北海道と九州はともに海峡を隔てて本州と縦列的に接している。しかし、地域間旅客移動のデータ(参考文献(1))から、他地域との旅客移動に関しては両地域間には量的にも質的にも大きなちがいがある。以下、データに基づき比較検討する。表−12,13は両地域と他地域との1995年度の旅客移動であるが、ここから次のような特徴を指摘出来る。
- @北海道は対関東が約5割であるのに対し、九州は2割以下と少ない。
- A北海道は隣接する対東北が2割以下であるのに対し、九州は対中国が約5割と多い。さらに旅客移動量では1:9と大きくちがう。
- B同じく隣接する九州〜四国間は九州〜中国間に比較して1桁も少ない。
すなわち、北海道が関東中心であるのに対し、九州は四国を除けば、全国と万遍なく交流している。
次に、海峡を隔てて同じように縦列的に隣接した北海道〜東北間、九州〜中国間の旅客移動を輸送機関の点から見てみよう。表−14から次のことが指摘出来る。
- @北海道〜東北間は九州〜中国間に比べ、対人口比で1:6.7と大きく差をつけられ、特に自動車と鉄道の差が大きい。
- A航空機については北海道〜東北間の方が大幅に多い。逆に九州〜中国間は航空機のシェアが極めて小さい。
この大きな差については、やはり海峡横断の鉄道と道路の質的・量的なちがいが決定的な要因になっていると言わざるを得ない。九州にはある新幹線や海峡横断道路が、北海道にはない現状のままで、両者の大きな差を縮めるのは至難のわざである。
北海道の他地域間旅客移動量 (1995年度)
|
九州の他地域間旅客移動量 (1995年度)
|
隣接地域間の旅客移動内訳 (1995年度) (単位:万人)
|
参考文献(2)から人口移動について興味あるデータがあったので紹介する。表中の指数の意味は100を超えるとその人口規模に比例する以上の県間移動があり、100を下回るとその人口規模より少ない県間移動しかないということである。表−15および全国のデータから次のことが言える。
- @首都圏、近畿圏へは人口流入が多い。
- A首都圏から遠い地方、および日本海側への人口流入は少ない。
- B東京都は人口流出も多い。
- C北東北と九州は人口流出が多い。
- D北海道と本州中央部(北関東、東海、北陸)は人口流入が少ない。
- E特に北海道は流入・流出とも少なく、人口の割に他県との移動が少ないという特徴を持っている。
多分道内限りの移動が主体になっているのであろう。
次に表−16から北海道と他県との人口移動を見てみよう。
- @流入・流出とも隣の青森県が指数100を大きく超えている。
- A流入は指数100以下ではあるが、東北と首都圏が相対的に多い。
- B流出は首都圏と宮城県が指数100を超えている。
旅客移動(表−12)からは関東中心が北海道の他地域との交流の特徴と見られるが、人口移動となるとやはり隣の東北が大きな比重を占めていることが分かった。このあまり目立たない北海道〜東北間の交流を実質的に活発にすることが次の時代の北海道にとって大きな課題である。
人口移動選択指数の上位下位各5県 (1985.10〜1990.9)
|
北海道の人口移動選択指数の対全国指数以上の県 (1985.10〜1990.9)
|
【参考文献】
(1)「平成7年度旅客地域流動調査」運輸省運輸政策局情報管理部
(2)「日本の人口移動・戦後における人口の地域分布変動と地域間移動」人口・世帯研究会監修、大蔵省印刷局