寄稿
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宗谷のすがた 宗谷管内は、北海道の最北に位置し、東・西・北部の三方を海で囲まれており、総面積は、4,050.76kuで全道の約4.9%を占め、東西148.2q、南北100qに及んでいます。 管内は、国立公園やラムサール条約登録湿地などを有する雄大な自然に恵まれた地域で、サロベツ原野をはじめとする多くの原生花園や宗谷丘陵、利尻・礼文島など風光明媚な地を有しており、春から夏にかけて多くの観光客でにぎわいを見せます。 日本海及び宗谷海峡沿岸部の気候は、暖流である対馬海流の影響を受け、最北端でありながら比較的温暖です。ただし、夏でも最高気温は低く、25℃を超える日はほとんどありません。また、オホーツク海沿岸部は冷涼な気候で、夏季には海霧が発生することが多く、冬季には流氷が接岸します。これら沿岸部は年間を通じて風が強く、冬は猛吹雪に見舞われることもあります。一方、内陸部は夏季の気温が30℃前後まで上昇したり冬季の最低気温が氷点下30℃以下になることもあるなど、寒暖の差が激しい気象条件にあります。 管内は、このような自然環境を背景に、我が国有数の酪農地帯として、また、豊かな水産資源に恵まれた水産基地として発展してきました。
宗谷の農業 管内の農業は、昭和30年代の冷害等を転機として、それまでの畑作中心から酪農中心へと地域の気候風土に合った形態に転換を図り、今日では管内農業産出額の99%を生乳を主とした畜産部門が占めています。 乳牛飼養頭数は約6万1千頭、生乳生産量は約27万トンで、ともに全道の約7%を占めており、1戸当たりの広大な耕地面積を背景とした大規模な草地型酪農(戸当たり耕地面積77ha、戸当たり乳牛飼養頭数92頭)が展開される道内有数の酪農地帯となっています。生産された生乳は、稚内市、浜頓別町、豊富町などの工場に輸送され、バター、脱脂粉乳等の加工品や飲用乳として全国に出荷されています。 農業の国際化が進む中で、管内の酪農経営も一層のコスト低減や、良質乳生産の拡大が求められています。このため、草地整備改良の推進や集約放牧の導入など自給飼料の有効活用を進めるとともに、家畜ふん尿の適正処理と有効活用による環境調和型農業の推進に努めています。 また、ゆとりある酪農経営の実現を目指し、農作業を代行する酪農ヘルパー利用組合や、農作業を支援するコントラクター(農作業受託組織)などの経営支援組織の育成についても積極的に推進しています。こうした中、更なる経営効率の改善のため、各農家が個別に行っていた牧草の肥培管理や収穫貯蔵、更にはTMR(完全混合飼料)調製や個別配送に至るまで作業を一元的に行ない、飼料づくり一切を代行するTMRセンターの設立が進んでいます。
宗谷の農業農村整備事業 宗谷管内の農業農村整備事業の平成20年度実施予定は、道営18地区、団体営3地区の合計21地区で、道営事業の事業費は約18億円となっています。 主な事業は酪農主体という地域事情を反映したものとなっており、自給飼料の安定的確保と品質向上に向け、草地の不陸(でこぼこ)修正や傾斜の緩和、排水の改良などを行う草地整備事業や、幹線道路から牛舎のバルククーラーまでの農道を整備して集乳輸送の省力化をはかる一般農道整備事業(集乳農道)を行っています。 また、生態系及び水産資源の保護を目的に、過去に設置された農業用排水路の落差工に魚道を設置する地域用水環境整備事業(単独魚道整備)も実施しています。 宗谷管内は水産業も盛んで、ホタテもその代表的な水産物ですが、その貝殻の処理が大変でした。そこで、事業の実施に際しては、農道の凍上抑制材としてホタテ貝殻を利用し、また、草地整備事業においても暗渠排水の疎水材や水質汚濁防止施設のろ過材として、従来の笹や砂利に代わり貝殻を用いることで、工事の低コスト化と地域の水産副資材の有効活用に寄与しています。
酪農をめぐる情勢は配合飼料価格の高騰など厳しいものがありますが、酪農は宗谷の基幹産業であり、その振興を図っていくために農業農村整備事業の果たす役割も大きいものがあります。このため、これからも地域の声に耳を傾け、食の安全・安心に対する消費者の期待にも応えられるよう、必要な事業を効率的・効果的に展開していきたいと考えています。