建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年9月号〉

interview

食と観光で自立を目指す北海道の基盤整備を担う唯一の国の機関

ピーク時に比べ今年度末の定員は約48%事務所事業所数は約53%を削減

北海道開発局長 本多 満氏

本多  満 ほんだ・みつる
昭和23年7月27日生
小樽市出身
昭和48年3月北海道大学工学部卒
昭和49年4月北海道開発庁採用
昭和58年4月   〃   北海道開発局建設部道路計画課開発専門官
昭和61年6月   〃   地政課開発専門官
昭和63年6月   〃   北海道開発局建設部道路建設課長補佐
平成3年6月   〃   北海道開発局建設部道路計画課道路企画官
平成6年4月   〃   北海道開発局函館開発建設部次長
平成7年6月   〃   地政課事業計画調整官
平成9年7月   〃   北海道開発局建設部道路建設課長
平成10年6月   〃   北海道開発局建設部道路計画課長
平成12年6月   〃   地政課長
平成13年1月国土交通省北海道局地政課長
平成14年7月  〃  北海道局企画課長
平成15年7月  〃  北海道開発局札幌開発建設部長
平成16年7月  〃  北海道開発局建設部長
平成17年8月  〃  北海道開発局長
道州制論議が進められる北海道は、北海道開発局の組織体制のあり方までが問われている。だが、敗戦後に我が国の独立を勝ち取った吉田内閣によって設立された北海道開発庁と、その実施機関である北海道開発局は、かつて資源・エネルギーの供給基地であり、現在は食糧供給基地である北海道が、我が国の経済基盤を下支えするために、基盤整備の分野で重要な役割を果たしてきた。省庁再編によって、北海道開発庁は廃止されたが、その後も北海道開発予算の北海道シェアに、北海道民の経済と生活は大きく依存してきた。その基盤整備のお陰で、北海道の一次産業は、自給率185%にまで発展し、そして今後はそれを生かした食と観光によって、経済的自立を果たそうと死にものぐるいで奮闘している。その実を結ぶためにも、生産者の生活基盤と消費者の生活基盤、生産物の流通基盤の整備・完成は不可欠であり、その事業費確保と整備を担う北海道開発局の存在は重要である。

――開発局の組織は、その体制も歴史も本州とは基本的に異なっていますが、北海道において果たしている基本的役割についてお聞きしたい
本多
 
北海道の開発については、昭和25年に北海道開発法の制定、北海道開発庁の設置、26年にその地方支分部局である北海道開発局の設置により、国による北海道総合開発計画の策定から事業の実施まで、一元的に推進を図る体制が整備され、進められています。その後、省庁再編によって、平成13年1月にその機能は国土交通省に承継されました。
北海道開発事業においては、歴史的に北海道開発が国の責任と負担により進められてきたことや、大きな開発可能性を持つ北海道の開発は、長期的な国の施策として重要であること、また、開発の歴史が浅く、社会資本の整備が遅れており、さらに、面積が広大である反面、人口が希薄であることなどに由来する多額の開発事業費を、財政力が脆弱な北海道の地方公共団体に、他の都府県並みに負担させることは適当でないことなどから、道路、河川、港湾、空港、農業農村整備などの事業においては、本州等よりも高い国庫補助負担率や広い範囲の直轄事業が認められているところです。
北海道開発局は、国土交通省設置法に基づき、国土交通省の地方支分部局の一つとして設置されていますが、本州等では地方整備局や地方農政局がそれぞれ実施している国の直轄公共事業を、北海道において一元的に実施しています。また、補助金交付、都市・住宅行政、建設業の許可なども担当し、直轄公共事業と補助事業とを一体的・総合的に推進しています。
開発局としては、法令に定められたこれらの所掌業務を適切に遂行することによって、我が国の発展に貢献する北海道の開発を推進しているところです。
――北海道は開発の遅れが道民の生活と経済の足枷となってきましたが、社会資本整備の現状と問題点についてお聞きしたい
本多
 
北海道はゆとりある国土、本州とは異なる気候、豊かな自然環境などに恵まれ、多くの国民に愛されている地域です。その開発は、北海道開発法のもと、豊富な資源や広大な国土を活用し、我が国の課題解決に寄与することを目的として策定される「北海道総合開発計画」に基づいて、計画的・総合的に進められ、安全でゆとりある地域社会の形成に貢献してきました。その結果、整備水準が向上しつつある分野もありますが、一方では整備の進捗状況が低水準に留まっている分野もあります。
また、積雪寒冷な気候で、都市間距離が長いなどの制約条件が地域の潜在的な能力の発現を阻害する要因ともなっていることから、社会資本整備に当たっては十分な対応が必要であると考えています。
今後の北海道開発の推進に当たっては、北海道が我が国の課題解決に寄与し、期待される役割を十分果たしていくため、環境や社会への様々な影響を考慮しつつ、高規格幹線道路などいまだに立ち遅れた分野を中心に、地域の個性と活力が発揮されるよう社会資本整備の推進を図ることが必要であると考えています。
――総人件費改革などによる職員の大幅削減などが断行されていますが、開発局と北海道開発事業にもたらす影響は大きいのでは
本多
 
国家公務員の純減目標の設定などを通じて総人件費の削減を行うことは、現在の政府に課せられた重要な課題として認識しています。しかしその一方、北海道開発局は、根幹的な河川、道路、港湾、農業基盤施設などの整備や管理を行う機関なので、純減を行うに当たっては、大規模地震や水害、土砂崩れへの対応など、国民の安全・安心の確保について、国が果たすべき責務に支障が生じることのないような体制を確保していくことが必要であると認識しています。
北海道開発局の定員は、平成18年度末には6,159人となります。昭和40年度の11,767人をピークとして、その後一貫して計画的に削減を進めているところであり、今年度はピーク時に比べ約5,600人、率にして約48%を削減したことになります。
組織については、今年度には事務所・事業所などが119箇所となっており、昭和44年度の255箇所をピークとして、順次統廃合によるスリム化を進めています。その結果、今年度にはピーク時に比べ136箇所、率にして約53%が減少したことになります。
北海道開発局としては、引き続き、人員及び組織のスリム化に取り組んでいきます。そのため今後とも、事務・事業の見直し、委託化、請負化、事務処理の簡素化、itの活用など、業務処理の改善を積極的に進め、簡素にして効率的な業務運営に努めながら、立ち遅れている高規格幹線道路の整備など交通ネットワークの形成や、北海道の強みである「食料」、「観光」の競争力強化に資する基盤整備、防災・減災対策の推進など、必要な事業の着実な推進に努め、国民、道民から付託された使命を全うしていきたいと考えています。

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