建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2008年6月号〉
寄稿
乏しい公共交通機関で高い道路依存率
――線形が悪く落石危険度の高い道路改良が急務
稚内土木現業所事業部長 丸山 晃司
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丸山 晃司 まるやま・こうじ |
昭和29年10月3日 札幌市出身 |
日本大学理工学部卒業 |
平成 4年4月 帯広土木現業所舗装係長 |
平成 6年4月 建設部まちづくり推進室主査 |
平成 9年6月 同部建設情報課主査 |
平成11年5月 同部企画調整課主査 |
平成13年4月 函館土木現業所事業第1課長 |
平成16年4月 建設部都市環境課主幹 |
(恵庭市建設部市街地整備室次長) |
平成18年4月 旭川土木現業所企画調整室長 |
平成20年4月 稚内土木現業所事業部長 |
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▲道道枝幸音威子府線改良概要図 |
稚内土木現業所の道路整備について
宗谷支庁稚内土木現業所管内は、北海道の最北に位置し、東部はオホーツク海、南部は上川・留萌及び網走支庁に接し、北部は宗谷海峡を経てサハリン(旧樺太)を望み、さらに日本海には利尻・礼文島があります。
総面積は4,050.76uで、全道総面積の約4.9%を占め、ほぼ長崎県の面積に匹敵しており、東西148.2km、南北100kmに及んでいます。
管内は1市7町1村からなり、人口は平成17年度国勢調査によると75,668人で、全道の約1.3%を占め、人口密度は約18.7人/km2で、全道平均の71.8人/km2よりかなり低くなっています。
管内の主要幹線道路としては、稚内市から旭川市に至る国道40号、オホーツク海沿岸を経て網走市に至る国道238号、稚内市から国道40号を重用し留萌市へ至る国道232号及び浜頓別町から上川管内音威子府村を経て札幌市に至る国道275号があり、これらの国道を補完する道道として、稚内幌延線と稚内天塩線、そして美深中頓別線があります。
また、国道や道道など主要路線を東西に結び地域間を繋ぐ豊富浜頓別線や豊富猿払線、そして、国道のない利尻・礼文島において幹線・生活道路の役割を担う利尻富士利尻線や礼文島線など51路線の道道が管内の交通を担っています。
管内における交通・輸送手段としては、自動車交通の他に、鉄道や飛行機を利用したものがありますが、鉄路に関しましては、昭和60年代の鉄道網の廃止により、管内には稚内から旭川・札幌に至るJR宗谷本線のみで、しかも特急列車が1日に3本しか運行されていないことから、大変不便なものとなっていることや、飛行機便についても、管内の空港は第2種空港の稚内空港、第3種空港の利尻空港及び礼文空港の3空港がありますが、稚内空港での通年運航は、東京・新千歳・丘珠の3路線で、夏期に東京便が2便/日となる以外は全て1日1便となっていることから、利用しにくい状況となっています。
このため、管内における人流、物流とも、自動車交通に大きく依存しているのが現状となっていますが、管内における高速交通は、高規格幹線道路として国道40号豊富バイパスの16kmが供用されているだけで、稚内〜名寄聞が結ばれる目処が立っていないのが実情であり、枝幸町、浜頓別町、中頓別町の南宗谷地域の方々にとりましては、日常生活や医療、特に緊急時の搬送先は名寄市や旭川市がその多くを占めるため、高速道路ネットワークの1日も早い整備が待たれています。
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▲道道枝幸音威子府線の斜面の状況 |
▲道道枝幸音威子府線の冬期交通状況 |
一方、道道におきましても、見通しの悪いカーブや急勾配箇所、落石や岩石崩落の危険性のある法面を多数抱えており、冬期間には大雪や地吹雪、雪崩、さらには台風時期における越波や冠水などにより、通行止めなどの交通障害も発生していることから、交通安全対策や防災対策が急務となっています。
このため、稚内土木現業所では道路防災総点検結果に基づく防災対策や、交通事故発生箇所における事故対策、冬期の交通障害防止のための道路改良や防雪対策などを中心に様々な事業を行っています。
その中でも、線形が悪く落石の危険性がある区間に新たなトンネル(名称:歌登トンネル)を造成することで危険箇所を回避する、「道道枝幸音威子府線道路改良工事」を重点的に取り組んでいます。
トンネル延長はL=526.5mで、平成19年2月にNATM工法により掘削を開始し、平成19年10月に無事貫通を迎えて、今後は平成20年12月のトンネル完成供用、平成21年度の事業完成を目指し、全力で事業を進めているところです。
枝幸音威子府線は道道歌登咲来停車場線及び国道40号を経由し、枝幸町から名寄市・旭川市への最短ルートとなっていることから、地域からの整備要望も強く、歌登トンネルの完成により時間短縮が図られ、緊急医療にも大きな効果が発揮されるものと期待されているほか、法面の防災対策も進ていますので、安全・安心な道路づくりにも大きく貢献できるものと考えています。
今後とも、厳しい財政状況の中、より一層「選択と集中」の観点に立ち、宗谷管内の安全と安心を確保し、地域の発展に役立つ道路整備を進めて参りたいと考えていますので、皆様のご理解とご協力をよろしくお願いします。
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