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▲写真-1:神戸港から見た六甲山系 | ▲写真-2:阪神・淡路大震災による崩壊住吉台 | ▲写真-3:妙見谷堰堤 |
六甲山はおよそ100万年前の「六甲変動」により形成され、地形が急峻なこと、風化し脆くなった花岡岩(マサ土)で構成されていることから、豪雨時には山腹崩壊、土石流などの土砂災害が発生しやすく、しかも、六甲山麓には200万人を超える市民が生活していることから、一度、土砂災害が発生した場合には、激甚な被害を被ることが懸念されている。 (写真-1)
▲写真-4:グリーンベルト整備事業のイメ一ジ図 |
▲写真-5:樹木を残した斜面対策工 |
災害の歴史を見ても、谷崎潤一郎の「細雪」に災害の様子が描写されている「昭和13年7月の阪神大水害」は、死者695名、被害家屋15万戸に及ぶ大災害であった。この災害を契機として、六甲砂防事務所による直轄砂防事業が開始されたのである。
「昭和42年7月の大水害」では、死者95名、被害家屋3万8千戸の被害が発生した。「阪神大水害」と同規模の降雨を記録したにもかかわらず、犠牲者で約1/7、被害家屋で約1/5の被害に軽減することができたのは、それまでの砂防事業の成果によるものとうかがわれる。
また、平成7年1月17日に発生した「阪神・淡路大震災」では、六甲山全域の広い範囲で1,000箇所を超える山腹崩壊が発生し、その後の降雨による規模の拡大、二次災害の発生が懸念され、砂防堰堤の設置、山腹崩壊地の復旧等の緊急対策を実施したところである。(写真-2)
六甲砂防事務所では、「@土砂災害を防止するための砂防設備の整備推進」「A六甲山系グリーンベルト整備事業の推進」「B警戒避難体制の強化、防災意識の普及啓発活動の実施」を基本方針として、阪神地域を土砂災害から守る砂防事業を展開している。
砂防設備の整備においては、土砂災害の危険性が高い箇所への砂防堰堤等の設置とともに、老朽化した既設基幹施設の補強対策を実施している。また、市街地近傍における事業箇所や、観光地である有馬温泉近傍など多くの観光客等が訪れる箇所においては、景観や親水性に配慮した施設の整備を行っている。 (写真-3)
六甲山系グリーンベルト整備事業は、阪神・淡路大震災により緩んだ地盤に起因する二次災害の防止を図るため創設された事業であり、六甲山麓の一連の樹林帯を保全・整備することにより、「土砂災害の防止」「都市のスプロール化の防止」「良好な都市環境、風致景観、生態系及び種の多様性の保全と育成」「健全なリクリエーションの場の提供」を図り、安全かつ自然豊かな都市空間の創出を目指している。具体的には、市街地に面する斜面の公有地化及び取得済箇所における斜面対策・樹林整備を実施している。 (写真-4)
▲写真-7:情報ネットワークイメージ図 |
整備にあたっては、植生の根の力をできるだけ活かし、土木構造物の導入は必要最小限に抑えながら、健全な樹林帯を保全・育成することとしており、崩壊斜面や急傾斜地帯などで樹林整備(後述)だけでは崩壊等の防止が困難な箇所において施工する斜面対策においては、現存する樹木をできるだけ残しながら斜面の安定化を図る、鉄筋挿人工やのり枠工などの工法を用いている。 (写真-5)
また、樹林整備においては、様々な高さの木や下草がバランスよく生え、いろいろな年齢・樹種により構成された樹林の形成を日指して整備・管理を行っている。具体的にはネザサなどの下草刈りや不要な樹木の伐採などの後、コナラなどの苗木を植樹している。苗木が大きくなるまでの一定期間は下草刈りなどの撫育を継続的に実施している。 (写真-6)
六甲砂防事務所では、昭和59年より警戒避難体制の確立を目的とする総合土砂災害対策モデル事業を全国に先駆けて県・市と連携して実施してきた。特に、兵庫県南部地震以降は二次災害防止のため雨量計・cctv力メラ・土石流発生監視装置等の増設を行い、これまでに設置した観測機器は、雨量計36基、cctvカメラ31基、土石流発生感知装置17箇所、地震計9箇所、光ケーブル63.7kmを数えており、これらの観測機器により、土砂災各情報を的確かつ迅速に収集・提供し警戒避難体制の確保に資しているところである。また、より高い予測精度の確保に向けた降雨解析・土石流発生予測手法の開発、地下水位等を用いた新たな斜面崩壊予測手法の開発等にも取り組んでいる。(写真-7)
さらに、多くの方々に砂防事業への理解を深めてもらうため、また、防災意識の高揚のための普及啓発活動をしては、「土砂災害防止月間における街頭キャンペーン」「六甲山ウォーク」「どんぐり育成プログラム」「親子植樹体験教室」「出前講座」等々の取り組みを行っているところである。 (写真-8)
「地域住民との協働」「ハード・ソフト両面」から阪神地域の安全を確保していきたいと考えている。
▲写真-6:渦ヶ森地区樹林整備(前) | ▲写真-6:渦ヶ森地区樹林整備(後) | ▲写真-6:渦ヶ森地区下草刈り(前) | ▲写真-6:渦ヶ森地区下草刈り(後) |
▲写真-8:出前講座 | ▲写真-8:六甲山ウォーク |
●野寄東地区斜面対策工事 |
株式会社柄谷工務店 兵庫県尼崎市玄番南之町4 tel.06-6415-2800 |
●三条地区(4工区)斜面対策工事 |
日特建設株式会社 兵庫県神戸市兵庫区大開通1-1-1 神鉄ビル7階 tel.078-577-2570 |
●日柳川堰堤工事 |
家島建設株式会社 神戸支店/兵庫県神戸市中央区小野柄通6-1-6 tel.078-251-8761 |