6月3日、函館で「本州・北海道架橋シンポジウム−津軽海峡からのメッセ−ジ−」が開かれ、29編の論文が集まった。午前9時から始まったシンポジウムは、北海道知事、青森県知事の来賓挨拶(代理)に続き、我が国橋梁学界の権威である東京大学名誉教授伊藤学氏による「吊型式橋梁の現状と今後」と、ノルウェ−の建設会社社長キェール・ラスタッド氏による「大型海中コンクリート固定足場について」の2件の記念講演が論文発表に先立って行われた。特に、ラスタッド氏の話は北海油田のコンクリート製掘削足場(図−10参照)に関するもので、水深42mから345mに及ぶ28基の実績があるということであった。ノルウェ−は人口432万人で北海道より少ないにも関わらず、これだけの建設技術を有していることに感銘を受けた。なおかつラスタッド社長は1945年生まれという若さである。顧みて北海道の建設業にこのような企業が見当たらないことをつくづく残念に思った。氏は歓迎会の席上、自分たちの技術を応用すれば本州・北海道架橋は必ず実現すると語った。おそらく氏の脳裏には津軽海峡が格好のビジネスチャンスの場として映っていたのではないだろうか。
論文発表は2会場に分かれて11時15分から17時40分まで行われた。感心したのは両会場とも最後までほぼ満員であったことである。ともすれば、途中でくしの歯が抜けるように人数が減る論文発表会が多い中で、異例とも言えるこの現象に多くの参加者から賛辞の言葉をいただいた。論文集は393ペ−ジに及ぶ大部で、内容も橋梁技術だけでなく整備効果、事業手法から青函交流までと多岐にわたっている。なお、論文集は一部1万円で販売しているので、興味のある方は事務局(tel0138-41-4431・fax0138-41-4440)までお申込み下さい。
18時から子供たちの絵画作文コンク−ル(応募件数:絵画155件、作文23件)の表彰に引き続きレセプションが行われ、本シンポジウムの成功と次回への期待を語る人の輪がいくつも出来ていた。シンポジウム参加者は450名で、当日およびその後の新規入会者も大変多く、総会員数は6月末現在でついに1,000名を超えるまでになった。次の大きな活動である、11月15日東京で開催する作家の田村喜子氏をメインゲストとする在京会員の集いまでに、どれだけ会員数が増えているか今から楽しみである。
本州・北海道架橋実現に向けては、技術的課題とともに、建設資金調達が大きな課題である。この点について、シンポジウム参加者からアンケート調査を行ったので結果の概要を報告する。ここで通行権事前購入制度とは、通常利用の都度支払う現行の料金徴収制度とは異なり、一定金額を支払って橋の通行権を事前に購入すれば、あとは何回利用しても無料であるという制度で、橋の利用頻度の高い人や、流通関係の企業にとっては大幅な料金割引となり、結果として橋の利用を促進するという効果があり、併せて事業者側には資金回収が早まるという効果が期待出来るものである。
架橋実現の効果を最も受けるはずの道南や青森県のデータが少なかったのが残念であり、そのため、本制度を利用したいと答えた人が少数派となったと思われるが、「十分」と「ある程度」を加えると「検討する価値がある」と答えた人の割合が81.6%にも達したことは、建設資金調達に向けて通行権事前購入制度のような新たな方法の検討を進める後押しをいただいた思いである。世界各国では、資金調達から建設、運営まで一括して民間に請け負い、返済終了後公的部門に譲り渡すというbot方式が数多く採用されている。高齢化社会を前にして、これまでのように公的部門に過度な期待をかけるわけにはいかない。そこで、陳情ではない自らの知恵を働かす必要が出てくるのである。たまたま、ニフティーサーブの土木フォーラム・橋のコーナーに本シンポジウムに関する意見のやり取りが載った。その中に厳しい国家財政であることから架橋反対の意見があったが、ある意味でもっともであり、そのような意見に対する返答としても「通行権事前購入制度」のような既存の制度を超えた検討・議論を展開したいと考えている。
アンケート総数:125 |
地域分布:道内…49(内道南13) 道外…48(内青森県8) 不明…28 |
本制度を利用したい…48(38.4%) 従来の料金徴収がよい…65(52.0%) 不明…12(9.6%) |
利用したいと答えた人に対して購入する場合の最高額を尋ねた: 10万円…29 20万円…12 30万円…8 50万円…5 100万円…3 200万円…1 |
本制度は架橋実現に向けて検討する価値があるか: 十分ある…55(44.0%) ある程度ある…47(37.6%) 計102(81.6%) あまりない…15(12.0%) 不明…8(6.4%) |