確保することも可能である。その意味でibm構想を北海道のどこかの地域で将来戦略に取り込んでもらえれば幸いである。
この構想を実現するためには、ソフトウェア(社会の仕組み)やハートウェア(価値観)の方に重心を置いたアプローチが必要であり、ハードウェア中心の従来のプロジェクトとはアプローチが異なることに留意しなければならない。
最後にibm構想の可能性を読者の皆様に理解していただく一助として、北海道の国際地理的位置を表す図−19を添付した。