建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2009年5月号〉
寄稿
広郷浄水場緊急整備事業について
――全国でも第4位の広大な面積を持つ北見市の水道
北見市企業局 次長 佐藤 隆
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佐藤 隆 さとう・たかし |
昭和32年7月19日北見市出身 |
昭和59年3月 北見市役所奉職 |
平成14年4月 下水道課係長 |
平成18年5月 下水道課長 |
平成20年4月 水道課長 |
平成21年4月 企業局次長 現職 |
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▲図1-施設平面図 写真1-施工状況H20年6月撮影 |
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▲クリックすると拡大したものが開きます。 |
1.はじめに
北見市は、平成18年3月に、北見市・端野町・常呂町・留辺蘂町の1市3町が合併し、北海道では第1位、全国でも第4位の広大な面積を持つ人口約13万人のオホーツク圏の中核的な役割を果たす都市となっている。
この中で、北見自治区(旧北見市)の上水道事業は、昭和27年に給水を開始して以来、4次にわたる拡張事業を重ね計画給水人口134,240人、計画1日最大給水量64,400m3として現在に至っている。
水道水源は、流路延長約120kmの一級河川常呂川の表流水を取水しているが、自然由来のフミン質を多く含むことから、平成10年粒状活性炭による高度浄水処理を開始した。
また、常呂川は多くの支川が流れ込んで、降雨時には濁度・色度等の変動が大きく水質が不安定な河川であることから、平成19年6月から数度にわたり浄水処理が不可能な高濁水が発生し、取水停止と大規模断水により市民の日常生活や産業・経済など各方面に大きな影響を与え、早急な対策が求められた。
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▲写真2-施工状況H20年10月撮影 |
▲写真3-仮滞水池 |
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▲図2-新設濁度計 |
2.事業概要
水質が不安定な原水に対し、平常時の浄水処理効率を高めることはもとより、高濁度水が発生した場合においても、浄水処理が継続できるよう原水を確保する滞水池の新設、並びに、給水量を確保するための配水池の増設を行う緊急整備事業を平成20年度国庫補助事業として採択を受け、平成20年5月より着手し、平成21年6月供用開始を目指しており、原水の取水停止時においても、約25時間の給水が可能となる施設整備を進めている。
全体事業費は約30億円、滞水池は28,000m3(ドーム型PC造、内径44.0m×有効水深9.6m、有効容量14,000m3×2池)の施設で、浄水処理施設の前段に建設され、平常時は取水した河川表流水が滞水池を経由して、自然流下により浄水場内のpH調整池に流入させることにより水質変動を軽減化している。
また、河川に高濁度等が発生し、取水を停止した場合には、導水ポンプで滞水池内の水をpH調整池に送ることにより安定した浄水処理が継続されることから、水道原水水質改善施設と同等の機能を有するものと考えている。
また、配水池についても、計画1日最大給水量の12時間を確保するため、不足分として、5,870m3(RC造 内寸法横27.70m×長さ33.50m×有効水深3.5m,有効水量=2,935m3×2池)の配水池を増設している。
また、上記滞水池・配水池の付帯設備として連絡配管工事及び導水ポンプ室建築・電気・機械工事も同時に進めている。
今回の事業は、緊急を要することから、ほとんどの工事は平成20年度中に完了させ、平成21年に運転操作訓練し、6月の供用開始を目指している。
また、平成21年度は、滞水池に溜まった泥などを仮置きし、泥に含まれている水分を乾燥させ、容量を減らすことにより、最終処分に要する費用を軽減させるための施設である滞泥池を2池築造し、また、施設内の雨水流出抑制のため、一時的に雨水を貯めて、除々に排水路に流す雨水調整池を築造し、外構工事も含めて整備する予定である。
現在の緊急対応として、既存の天日乾燥ろ床を(2池、11,000m3)転用し、仮滞水池とし、取水停止なっても市内の配水池と合わせて約12時間給水可能な対応を取っている。
また、常呂川の濁りが200度に達した段階で、濁度計(図2)がそれを検知し、自動的に浄水場と沈砂池の流入バルブを閉めて濁り水の流入を遮断する施設も平成20年8月から稼働し、降雨時は河川パトロールも併せて行い、濁り水の流入防止に努めている。
なお、平成20年度については、取水停止18回を数えたが、市民生活に影響なく浄水処理をし、安全で安心な水道水を供給している。
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▲写真4-施工状況(H21年1月撮影)工事進捗率65% |
次に、完成後の滞水池の使用方法について説明する。
平常時の使用方法については、図3の左側の取水口@より取水し、導水管により浄水場まで送られた水を、浄水施設の手前で滞水池に流入させ、そこから自然流下により浄水施設に流入させるものである。
次に、非常時の使用方法については、高濁度が発生した場合、図4左側の取水施設入り口、@取水口×印のところで取水を停止し、同時に滞水池の流入弁を閉止するものである。
閉止後、導水ポンプにより浄水施設に原水を送ることにより、取水停止後も継続的に浄水作業が可能となるものである。
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▲▲図3-計画処理フロー図(平常時) |
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▲図4-計画処理フロー図(非常時) |
3.おわりに
配水池は、既設配水池の高さや配管の関係で地下構造物になることから、土圧や凍結を考慮し、RC構造となった。また、滞水池は、PC構造物とし、壁厚がRC構造より薄く使用材料も少なくいことから、施工日数を短縮でき、ひび割れの発生が少ないので漏水が少ない特徴があり、大型PCタンクとしては、初めての試みである。
最後に、今回の緊急整備事業については、国及び北海道のご指導や多くのコンサルタント・市内施工業者・関連資材業者など多くの方々のご協力をいただいており、平成21年度6月より供用開始出来るよう進め、市民の皆様に安全で安心な水道水の供給を目指して事業を進めている。
北見市企業局広郷浄水場緊急整備事業に貢献します
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