年頭所感
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平成20年という新しい年を迎え、謹んで新春のごあいさつを申し上げます。 昨年を振り返りますと、能登半島地震、新潟県中越沖地震などの大地震や台風等の自然災害、遊戯施設の事故などにより、多くの国民の安全・安心な暮らしが脅かされました。国民の生命・財産を守ることは国土交通省の重要な使命であり、引き続き全力で取り組んでまいります。 一方で、我が国は、本格的な人口減少・高齢化社会の到来、急速な経済のグローバル化、地球環境問題の深刻化、環境や美しさを重視する国民の価値観の変化など、歴史的な転換期を迎えており、このような時代の潮流の変化に的確に対応して、私たちの子どもや孫たちが自信と誇りを持てるような国づくりを進めていかねばなりません。特に、「地方の再生」が国政の喫緊の課題となっております。地方の再生のためには、地方と都会とが共に支え合う「共生」の考え方に立ち、地方が自ら考え、実行できる仕組みを考えていくことが必要です。 国土交通省は、国土政策、社会資本整備、交通政策等を総合的に推進するという幅広い任務を担っており、そのいずれもが国民生活や経済活動に密着しているものです。 このため、国民の皆様の視点に立ち、国土の将来像を踏まえつつ、時代の要請にふさわしい国土交通行政を推進するため、以下に申し述べる課題に取り組んでまいります。
地方の再生のためには、アジアの成長力を取り込み、都市・産業集積を強化することを通じて、多様な広域ブロックが自立的に発展するとともに、各ブロック内において様々な地域が交流・連携しながら発展していく姿を目指すことが必要です。平成19年度中に閣議決定を予定している「国土形成計画(全国計画)」においても、広域ブロックを単位とする地方が、その有する資源を最大限活かして地域戦略を描き、自立的に発展する国土構造を目指しております。これを具体化するものとして、全国8つの広域ブロックにおいて、国と地方の協働により、「広域地方計画」を平成20年度中に策定することとしております。 地方の再生に向けては、この広域地方計画の枠組みも活用しつつ、交通ネットワークの整備など真に必要な社会資本への集中投資、地方の鉄道やバスなどの地域公共交通の活性化・再生、中心市街地の活性化や都市再生、集約型都市構造への転換の推進、観光振興などの地域の創意工夫あふれる取組への支援、地域づくりの担い手である建設業の再生などを着実に推進してまいります。ー方、人口減少・高齢化の著しい地域等に対しては、官民協働の「新たな公」による地域コミュニティの再生、コミュニティバスの導入支援等による日常生活の足の確保などにより、生活者の視点に立った暮らしやすい地域を形成してまいります。
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本格的な人ロ減少・高齢化社会を迎えつつある我が国において、持続的な成長を維持していくためには、台頭するアジアをはじめとする諸外国の成長と活力を取り組むことが必要です。そのために「アジア・ゲートウェイ構想」の実現に向けた人流・物流システムの構築、国内外からの投資を喚起する不動産市場の整備、ICTを利活用したイノベーションの推進などにより、国際競争力の強化を図ってまいります。 アジア・ゲートウェイ構想の実現に向けては、引き続きアジア各国との航空自由化に向けた交渉を進めるとともに、羽田空港については、昨年9月の上海虹橋国際旅客チャーター便就航に続き、北京南苑空港との定期的チャーター便の就航実現を図ることとしております。また、今後、関西国際空港の貨物地区整備や連絡機料金引下げ等を通じ、関西・中部両国際空港を我が国を代表する国際拠点空港として戦略的にフル活用するとともに、羽田・成田などの大都市圈拠点空港やスーパー中枢港湾の整備、臨海部物流拠点の形成、これらと都心部等を結ぶ道路や鉄道の整備、高速道路ネットワークの効率的活用・機能強化、アジアにおける物流インフラ整備への支援、本年5月の「日中韓物流大臣会合」の開催による国際連携の強化など、ハード・ソフト両面から、迅速、円滑、低廉な人流・物流体系の実現を目指します。 不動産市場の整備については、不動産市揚データベースの構築や、官民連携による投資家に信頼される不動産投資市場の確立を図ってまいります。 さらに、人口減少局面においても高い生産性を確保するため、国民生活や経済社会活動に密着する国土交通分野においてICTを最大限に利活用し、イノベーションを次々と生み出していくための環境整備を推進してまいります。
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観光は21世紀の国づくりの柱です。我が国は伝統・文化・自然・歴史・産業・自然等の魅力あふれる国であり、国内外の交流を促進することが重要です。このため、昨年6月に閣議決定された観光立国推進基本計画に掲げられている訪日外国人観光客一千万人等の目標の達成に向けて、ビジット・ジャパン・キャンペーンの高度化や国際会議の開催・誘致を推進するとともに、地域における観光地づくりへの取り組みを支援するため、国際競争力の高い魅力ある観光地の整備促進事業の実施、観光統計の整備、地域における観光振興の先進事例の普及等を推進してまいります。また、国全体として、官民を挙げて取り組む体制を整備するため、観光庁の設置を目指すなど、これまで以上に観光立国の実現に向けた取組を強化してまいります。
地球温暖化問題については、我が国は、本年7月に開催される北海道洞爺湖サミットなどの場を通じて、世界をリードしていかなければならない立場にあります。国土交通省としても、本年10月の「交通分野における地球環境・エネルギーに関する大臣会合」の開催等により国際連携を強化しつつ、低公害車や燃費に優れた船舶の開発・普及、環状道路の整備、グリーン物流の推進、公共交通機関の利用促進などにより、環境にやさしい交通の実現を図るとともに、住宅・建築物の省エネ性能の向上、省C02型都市構造を目指した都市づくりの推進、地球環境の監視・予測の強化などに取り組んでまいります。さらには世界の水問題の解決に向けた対応にも積極的に貢献してまいります。 また、多様な生物の生息・生育・繁殖の重要な基盤となっている、河川、海域などの豊がな自然環境の保全・再生を進めてまいります。 さらに、今後はストック型社会・循環型社会への転換が求められており、住宅の寿命を延ばす「200年住宅」の推進、建設則産物のリサイクルの推進、下水汚泥等の有効利用の推進、静脈物流ネットワークの構築などを図ってまいります。
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以上、新しい年を迎えるにあたり、国土交通省の重要課題を申し述べました。国民の皆様のご理解をいただきながら、ご期待に応えることができるよう、諸課題に全力で取り組んでまいる所存です。 国民の皆様の一層のご支援、ご協力をお願いするとともに、新しい年が皆様方にとりまして希望に満ちた、大いなる発展の年になりますことを心より祈念いたします。