建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2008年7月号〉
寄稿
安全な暮らしと個性豊かで活力に満ちた地域社会を目指して
室蘭土木現業所事業部長 矢野 明夫
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矢野 明夫 やの・あきお |
昭和31年 4月9日 函館市出身 |
昭和55年 3月 北海道大学工学部卒 |
昭和57年12月 旭川土木現業所(事業課)採用 |
平成 5年 4月 札幌土木現業所 当別ダム建設事務所第一技術係長 |
平成 7年 6月 室蘭土木現業所事業部治水課河川係長 |
平成 9年 4月 総務部東京事務所主査(リバーフロント整備センター派遣) |
平成11年 4月 建設部総務課主査 |
平成11年 5月 建設部河川課治水係長 |
平成13年 4月 建設部河川課ダム室ダム計画係長 |
平成15年 6月 函館土木現業所治水課長 |
平成17年 4月 建設部河川課河川開発グループ主幹 |
平成19年 6月 室蘭土木現業所事業部長 |
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管内の概要
室蘭土木現業所は、北海道の中央南西部に位置する胆振(4市7町)・日高(7町)両支庁を所管区域とし、太平洋岸に沿った東西に細長い地形となっており、面積は約8,510km2で全道の約10%を占めています。また、人口は約51万人で全道の約9%を占めており、全道と比較しても人口減少及び高齢化が進行しています。
管内の気候は全般的に海洋性であり、積雪寒冷の厳しい本道にあっては、比較的温暖で暮らしやすい地域となっていますが、日高地方を中心に近年は台風等による災害が頻発し、また胆振地方では局部的な豪雪被害や雪崩が発生しています。
主な産業は胆振支庁管内と日高支庁管内でそれぞれ特色があり、胆振支庁管内では室蘭・苫小牧を中心とした工業や、野菜・苺・ほたて貝等の農水産業、登別・洞爺湖周辺における観光産業などが代表的です。一方、日高支庁管内では、国内生産頭数の約80%を占め全国一を誇る軽種馬産業や、こんぶ・さけ等の水産業が基幹産業です。
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▲上厚真苫小牧線 |
▲新冠平取線 |
管内の道路事情
管内の道路事情について、先ず幹線道路網の骨格を形成する高規格幹線道路は、胆振支庁管内を貫く道央自動車道が昭和53年に札幌から苫小牧東ICまで供用された後、室蘭ICまでは平成3年、管内西端の豊浦ICまでは平成9年に供用されるなど、比較的早い時期に整備されてきました。これに対し、日高支庁管内へアクセスする日高自動車道は、苫小牧東ICから日高町(旧門別町)の日高富川IC間は平成18年までに供用されているものの、供用率は3割程度とまだまだ低い整備水準にあり、静内・浦河方面への早急な整備が望まれています。
次に、一般国道等を補完し地域経済活動や日常生活に欠かせない道路として多様な役割を担う道道については、管内の改良率(胆振90.5%・日高85.9%)及び舗装率(胆振90.7%・日高84.8%)が共に全道平均(改良率93.5%・舗装率92.8%)より低い水準にあり、また、交通安全対策や渋滞対策の推進、観光地や交通拠点等へのアクセス向上など解消すべき地域課題が残されていることからも、その整備は未だ十分とは言えません。
特に、管内では毎年のように豪雨等による災害が発生し、また20年から30年という周期で噴火が起こると言われている有珠山と近年やや活発な状況がみられる樽前山の常時観測火山を二つ抱え、さらには苫小牧市からえりも町にかけての沿岸地域は日本海溝型地震防災対策推進地域に指定されているなど、地域の防災対策に関する要望は非常に強く、安全で信頼性のある道路ネットワークの形成は重要な課題となっています。
このほか、今後老朽化する道路橋が急速に増大し本格的な更新時期を迎えることから、管内の橋梁においても予防的な修繕及び計画的な架替えが必要不可欠となってます。
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▲登別温泉通(整備済区間) |
▲登別温泉通(整備中区間) |
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▲臨海北通 |
管内における道路整備
このような地域の課題に対応するため、平成20年度よりスタートする「新・北海道総合計画(ほっかいどう未来創造プラン)」で北海道がめざす姿を実現するためのビジョンと戦略を踏まえつつ、地域の個性を生かし可能性や潜在力を十分発揮できるよう、次の施策について重点的かつ効率的に進めていきます。
@交通拠点のアクセス強化
全国有数の貨物取扱量がある苫小牧港の東西両港区を結びアクセスの向上を図る上厚真苫小牧線(苫小牧市)の改築事業を推進し、自動車産業の集積が進む苫小牧東部工業地域周辺における企業立地を支援します。
また、苫小牧港周辺へアクセスする幹線道路は交通量が非常に多く、特に国道36号と234号を連絡する臨海北通(苫小牧市)はJR立体交差部が8車線から4車線へ減少するボトルネック区間となっており、当該区間の渋滞対策として拡幅事業を実施し円滑な交通を確保します。
A観光やまちづくりの支援
今年7月に開催される「北海道洞爺湖サミット」の開催地である洞爺湖周辺は、豊かな自然に恵まれ多くの人々が訪れる道内有数の観光地であり、質の高い観光地づくりを支援するため、洞爺公園洞爺線(洞爺湖町・壮瞥町)など周辺道路の整備をまちづくりと調和し自然環境に配慮しながら推進します。
また、観光入込客が年間350万人を超す全国有数の温泉地である登別温泉へのアクセス道路である登別温泉通(登別市)などの整備を促進し、観光客の受入環境の向上を目指します。
B災害に強い道づくり
管内では、平成12年の有珠山噴火をはじめ平成15年や平成18年の台風により甚大な被害を受け、道道等が寸断され大幅な迂回を余儀なくされるなど地域住民に重大な影響を及ぼしたことから、代替ルートの確保や信頼性の高い道路の整備が急務であり、国道235号を補完する新冠平取線(日高町)の改良事業のほか、緊急輸送道路の整備や落石危険箇所の対策などを推進し、安全で災害に強い道づくりを目指します。
C安全で円滑な道路空間の創出
交通安全対策については、これまで関係機関とともに重点的に取り組んできた結果、近年は全道的に交通事故死者数は減少傾向にありますが、未だ多くの尊い命が失われていることを重く受け止め、通学路を中心とした歩道の整備など交通安全対策を着実に実施します。
また、全道平均を上回る速度で少子・高齢化が進んでいる管内の状況を踏まえ、高齢者や障がい者を含むすべての人々が安全かつ円滑に歩行することができるように、中島中央通(室蘭市)の整備など主要施設周辺における歩道のバリアフリー化を推進します。
D既存ストックの有効活用
次の世代の人々に良好な社会資本を残すため、橋梁などの公共土木施設の適切な維持管理に努め、600基を超える管内の橋梁等についてアセットマネジメントシステムに基づく計画的な修繕・更新を進めます。
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▲中島中央通 |
おわりに
現在、政府・与党において道路特定財源の一般財源化について検討が進められるなど、道路整備を取り巻く環境は大変厳しい状況となっておりますが、限られた財源の中、持続可能で活力ある地域づくりを支援する道路整備に取り組んで参りたいと考えています。
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