北海道発未来着 第22回

巨大な家計資産を持つ日本

総務庁統計局では5年に1度全国消費実態調査を行っており、最新の調査データ(平成6年)が順次報告書として公表されている。その中に家計資産の調査結果が含まれており、いくつか興味ある内容があったので、それを今号の話題とする。

表−17  1世帯当たり家計資産(1994)

(千円)
家計資産 年間収入
全国平均 53,746 7,847
青森県 22,066 5,968
宮崎県 23,418 5,773
北海道 26,199 6,504
鹿児島県 26,364 5,827
長崎県 26,538 6,145
大分県 26,890 6,435
秋田県 28,132 7,250
島根県 31,069 7,405
佐賀県 34,135 7,147
山形県 34,342 8,018
岩手県 35,118 6,667
熊本県 35,612 6,866
高知県 35,624 6,611
福島県 35,657 7,283
山口県 35,960 7,385
宮城県 37,943 7,484
鳥取県 37,978 7,688
沖縄県 40,189 5,486
愛媛県 40,583 6,836
福岡県 42,105 7,178
岡山県 42,356 7,213
新潟県 44,063 8,090
徳島県 44,542 7,209
広島県 44,637 7,678
三重県 46,073 8,229
富山県 46,382 8,958
長野県 50,231 8,088
和歌山県 51,165 7,013
香川県 51,186 7,451
京都府 53,056 7,465
兵庫県 54,115 7,989
岐阜県 55,824 8,300
群馬県 56,372 8,017
滋賀県 57,276 8,773
奈良県 57,736 8,085
茨城県 57,779 8,504
千葉県 58,008 8,700
栃木県 58,763 8,157
山梨県 59,757 7,992
大阪府 60,645 7,754
福井県 62,682 8,621
静岡県 63,250 8,194
石川県 63,353 9,164
埼玉県 65,987 8,577
愛知県 67,003 8,585
神奈川県 76,037 8,976
東京都 81,594 8,526

 34.貧しい家計資産の北海道

 表−17は1世帯当たり家計資産を年間収入と対比しながら都道府県別に少ない方から順に並べたものであり、表−18は家計資産の全国と北海道の内訳である。これらから次のことが指摘できる。

@家計資産の全国平均は5,375万円(内宅地資産が3,636万円の67.6%を占める。また、中位数は3,016万円で平均以下の世帯が全体の71%と資産額の低い方に偏った分布である。)であり、想像以上に我が国における家計資産額は大きい。
A家計資産の少ない県は北海道と北東北、九州に分布している。
B家計資産の多い県は関東、東海、北陸、近畿に分布している。
C年間収入の最大県(石川県)と最少県(沖縄県)の比率が1.67倍にすぎないのに対し、家計資産の最大県(東京都)と最少県(青森県)の比率は3.70倍と大きい。
D北海道は年間収入が全国41位(全国平均の82.9%)、家計資産が同45位(同48.7%)と全国的には低レベルの地域となっている。
E北海道の家計資産の内、住宅・宅地資産が特に少ないが、その理由として地価が安いことに加え、東京都(63.5%)に次ぐ全国46位の低い住宅保有率(66.5%)であることが考えられる。ちなみに全国平均では、持家世帯の家計資産額が6,778万円であるのに対し、借家世帯は1074万円にすぎない。

 我が国は地域間所得格差が少ない国と言われるが、家計資産の点から見ると大きな格差がある。今後の国土政策を考える時、所得格差だけでなく資産格差にも配慮した政策運営が望まれる。それはまた、豊かな個人資産と貧しい公共資産(社会資本)のギャップを埋める合理的な方策を含めて考えられなければならない。例えば、民間資本による公共事業への参入自由化、個人資産の提供者への優遇措置の拡大などである。貧しい社会資本のままで高齢化社会を迎えたらとはあまり想像したくない姿である。

 35.高齢者ほど資産持ちの日本

 家計資産の意外な側面を表−19から指摘したい。すなわち、世帯主の年齢が上がるほど資産が増加しており、なんと70歳以上の資産額は平均の1.7倍にも達している。日本の高齢者は少なくとも平均的にはきわめて豊かなのである。この数字を見せられると、一律な高齢者に対する福祉政策に疑問を感じざるを得ない。資産的に十分すぎるほど恵まれている高齢者でも一律な制度のため、医療費の無料化や公共交通機関の無料パスの提供などの恩恵を自動的に受けている。肉体的には弱者であっても、資産的には弱者どころか強者が多い高齢者に対してどのような制度で対処すべきなのか、近づく高齢化社会を前に発想を新たにして見直すべきである。例えば、資産的に豊かな高齢者は年金を支える側に回ってもらうとか、現在の法定相続では配偶者と子が相続することになるが、平均寿命を考えれば高齢者から高齢者予備軍世代に資産が移動するにすぎないので、成人に達した孫にも相続出来るようにするとかが思い付く。近い将来、少ない若い世代が多くの年金世代を支えるようになると言われる。資産形成途上の若い世代の負担を軽減させるためにも、世代間の資産移動を迅速に進まさせる方策が実行されてもよいと考える。


表−18 家計資産内訳 (単位:万円)
金融資産 住宅・宅地資産 耐久消費財等 資産合計 (参考)
住宅保有率
全国平均 847 4,294 233 5,375 77.2%
北海道 593 1,847 180 2,620 66.5%


表−19 世帯主の年齢階級別家計資産 (単位:万円)
世帯主の年齢階級 金融資産 住宅・宅地資産 耐久消費財 資産合計 年間収入
平  均 847 4,294 233 5,375 785
30歳未満 170 977 175 1,322 505
30−39歳 153 2,291 197 2,640 657
40−49歳 489 3,863 231 4,582 847
50−59歳 1,005 5,011 283 6,299 985
60−69歳 1,831 6,069 240 8,139 706
70歳以上 1,840 7,230 189 9,260 553


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