表−4はOECD諸国の名目gdpの推移、表−5は同じく一人当たりgdpの推移である。ついに我が国は経済の面で世界の頂点に到達した。それを象徴する数字が5月に総務庁から発表された。図―11がそれである。なんと1世帯当たりの全国平均家計資産額が5,375万円になっている。北海道が地域別で最下位の2,620万円であったのが少し残念ではあるが。
平成6年の我が国の国内総生産(gdp)は479兆円、うち民間消費が286兆円、政府消費が46兆円である。いかに我が国経済の中で民間・個人の消費ウエイトが大きいかが分かる。「6:3:1」とはGDPにおける個人:企業:公共の比率を表しているのである。パチンコが30兆円産業であるというのも、いわば個人消費の巨大さを象徴する数字である。ちなみに個人輸送機器(車)だけでも10兆円消費している。ところが、これだけ巨大な個人消費社会であるにも関わらず、ともすれば行政に頼ろうとする傾向があるのは、何か方向を誤っているような気がしてならない。おそらく、行政投資はその姿が割合はっきりと見えるのに対し、個人投資は巨大ではあるがあまりにも漠としていて、その姿がはっきりしないせいなのであろう。しかし、6割というシェアは大変な数字であり、やはり個人を無視したり軽視することはそれだけで最大4割のシェアにしかならない小さい舞台での勝負しか出来ないことになる。
先日テレビで国有地とは国の所有地ではなく、国民の土地ではないのかというコメンテイタ−の発言があった。少し前には聞くこともなかった言葉であり、時代の変化を感じざるを得ない。第6回「行政とNGO」で書いたが、市民と行政との関係も協調・連携が重要視されなければならない。そのためには行政側から積極的に市民側に参加する姿勢が必要である。地域づくりで有名な東京女子大学名誉教授伊藤善市氏は「地方の魅力を考える」という最近の著書で次のように言っている。「魅力と活力にみちた地域にはボランティア精神がみち溢れている。周知のように、地域づくりについて最も豊かな経験と情報をもっているのは市役所や役場の職員である。身分は公務員だが、いろいろなイベントをやる場合には、ボランティアとして活躍し、しかも愉快でたまらないといった仲間に恵まれている人が多い。このようにして類は友を呼び、交流の輪が広がっていくのである。」
この言葉は、行政に属する人は行政ばかりしていればよいという時代ではもはやないことを指摘している。真に地域を発展させようと思えば、市民との協調・連携を求めなければ新たな展望は開けない。高度経済成長時代はともかく、これからの時代は志を同じくする個人間のネットワークが大きな力を発揮するように思う。もちろん企業に属する人も含んでのことである。企業内活動に専念することを否定はしないが、行政と同様に企業外にも協調・連携のネットワークを広げる人が多くなればなるほど、その地域の活力は増加する。パーソナル・ネットワークがどれだけ地域に根を張っているかが、地域活性化の指標になるのではないかと思っている。筆者の経験でも、はじめは個々のグループ内で活動することになるが、いつのまにか他のグループとの接蝕が生まれ、ある時点を過ぎると加速度的に次から次へとネットワークが広がっていくというのが、パーソナル・ネットワークの特色であり、面白さである。面白い情報を持ち、面白い発想をする人はたいがい独自のパーソナル・ネットワークを作っている。
借金財政にあえぐ国とは対照的に、GDPの6割という経済力を持ち、1世帯当たり5,375万円という巨額の資産を有する国民がこれからどの方向を指向しようとするのであろうか。世界第2の経済大河から何を造り何を残すのか。そしてアジアという圏域を考えると、まさにそこには世界一の経済大河がさらに水量を増やしながら流れている。これらの流れをただ見過ごすのか、積極的に取水しようとするのか、視線の向け方と知恵の出し方次第で地域間に大きく差がつきそうな気がする。そのような時代のキーワードが「6:3:1」であり、推進役がパーソナル・ネットワークであると最近特に感じている。
順位 | 1985 | 1990 | 1994 | |||
1 | アメリカ | 3,959,610 | アメリカ | 5,392,200 | アメリカ | 6,649,800 |
2 | 日本 | 1,345,554 | 日本 | 2,957,884 | 日本 | 4,698,528 |
3 | 西ドイツ | 622,240 | ドイツ | 1,488,210 | ドイツ | 2,045,779 |
4 | フランス | 522,520 | フランス | 1,190,770 | フランス | 1,328,539 |
5 | イギリス | 450,070 | イタリア | 1,090,750 | イタリア | 1,017,777 |
6 | イタリア | 421,980 | イギリス | 975,150 | イギリス | 1,020,185 |
7 | カナダ | 348,420 | カナダ | 570,150 | カナダ | 543,820 |
8 | スペイン | 164,150 | スペイン | 491,240 | スペイン | 482,366 |
9 | オーストラリア | 157,490 | オーストラリア | 294,140 | オランダ | 334,297 |
10 | オランダ | 125,430 | オランダ | 279,150 | オーストラリア | 331,553 |
出典)「国民経済計算年報」経済企画庁編 |
順位 | 1985 | 1990 | 1994 | |||
1 | アメリカ | 16,844 | スイス | 33,679 | 日本 | 37,618 |
2 | ノルウェー | 15,362 | ルクセンブルグ | 27,783 | スイス | 36,782 |
3 | スイス | 14,201 | ノルウェー | 27,198 | ルクセンブルグ | 35,281 |
4 | カナダ | 13,395 | フィンランド | 27,033 | ノルウェー | 28,432 |
5 | アイスランド | 12,086 | スウェーデン | 26,821 | デンマーク | 28,180 |
6 | スウェーデン | 12,062 | デンマーク | 25,115 | アメリカ | 25,512 |
7 | デンマーク | 11,351 | アイスランド | 24,479 | ドイツ | 25,129 |
8 | 日本 | 11,282 | 日本 | 24,273 | オーストリア | 24,669 |
9 | フィンランド | 10,915 | ドイツ | 23,734 | アイスランド | 23,199 |
10 | オーストラリア | 10,661 | アメリカ | 21,966 | フランス | 22,944 |
出典)「国民経済計算年報」経済企画庁編 |