建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年10月号〉

寄稿

「選択と集中」で効果的・重点的な整備促進

――北海道札幌土木現業所 平成 19年度事業概要

北海道札幌土木現業所長 樺沢 孝

樺沢 孝 かばさわ・たかし
昭26年7月生 江別市出身、北海道大学工学部卒大学院修、昭52年入庁、平 7年6月函館土現治水課長、平 8年4月帯広土現総務課長、平10年4月総合企画部政策室主幹、平11年5月総合企画部構造改革推進室主幹、平12年4月札幌土現企画調整室長、平13年4月網走土現事業部長、平14年4月総合企画部有珠山火山活動災害復興対策室参事、平15年6月建設部企画調整課長、平16年4月建設部都市計画課長、平17年4月建設部砂防災害課長、平17年8月北海道開発局建設部河川管理課長、平19年6月現職

札幌土木現業所が所管する石狩・空知の両支庁は、道都札幌市や北海道の空の玄関である新千歳空港や、重要港湾石狩湾新港といった物流・人流の要衝があるなど、北海道における政治・経済の中心的な地域となっています。
 また肥沃な石狩平野や空知管内では、稲作や花き栽培等の農業が盛んであり、特に稲作の収穫量は全道の半数近くを占めるなど、農業は主要な基幹産業となっています。支笏洞爺国立公園などの豊かな自然や雪国の四季の魅力を活かした観光も重要な産業であり、近年は外国人観光客、特に東アジア地域からの観光客が飛躍的に増加しています。 このように、当管内は北海道の政治・経済の中心としての役割に加え、札幌・旭川という大都市近郊における「緑豊かな田園地域」「食と観光・リゾート地域」としての発展が期待されています。

▲当別ダム完成予想CG

しかしながら当管内には、広域分散型の社会を形成し都市間の距離が大きいこと、中央部に石狩川が貫流すること、さらに、冬季の走行速度の低下、交通事故の発生率の増加など特有の地域事情があります。地域の経済活動や医療、観光面においても、着実な道路整備が引き続き求められるとともに、地域の連携や自立的発展を支えるためにも、高規格幹線道路へのアクセス向上など、幹線道路ネツトワークの着実な整備が必要です。
 また、近年多発する台風や集中豪雨による洪水や、土砂災害などの自然災害から道民の生命と財産を守るための河川改修や、ダム事業などの着実な推進が不可欠です。
 北海道では現在行財政改革を進めており、限られた財源下にあって、災害に強い地域づくりや個性のある地域づくりのため、基本的な考え方に沿って良質な基盤を「選択と集中」により効果的・重点的に整備を促進します。
 平成19年度当初の公共事業費は、現時点で345億7千5百万円、箇所数は203箇所で、事業費の対前年度比は88.7%となっていますが、今後、道議会の2定補正や道州制モデル事業を加えて、昨年度並みの予算確保に努めてまいります。
 具体の事業内容について申しますと、道路事業は、事業費159億5百万円、箇所数129箇所となっており、主な事業としては、通行の安全確保と石狩川を挟む地域間の物流の円滑化を図るため、美唄浦臼線美浦大橋の新設、岩見沢月形線月形大橋及び江部乙雨竜線江竜橋の架換を促進します。
 また、都市部における渋滞対策等として、昨年度は東雁来江別線(江別市)の4車線化や、団地中央通(恵庭栗山線(恵庭市))の立体交差事業の完了を図りましたが、引き続き国道36号の混雑緩和のため仁別大曲線(北広島市)の4車線化を進めます。さらに、交通不能区間や冬期交通不能区間の解消として、旭川多度志線では、急カーブや急勾配が多<交通の溢路となり、冬期通行止めとなっていますが、冬期の交通不能を解消、安全確実な通年交通確保のため、橋梁2基が既に完成、土工、法面工を施工して本年度内の完成を目指します。

▲美浦大橋完成予想CG

街路事業は、事業費40億7千万円、箇所数30箇所となっており、主な事業としては、江別の顔づくり事業と一体的に野幌地区のJR函館本線連続立体交差事業が本格化するとともに、奈井江町の14号東通で立体交差事業を促進します。  下水道事業は、事業費4億2千3百万円をもって、石狩川流域下水道の処理場及び中継ポンプ場の改築更新と、管渠の維持工事を行います。  治水関係では、河川事業は、事業費59億9千4百万円、箇所数31箇所で、主な事業としては、徳富川や柏木川等において自然環境に配慮した河川整備を促進するとともに、千歳川流域対策事業として、長沼町の南九号川などで直轄事業と連携を図りながら整備を進めます。  ダム事業は、事業費66億9百万円、箇所数2箇所で、主な事業として、当別ダム建設工事では、多目的ダムとして当別川の洪水調節やかんがい用水及び水道用水の確保のため、平成19年度はダム本体工事を予定しており、いよいよ工事が本格化します。  砂防、地すべり、急傾斜地事業は、事業費14億3千3百万円、箇所数9箇所で、主な事業として、待合川(深川市)や沼田奔川(沼田町)砂防工事で、山腹崩壊、河岸浸食などが原因の土砂災害による周辺農地の被害を防止し、環境保全護岸により植生の早期回復を図るなど、自然環境に配慮した工事を行います。  漁港、海岸事業は、事業費1億4千1百万円で、厚田漁港海岸の環境整備工事を行います。  この他、ソフト対策事業として、市町村の洪水ハザードマップ作成支援のため、札幌市の豊平川ほか、岩見沢市の幌向川、当別町の当別川の浸水想定区域の調査を促進します。

▲月形大橋完成予想CG ▲徳富川広域基幹河川改修(自然石を使用した水制工)

事業を推進していく中での今後の課題について、北海道は戦後、急速に社会基盤の整備を進めてきましたが、今後これらの既存ストックの更新が必要な時期を迎えます。厳しい財政状況のなかで、更新のための膨大な予算を確保していくことは困難なことから、施設を適切に維持管理していくためには、ライフサイクルコストを考慮した更新や既存施設の有効活用のための「保全計画」を策定して取り組みます。  橋梁については、長寿命化の取り組みをスタートさせましたが、橋梁点検を着実に行い、橋梁マネジメントシステムを活用しながら早期に修繕計画を策定し、橋梁の長寿命化による経費の縮減、平準化を図ることが重要と考えています。  投資環境の厳しさについては既に述べましたが、札幌土木現業所の平成19年度補助事業費はピークであった平成10年度の6割を切るなど、予算は大幅に削減されてきており、投資環境は厳しさを増しています。  修繕、補修等が主体である単独事業については、さらに厳しい状況であり、今後は、これまで以上に施設の維持管理が大きな課題となると思われます。  住民サービス水準の低下を極力招かないように留意しつつ、住民への説明責任を果たしながら、除雪や草刈りの維持管理水準の見直しを進めることが必要です。また、道路や河川といった施設の維持に関して、公共施設は地域の財産であるという考えのもと、快適な環境づくりを進めていくことを目的に、地域の住民の方々との協働による仕組みづくりについて、一層の取り組みを進めていきたいと考えております。  札幌土木現業所では、地域住民参加による道道の花壇清掃や植栽、河川敷地の河畔林の造成や清掃、美化など、地域住民の方々やNPO、愛護団体、企業等と連携したプログラムを強力に推進してまいります。

▲待合川砂防(斜路式落差工) ▲仁別大曲線(4車線化)

北海道の土木行政に貢献します
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