寄稿
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旭川市に施工されている道営住宅宮下西団地は、西側に向って多少の勾配はあるものの、概ね水平敷地です。南側にJR線があり、宮下通4丁目1号線は、JR線に向けて勾配道路となり、境界に擁壁が設けられます。 敷地の周囲は、北側にマンションや店舗があり、南側は忠別川公園へとつながります。JRは平成23年度完成予定で高架線整備中で、東側は旭川市営住宅の整備予定地や高層の分譲マンションがあります。西側は隣地に保育園、寺、分譲マンションがあり、さらに旭川赤十字病院、常盤公園があります。公園内には市立図書館や美術館、公会堂があります。北東約100mのところにはバス停もあり、このように利便性の高い敷地条件です。
こうした地勢を踏まえた上で、計画に当たっては 「北海道公営住宅等安心居住推進方針」及び「北海道営住宅設計指針」、「北海道環境共生型公共賃貸住宅」を踏まえ、ユニバーサルデザインの理念に添い、環境を重視した計画としました。 また、 「北彩都あさひかわ」及び「北彩都A街区公共賃貸住宅整備基本構想」のまちづくり計画、住宅整備構想を踏まえ、旭川の豊かな自然を取り入れ、まちなか居住のメリットを生かした安全・安心な・まちなか居住団地として計画しました。 その他、周辺市街地との調和や環境に配慮した計画として、居住環境を大切にしました。そして、世代を超え、多様な価値観を持った人々が活き活きと暮らし、交流を生む施設とし、防犯性の向上と地区全体のコミュニティ形成に寄与する空間づくりを目指しています。さらに、厳しい積雪・寒冷の気候風土に適応し、コスト縮減に配慮した計画としました。 これに基づき、設計に当たっては「長寿社会対応住宅設計指針」等を踏まえた計画で、高齢者の不安を解消するとともに快適な住戸計画。四季を通じて高齢者の団地内外の施設利用や相互訪問が容易となるよう歩行の有効なネットワーク化。団地内には高齢者・子供等の世代間交流の広場を整備することが外構整備のポイントとなります。
そこで、配置計画としては、過密な配置を避け、ほど良い空地を生み出し、都市の品質を高めています。また、周辺の都市環境に合わせたスケールの住棟形態及び配置としています。住棟を分散せず一棟とすることで、建築面積を抑え、オープンスペースを充実させています。周辺の高層建物と釣り合う建物高さとし、周辺建物から距離を保った配置としています。建物の周囲には充分な空地と緑を配置し、道路や隣地への圧迫感を和らげています。集会室は、交差点に面してあるウエルカムパークに設け、団地内及び団地外からも利用しやすい位置としています。 また、忠別橋公園とのつながりを考慮し、西側幼稚園の緑と連続した位置に芝生広場と児童遊園を設けています。その他、広場と駐車場を連続した位置に設け、イベントなどで一体とした利用が可能な配置としています。 そして、近隣の日照、眺望にも配慮し、日影規制と隣棟日影によって建築位置を決定しました。隣接する保育園への日影にも配慮し、南側住棟を6階建として低く抑えています。隣接するマンションと保育園側に駐車場と広場を設けて空地を確保し、日照と眺望に配慮しています。 入居者のためには、歩行空間の確保と充実につとめた計画としています。住棟内の廊下、敷地内通路、車路を並列に設け、歩車分離の動線としています。また、歩行者の動きに合わせ、JR線やバス停からの歩行者動線に出入口を設けています。積雪時の対応としては、駐車場の車の雪を後方に、車路の雪を広場に堆雪します。歩道は緑地スペースに堆雪することとしました。
団地本体となる住棟については、ユニバーサルデザインの理念に沿い、安全で利便性が良く快適な居住環境とするため、分棟せず連続させ、一棟として計画しています。出入口、エレベーター、階段は複数設置となるため、移動ルートが選択でき、緊急時やメンテナンス時にも移動ルートが確保されます。一方、分棟としなかったことで、階段2ヶ所、エレベーター1基を縮減しています。 その他、住戸の水廻りを重ねて配置することで、住戸間の騒音を軽減させています。採光は充分に得られ、見通しの良い住棟計画とするため、片廊下型の形状で、隣棟による日影をつくらず充分に採光が得られます。片廊下型で共用部も採光や通風が良く、わかりやすい住棟平面としています。周辺建物に協調して、東側にバルコニーを設けました。集会室は住棟と連続して設け、天候に関係なく利用できるよう外部から出入りしやすい位置に配置しました。
この宮下西団地は、全体で住戸を150戸整備します。住戸形式は2DK、2LDK、3LDKの3タイプで、構成比率としては、2DK:1、2LDK:2、3LDK:2の割合としています。 ・A棟は2DK12戸、2LDK24戸、3LDK22戸で、3LDKと同じ広さの2LDK(L)障害者向け住戸を2戸設け、合計60戸を整備します。B棟は2DK12戸、2LDK24戸、3LDK24戸で、合計60戸を整備します。C棟は2DK6戸、2LDK12戸、3LDK12戸で、合計30戸を整備します。 また、ユニバーサルデザインの視点を中心に改訂された「北海道営住宅設計指針」の標準平面に即して計画しており、在宅介護に配慮した暮らしやすい広さを確保するため、各戸の床面積は2DK:50u、2LDK:60u、3LDK:70u程度のスペースとしています。主寝室は2DK、2LDK、3LDK共通で、3.0m×3.5mとしています。 移動しやすさ、使いやすさを確保するため、主要な動線は、介助者付車椅子が移動しやすい1.2mの幅としています。WCは介助者付車椅子が進入可能な広さを確保しています。住戸内の扉は、有効開口850の引戸を採用しました。玄関の上框、扉下枠には、段差を無くしました。 さらに、多様な住まい方に対応できる柔軟性に配慮しています。2LDK、3LDKのWCは、取り外し可能な間仕切とし、寝室間は一体的に利用できるよう、移動可能な間仕切壁としています。収納スペースの棚は可動式です。2DKは寝室からUTへつながる移動可能な間仕切壁としています。 ?
旭川市道営住宅(宮下西団地)新築工事に貢献