寄稿
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【管内の概況】 渡島管内は、北海道の南西部、渡島半島の東側に位置しており、総面積は3,936?で全道の約4.7%を占め長崎県の広さに匹敵し、管内は2市9町からなっています。日本海に面する南西部の松前町から、南に津軽海峡、東に太平洋を巡り噴火湾に面する北端の長万部町まで約400kmの非常に長い海岸線を有するのも特徴です。また、中央部には、常時観測火山駒ヶ岳があり、山麓の大沼・小沼・蓴菜沼の3湖沼を含む一帯は大沼国定公園に指定されています。このほか、「松前・矢越」、「恵山」の2つの道立自然公園があり風光明媚な自然環境を形成しています。管内人口は約50万人(H17国勢調査)で14支庁の中では、石狩支庁、上川支庁に次いで人口が多く、全道の約9%を占めていますが、昭和55年をピークに減少を続けています。 気候は道内でも全般的に寒暖の差がなく比較的温暖で、平均気温は8〜9℃となっています。農耕に適した期間が長い地域ですが、夏の最高気温がやや低いため気温較差が少なく、夏の降水量は多くなっています。
【渡島の農業】 管内の農業は、北海道農業発祥の地として、古くから営まれている水田を活かし、稲作や大豆などのほか、温暖な気候を活かした園芸作物生産が盛んで、トマトや長ねぎ、にらなどをはじめとする野菜や花きの栽培が行われています。なかでも、カーネーションは、全道で有数の生産量を誇っています。 また、馬鈴しょ、てんさいといった畑作物やりんごやプルーンなどの果樹も生産されており、畜産部門においても、渡島北部における酪農や駒ヶ岳山麓の養豚、肉用牛、養鶏など、畜産においても地域の特色を生かした多様な農業生産は「農業の宝石箱」として表現されています。また、農業生産額は、337億円で全道の約3%となっています。しかしながら、農家戸数は年々減少しており、高齢者率が高く、後継者の不足が懸念されます。このため、農業の担い手の育成・確保を進めるほか、たくましい農業経営の確立に取り組んでいます。
▲八雲町営育成牧場から市街地を望む風景 |
【渡島の農業農村整備事業】 渡島支庁管内は道内の中でも温暖な気候に恵まれ、集約的で多種多様な農業を展開しており、「函館育ち」など地域ブランドの確立・強化を図り高収益な農業生産を促進し、認定農業者等の育成・強化などの担い手対策を推進しています。 渡島支庁の平成20年度農業農村整備事業は、道営事業が20地区17.6億円、団体営事業が6地区0.5億円の合計26地区18.1億円を予算計上し執行しています。 平成19年度に全道デビューし、ブランドを確立している道南農業試験場が育種した良食味米の「ふっくりんこ」や極大粒大豆として新たなブランド化が期待される「タマフクラ」などの農産物の安定生産や消費者から信頼される品質の確保が求められています。 このため、担い手への農地集積を促したり、冷害対策が容易に出来る区画整理を実施する経営体育成基盤整備事業、地域水田農業支援緊急整備事業5地区、自給飼料の確保や畜産経営の安定を図る草地整備事業、畑地帯総合整備事業(営農用水)5地区、農産物等の流通の効率化や荷痛み防止等による品質向上を図るため、農道整備事業4地区で農業生産基盤の整備を行っています。また、防災ダム2地区、海岸保全9地区、地すべり防止1地区の保全管理も行っています。 水田、草地整備では、受益農家から農地情報を集収し、農家意向に十分配慮して「弾力的な整備」により、個々の営農条件に応じた整備を実施しています。水田の暗渠排水では暗渠排水管を洗浄するための施設(※注 集中管理孔)を設置し、施設の長寿命化を図りライフサイクル・コストの縮減や様々な作物生産に対応できるよう整備を進めています。 そのほか、農業農村への理解促進に向けた広報活動として、渡島支庁では水土里の路ウォーキング〜「ふっくりんこ」の里を訪ねて〜の開催や紙芝居「ふっくりんこ」の無料貸出を実施しており、「ふっくりんこ」を始めとする地元農産物への消費拡大・食育のPRも行っています。 (※注 集中管理孔:用水路と暗渠配水管を接合して用水を暗渠配水管に通水できるようにした施設で、暗渠排水管の洗浄を主目的としているが、地下かんがい機能を利用した水稲直播の浅水管理や畑作物への利用も期待されている。)