寄稿
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独立行政法人都市再生機構(以下、都市機構)は晴海三丁目西地区内の約4.2haにおいて、既存集合住宅の建替による居住機能の更新・継続と新規住宅供給を主体として、宿泊・業務機能等諸機能の導入による複合市街地の形成を目指し、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図り、併せて道路他公共施設の整備を行うため、都市再開発法に基づき、東京都市計画晴海三丁目西地区第一種市街地再開発事業を施行しています。 当地区は戦後に海運の流通基地、住宅団地の混合した地区として発展し、昭和34年には東京国際見本市会場(東京国際貿易センター)が竣工して、国際交流地区としての性格を強めました。そして平成13年に晴海トリトンスクエアが竣工し、地区全体の開発ポテンシャルが大きく変化しました。 また、広域立地特性としては、臨海軸・隅田川軸に位置しており、陸、海、空への交通の便に優れている豊かなウォ−タ−フロント環境があり、周辺地区には銀座・お台場などで大型文化・商業−レクリエ−ション施設の集積が見られます。 そのため、地域のポテンシャルとしては、都心に近い大規模な敷地が確保されているため、都心、海への優れた眺望が可能であり、周辺地区からの視認性が高くなっています。また、生活利便施設が月島、勝どきなど隣接地域に集積し、「界隈性のある下町が隣接」していると言えます。さらには、利便性の高い道路ネットワークに恵まれ、アーバンコンプレックスエリア(地区センター)としてトリトンスクエアが隣接することから、土地利用転換による環境創造の自由度も高くなっています。 当再開発事業では4つの街区に住宅や業務施設など計7棟の施設建築物を計画し、地区のまちづくりのテーマとして、1.良質な生活環境をつくる(安全に楽しく歩けるまち、コミュニティの育まれるまち)、2.潤いある自然環境をつくる(多様な緑に包まれたまち、水に親しめるまち〜「海の見える丘の街」−水と緑のキャナルフロント・レジデンス)、3.新たな都市景観をつくる(一体感のあるオープンスペースの創出、超高層群として調和のとれたまち)をそのコンセプトとしています。 当再開発事業では都市機構、権利者の他、特定建築者制度等により民間事業者の参画も予定しております。今後、各街区の計画に際しては、複数の事業者間で、景観他密接に設計調整を行うことを予定しており、上記コンセプトに即した、一体感のある魅力的なまちづくりを行うことを目指しています。
住宅A1棟(仮称)の概要以下、再開発事業の中で、先行し、整備される住宅A1棟(仮称)の設計概要について説明します。住宅A1棟は地区内北西部の朝潮運河沿いのA街区に計画されている3棟の超高層の1つで、住宅(権利者住宅、再開発住宅、UR賃貸住宅)計736戸からなる、地下1階、地上49階建ての超高層住宅で、平成21年末の竣工を予定しています。
配置計画住宅A1棟の配置は、上位計画である地区計画に準拠し計画されています。 A街区に3棟並ぶ超高層住棟同士のプライバシーを配慮し、圧迫感を低減することを企図し、住棟は街区の軸線に対し45度角度を振り、配置しています。 低層部の人工地盤はA街区の3棟の足元の動線を2階レベルで接続し、街区内に緑溢れる立体的な回遊動線を構成します。各棟間の結節点周辺には運河側、黎明橋公園側各々に親水性、出会いをテーマとした性格の異なる特徴ある広場を整備します。またそれぞれ人工地盤上の空間とも相互につながり、賑わいと憩いの歩行者空間ネットワークを形成します。 敷地の東角は、晴海三丁目西地区のエントランスプラザとして整備し、住宅A1棟のメインエントランスは当プラザに面し配しています。 また、当地区の生活軸の中心となる黎明橋公園通りに面し店舗等の生活支援施設を配し通り沿いの賑わいを演出します。
外観デザイン地区全体を周辺と調和する透明感のある建物群とするとともに、地区内の建築物デザインに共通のモチーフ、カラーなどを採用し、統一感ある超高層群として個性ある景観を構成することを目指しています。 超高層住棟はとの水辺空間におけるランドスケープを考慮し、上層に向かって透明感の増すグラデーションを外壁デザインに採用します。また朝潮運河側の建物のコーナーについては水面への映りこみによる効果を意識し、低層部から最上階までを貫く垂直性を強調するエッジとして表現しコントラストある表情を持たせることを意図しています。 頂部についてはルーバー等の軽快な素材によるフラットなデザインを採用します。 また低層部は、水と緑に融合する自然素材を採用、アースカラーを基調とし、潤いとやすらぎを与える配色とし、キャナルフロントの明るく軽快なデザインとします。
構造計画構造については、実績のある構工法の採用と先端技術を統合することにより、高品質・経済性・短工期を重視した構造計画を目指しました。架構形式はデユアルフレ−ムによる高強度コンクリートを用いたRC(PC)構造とし、小梁のない大型スラブを採用することにより住戸計画のフレキシビリティを確保しています。また基礎は、大きな支持力を保持し、かつ液状化に対する安全性を確保できる場所打ちコンクリート杭基礎としています。
共用部計画共用部として地下1階に約230台(住戸数の約30%)の駐車場、1階にメインエントランスホール、駐輪場、防災センター、及び生活支援施設、2階人工地盤面に約180uの集会場、及び生活支援施設を計画しています。 住棟エントランスは1階黎明橋公園通り側をメインとし、運河側にサブエントランス、また2階人工地盤にもサブエントランスを設け、各方面から住戸へのスムーズなアプローチを可能とします。各エントランスのインテリアは住棟の顔として品格のある端正なデザインとしています。 3〜49階の住宅階においては自然光、風の入るボイド(吹き抜け)を中心に共用廊下及び各住戸を配置し、開放感のある共用廊下と各住戸への採光・通風を可能とした計画としています。 エレベーターは低層、中層、高層にゾーニング、高速のエレベーターを採用し、かご内には防犯カメラを設置し、防犯性にも配慮しています。 また、子供から高齢者までの幅広い層が快適に住み続けられるようバリアフリーを徹底し、床段差の解消、各所への補助手すりの設置、バリアフリー対応のトイレの設置など安全性・快適性に対する配慮を行なっています。
住宅計画住宅の計画に際しては、開放的な環境や眺望を生かした魅力あふれる居住空間を創造し、住戸内にいながらも、街への眺望と解放感を享受できるよう配慮しました。 住宅は権利者住宅、再開発住宅、UR賃貸住宅から構成されます。 このうち、UR賃貸住戸については、都心環境を充分に使いこなすユーザー像を分析しながら、幅広い都心居住の需要に応えるべく、様々な世代、家族形態、ライフスタイルに対応できるよう1K〜3LDKの多様な間取りの住宅を企画しています。 浴室から眺望を楽しめるビューバスタイプ、最上階には明るく天井の高い高階高住宅、西・北面には間口が広く開放感あふれるワイドフロンテージ型住宅、また高層部にはゆったりとした間取りの住宅などを計画しています。 また各住宅については断熱性、遮音性、バリアフリー等の基本性能を確保することに加え、床暖房、エアコン、高速インターネット、浴室暖房乾燥機など充実した設備を装備する計画としています。
SIの導入長期耐用化による良質な社会ストック形成等を目指し、A1棟においてはKSI住宅(Kikou Skeleton and Infill Housing)を採用しています。長期高耐久性を有するスケルトン部分(構造躯体)と変化や更新への対応が可能なインフィル部分(内装・設備)を明確に分け、建物の長寿命化を図り、自然環境への負荷の低減に貢献するとともに、ライフスタイルや家族のあり方の変化などさまざまなニーズに応えられるフレキシブルな居住空間を作り出します。KSI住宅の要素技術としては、大型床版の採用、排水用縦管の共用部設置、電気配線の躯体からの分離などを採用しています。 ?