建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年11月号〉

interview

食料生産と観光をインフラで支援する開発事業へ(前編)

――ダンピング工事に対する監視を

北海道開発局局長 鈴木 英一氏

鈴木 英一 すずき・えいいち
昭和50年 3月 北海道大学工学部卒
昭和50年 4月 北海道開発庁採用
昭和63年 4月 同北海道開発局石狩川開発建設部千歳川放水路建設事業所長
平成 3年 4月 同北海道開発局帯広開発建設部帯広河川事務所長
平成 4年 6月 同北海道開発局建設部河川計画課長捕佐
平成 5年 4月 同水政課開発専門官
平成 7年11月 同北海道開発局建設部河川計画課河川企画官
平成 9年 4月 同北海道開発局旭川開発建設部次長
平成10年 6月 同北海道開発局石狩川開発建設部次長
平成12年12月 同北海道開発局長官房開発調整課長
平成13年 1月 国土交通省北海道開発局開発監理部開発調整課長
平成14年 8月 同北海道開発局建設部河川計画課長
平成15年 7月 同北海道局水政課長
平成17年 8月 同北海道局参事官
平成18年 7月 同北海道開発局建設部長
平成19年 7月 同北海道開発局長

北海道経済は、これまで農業と建設業が基幹産業となって道民の暮らしを支えてきたが、建設業は公共工事の激減にともなうダンピングによって自滅の道を辿っており、産業といえる体制にはなくなったことから、今後は農業と、これに観光をドッキングして生きる以外に道はなくなった。このため、戦後の北海道開発を担い、企業活動から庶民の日々の暮らしに至るまで、トータルに利便性の向上に貢献してきた北海道開発局の基盤整備事業も、農業と観光をインフラ面から支援する方向へと特化しつつある。新しい総合開発計画の骨子も明示されたが、今後は建設産業の縮小再編を促しつつ、新たな開発理念の実現に向けて制限的に開発事業が実施されることになる。こうした厳しく舵取りの困難な転換点に立たされた鈴木英一局長に、新計画の骨子と、建設産業再編に向けての方向性などを伺った。
――新しい長期計画で北海道開発はどう方向づけられましたか 
鈴木
今後の北海道開発は、「グローバル化の進展」、「自然環境・エネルギー問題」、「人口減少・少子高齢化」といった我が国を取り巻く環境の変化に対応し、北海道の優れた資源・特性を活かしながら、大転換期の我が国が直面する課題の解決に貢献するとともに、活力と競争力ある地域経済社会の形成を図っていくことが重要です。  このような方向性の下、人口・財政などの地域の成長制約条件が顕在化する中で、限られた資源を重点的・効率的に活用し、北海道の持つポテンシャルを最大限に発揮させるため、北海道が比較優位にある「食料生産」、「観光」の競争力強化に資する基盤整備、地域の成長力・競争力強化を支援するための高規格幹線道路など交通ネットワークの形成によるモビリティの向上、防災施設整備などのハード対策と併せて、迅速かつ円滑な災害対応を行うための情報の共有・伝達体制の整備などのソフト対策を一体的に進める総合的な防災・減災対策に重点的に取り組んでいくことが必要です。  また、地方の時代という流れの中で、地域の自律性・主体性の発揮により計画(ビジョン)を効果的に推進するためには、国、地方、住民、NPO、企業等多様な主体が戦略的に連携していくことが不可欠であると思います。
――今年度予算における重点項目と来年度の概算要求の概要をお聞きしたい 
鈴木
平成19年度の北海道開発予算のうち、北海道開発局実施分は、事業費で5,122億円、対前年度当初比0.96倍となっています。  北海道開発局としては、食料、観光などの分野を中心に地域の成長力・競争力強化を支える施策や、近年頻発する自然災害を踏まえた防災・減災対策など、安全・安心に暮らせる地域社会の実現を図る施策など、当面する課題に重点的に取り組むとともに、コスト構造改革の推進により事業の効率性の向上を図るなど、重点化・効率化をさらに徹底し、真に必要な事業の推進に努めているところです。  平成20年度は、今後10年にわたる新たな北海道総合開発計画がスタートする重要な年でもあります。  また、来年7月には、北海道の魅力や先駆的な取り組みを世界にアピールする絶好の機会となる北海道洞爺湖サミットが開催されます。  こうしたことを踏まえ、平成20年度の概算要求においては、今後の北海道開発の方向性として示されている「グローバルな競争力ある自立的安定経済の実現」や「地球環境時代をリードし自然と共生する持続可能な地域社会の形成」など5つの柱に沿って、投資の重点化や多様な主体との連携・協働を図りつつ、必要な施策の推進に取り組むこととしており、対前年度比1.19倍、総額で7,647億円(重点施策推進要望を含む)にのぼる概算要求となっています。  国・地方の財政は非常に厳しい状況にありますが、北海道開発局としては、北海道がその優れた資源・特性を活かし、国の課題解決に貢献するとともに、地域の活力ある発展を実現できるよう、関係機関と連携し、必要な予算の確保に努めていきたいと考えています。 (以下次号)
北海道の開発事業に貢献します
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