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▲幕別町道営住宅改善工事(あかしや南団地1・2号棟)北側立面図・西側立面図 |
幕別町道営住宅(あかしや南団地)の改善事業は、階段室型既存住棟の改善工事となり、既存住戸戸数を変えずに改修します。現行の道営住宅設計整備指針に近づけるべく、共用廊下・エレベーターなどを増築し、バリアフリー化を図る。こうした計画の骨子を踏まえた上で、設計に当たっては以下のことに留意した。
多世代入居者の出会いの空間をつくる この事業計画は、建設から約30年が経過する郊外型の既存団地で、入居する世帯構成は、長年住み続けている高齢者世帯から働き盛りの子育て世帯と幅広い構成となっている。そこで、世代や生活リズムの異なる入居者同士が自然に交流できるように、6棟で構成される団地を東西軸と南北軸の2つの交流軸でつなぎ、段階的に構成することで出会いの空間を確保した。
エレベーターを中心に2棟をつなぐ東西軸 先に述べた通り、2棟でエレベーター1基を共有することによって、従来は1棟だけで完結してしまうコミュニケーションを、2棟で構成している。
プロムナードを中心とした南北軸 敷地の中央には、南北に伸びるプロムナードを設けます。プロムナードは、敷地北側にあるバス停まで伸ばすことで、積極的に入居者が利用する主動線とする。また、プロムナード周辺には花壇や植栽を施し、幼児遊園や集会所とつなげることで利便性の良い賑わいを創出する。
ユニバーサルデザインの住環境 居間を中心に配置する平面とし、動きやすい廊下幅を確保し、段差を解消する。また洗面台・コンセントの高さなど最初からバリアを取り除いたシンプルさに配慮した。多様な住まい方に対応できる柔軟性に配慮し、主寝室と居間の間は3枚引戸、便所には取り外し可能な間仕切りの採用を検討する。また住戸内は手摺下地などで軽微な改造が可能とする。
安全で安心して暮らせる住宅整備 自然災害や火災に対する対応はもとより、住戸内事故の抑制など「安全」の確保は住宅として必要な基本的な品質であることから、高齢者や車椅子を利用する人などに対するより一層のバリアの排除のほか、子供や背の高い人、低い人、妊婦など多くの人にとってのバリアをあらかじめつくらない住宅整備を行う。 また、防犯への対応や見守りが必要な高齢者への緊急対応など、「安心」して暮らせる住宅としての配慮も工夫している。
整備コスト・維持管理コストの縮減 東西に並ぶ2棟の団地を、渡り廊下でつなぎエレベーターを共有することで、整備及び維持管理のコスト縮減を図る。エレベーター設置場所は2棟の団地の中間である1・3・5号棟西妻側付近とすることで、入居者の利便性に配慮している。
既存団地活用の基本的な考え方 既存団地における全面的改善工事を行う際に、検討すべき点として、今日的課題である耐震性能・バリアフリー対策・セキュリティ強化・省エネ対応・居住空間・屋外環境等が挙げられるので、これらの基本テーマを踏まえて団地内コミュニティ動線や現行法規への適合性、施工上の制約等を十分に把握し計画する。 また、住宅を取り巻く環境は、少子・高齢化による世帯構成の変化や需要の変動、高度情報化社会の到来、環境制約の増大等により大きく変化するので、既存ストックを有効活用するには、多様に変容しつづける住宅ニーズに対し、柔軟に対応できるよう既存団地の改善計画が必要で、それらを十分に考慮した設計となっている。
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