寄稿
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(前号続き)
災害に強い水道施設の整備について
(2)地震等の災害時における応急対策について
■応急給水拠点(緊急貯水槽)の整備
地震等の災害時に、生命維持に必要な最小限の飲料水(1人1日3g、3日分)を確保することを目的に、応急給水拠点として緊急貯水槽を整備しています。
昭和62年に水道局本庁舎にはじめて設置し、平成21年度までに全33箇所の整備を予定しています。
全箇所の整備が完了すると、緊急貯水槽により確保される貯水容量の合計は6,200m3となり、JR函館本線以北等の軟弱地盤地域を対象とした市民約68万人に対応可能な水量となります。また、平成16年度からは、緊急貯水槽を設置している各町内会への説明会も実施しています。
▲緊急貯水槽イメージ図 |
■運搬給水拠点施設の整備
避難所などに運搬する飲料水や生活用水を確保するため、配水池に緊急遮断弁を設置しています。現在14箇所の配水池に設置しており、約8万1千m3の水を確保できるようになっています。
▲パイプインパイプ工法による耐震化 |
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■平成16年新潟中越地震時の応援活動
平成16年10月23日、新潟県中越地方はマグニチュード6.8(最大震度7)の大地震に見舞われ、水道施設等のライフラインが寸断されました。阪神淡路大地震以来の大規模地震となり、札幌市は、日本水道協会の要請を受け、地震発生の翌日から長岡市において応急給水活動を実施し、11月6日までの約2週間にわたり第1〜3次応援隊として延べ27名の職員を派遣しました。
札幌市は、平成8年に締結された「12大都市水道局災害相互応援に関する覚書」に基づき、仙台市と「合同防災訓練に関する覚書」を締結し、「応援隊派遣マニュアル」等を策定しており、長岡市への応援準備はこのマニュアルを参考に円滑に進めることができました。
札幌市水道局の施設整備事業の推進について
■浄水施設の整備
本市最大の白川浄水場(配水能力65万トン/日)については、代替のない基幹施設であることから、より一層の信頼性の向上を目指した整備を進めており、平成19年度は、排水処理能力の向上のため、濃縮槽の増設工事を実施いたしました。平成20年度は、自家発棟の耐震化などに着手する予定です。
■高区配水施設の整備
高台地区への配水施設であるポンプ場や配水池について、貯留時間不足の解消(12時間分の確保)や、耐震性補強、1池構造の解消などを目的に整備方針を策定しており、施設の優先度などを考慮して整備を進めています。
平成19年度は、4箇所の配水池の耐震化工事、ポンプ場の新設工事などを実施しています。
▲耐震管の吊り上げ試験 |
■送水管及び幹線
(口径400mm以上)の整備
将来増加が見込まれる給水需要に対応するため、適正な水圧の確保など、より一層の安全安定給水を目指し、幹線整備計画を策定し整備を進めています。
幹線整備の目的は、「適正な水圧の確保」、「ブロック配水システムの拡大」、「災害に強い幹線ネットワークの形成」、「将来の管路更新、配水区域変更に備えた管網整備」であり、平成18年度末で幹線延長は約38.9kmに及んでいます。
一方、送水管については、札幌市最大で最も重要である白川送水管の耐震化、バックアップ化等を目的として、現在、白川第3送水管の新設工事を実施しているところです。
▲白川第3送水管イメージ図 |
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■送配水管のネットワーク・バックアップ化
送水管延長約47km、配水管延長約5,700kmのうち、配水管のネットワークを構築し、事故や災害時を含めた信頼性・安定性の向上を図っています。
札幌市の特徴的なシステムとして、最大の浄水場である白川浄水場と、藻岩浄水場、西野浄水場、宮町浄水場は管路で結ばれており、万一の事故や災害が発生し、藻岩・西野・宮町の各浄水場の運転等が困難になった場合には、白川浄水場で製造した水道水を送水することで、バックアップが可能となっています。将来的には、残る定山渓浄水場に対してもバックアップ管を結ぶ計画です。
■水道配水管布設事業
【耐震化】
昭和55年より、主にJR函館本線以北に広がる軟弱地盤地域で耐震管(耐震型継ぎ手管)の採用に着手いたしました。平成7年に発生した阪神淡路大震災においてその有効性が立証されたことから、平成9年度より耐震管の使用範囲を拡大しています。
平成18年度末では、耐震管の使用対象区域である軟弱地盤地域における配水管延長約3,558kmのうち、耐震管延長は約719km(20.2%)となっており、今後とも計画的に配水管の耐震化を進めていきます。
【老朽管の更新】
本市では昭和45年より、管体強度が強く、内面がモルタルライニングのダクタイル鋳鉄管を使用しています。
それ以前に使用していた、普通鋳鉄管、無ライニングダクタイル鋳鉄管については老朽管と位置づけ、漏水や折損事故、水質障害の未然防止を図るため、昭和59年度から布設替を中心とした更新を推進し、その結果、水道事業ガイドラインにおける経年化管路率(H18)は0.3%と、他都市と比較しても非常に低い値となっています。
また、石綿セメント管は昭和62年度、塩化ビニル管は平成4年度にそれぞれ更新を完了しており、平成18年度末の配水管路のダクタイル化率は99.3%(口径75mm以上)に達しています。
【外面腐食管の更新】
腐食性土壌の影響による外面腐食管対策として、新設管にはポリエチレンスリーブの被覆による防食対策を実施しています。
未防食の既設管については、平成7年度に各管路について腐食度ランクを設定し、平成9年度より本格的に漏水の危険度の高い管路から布設替えしています。
■ブロック配水システムの整備
ブロック配水システムは、配水量の約76%を占める藻岩、平岸、清田、西部の4大配水池自然流下系を対象に、給水エリアを115ブロックに分割するもので、これにより、有収率の向上(流量・水圧の適正化)、事故に強い管網の形成(事故影響の拡散防止)、配水情報の把握による維持管理の効率化(流量・水圧・残塩等の効率的維持管理計画が可能)を図っています。