建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2014年1月号〉

インタビュー 釧路市公営企業管理者 鈴木信

釧路市の上下水道部は道東の拠点機能も担っています

─― この10月に公営企業管理者として就任しましたが、どんな抱負を以て臨んでいますか
鈴木 水道、下水道事業と音別の工業用水道事業を所管しています。平成17年10月11日に釧路市、阿寒町、音別町の3市町が合併し、行政面積が1,362平方キロメートルと全国でも有数の広さの新しい釧路市がスタートしました。平成23年度の給水人口は18万6千人で、年間総配水量は約2,336万トンの事業規模になっています。
 しかし、人口が減少していく中で、給水収益や下水道使用料の減収は避けられません。上下水道とも整備は完了しており、これ以上に拡張による収入増をはかれる状況ではありませんので、かなりの収入減が予想されます。その一方で、老朽化した施設が一斉に更新時期を迎えていきます。
 そうした経営環境の中で、上下水道事業を将来も持続できるようにしなければならず、大変難しい時期に重い役割を担うことになったと思います。
 今後とも市長部局とも緊密な連携が必要になりますが、私は技術職ではなく、企画畑を長く務め、広く浅く様々な行政分野に関わり、多くの人や部署の協力を得る業務に携わってきたので、培われた人脈や調整力を生かしていかなければならないと考えています。
─― どんな対策を検討していますか
鈴木 特に水道事業は、100年体系の超長期的視野に立った運営が必要だと考えています。そこで、まずは平成24年度から33年度を計画年限とする「水道ビジョン」を着実に推進します。その中で愛国浄水場を第一期(平成23年度〜28年度)、二期工事(平成29年度〜32年度)に分けて、第一期は配水施設の建設、第二期は浄水場建設を行い、平成33年の供用開始を予定しています。
 阿寒湖畔浄水場は平成23年度には工事に向けた施設設計を行い、24年度から5ヶ年計画で更新工事を進めています。
─― 下水処理は、ほとんどが古川処理場で担当しているのですか
鈴木 現在6つの処理区にわけ、各下水終末処理場で大量の下水を処理していますが、下水道も老朽化が進んでいるので、少しずつですが施設の延命化を進めています。下水道事業会計においては、一般会計の補助を受けながら不良債務解消に取り組んでいます。下水道ビジョンの期間内で完了させる計画ですが、進捗状況としては、計画を上回るペースで順調に進んでいます。下水道施設の本格的な老朽化対策はそれ以降になるでしょう。まずは、会計の健全化が先決問題なのです。
愛国浄水場中央管理室
─― スタッフの仕事ぶりは、どんな様子ですか
鈴木 技術者の世界で、事務職の私が管理者に就任しましたが、各現場を見て回ると、さすがに技術職の職員はみなプロフェッショナルな仕事ぶりで感心させられます。
 4月に上下水道部長に就任してからは、なぜか自然災害が多発していますが、そうした時の対応ぶりを見ると、さすがプロだと感じます。
─― 平成5年の釧路沖地震や平成6年の東方沖地震を経験したベテランも多いでしょう
鈴木 そのとおりですが、職員の高齢化が進んでおり、50代の比率が非常に高く、数年後には定年で退職するので技術の継承をどうするかが、かなり深刻な課題です。したがって、人材の育成も重要な仕事です。
 特に水道土木というのは、一般土木と一括りにはできない専門性があるので、大切なライフラインを将来に持続させるため、技術の継承が重要だと考えています。
 しかしながら、それをこの行政組織の中だけで解決できるかどうかは疑問です。行革がここまで進められ、限られた職員定数で各年齢層を万遍なく配置することは困難です。したがって、技術の継承は行政組織の中だけでなく、公民連携の中で実現していくことが必要だと思います。
─― ライフラインは安全・安心が第一ですね
鈴木 今や上下水道はあって当たり前という時代で、蛇口から出る水はどこから流れてきて、流し台やトイレから排出される水はどこへ流れていくのかを考えながら暮らす市民はほとんどいないと思います。
 しかし、こうしたライフラインが抱える問題については、もう一度、市民とともに考え直す必要があると思います。市民と共通認識を共有してこそ、今後の方向性についてコンセンサスができるものと思います。
─― 釧路は地震が多い地域ですが、緊急時の体制は万全ですか
鈴木 この管内は震度6クラスの地震が立て続けに起こり、上下水道もかなりの被害を受けましたが、現職の技術者はその経験があるので、有事の際には迅速で的確な対応ができます。
 釧路市は日本水道協会の道東地区協議会区長という立場にあり、下水道も下水道協会北海道支部の道東地区支部長なので、他都市で災害が発生した場合には応援拠点となります。平成25年は釧路管内の町の取水ポンプ場が冠水し、三日間の断水状態となりましたが、その時の応急給水の初動対応もここからスタートしました。北網地区で大型断水が起きた時も、管工事組合の協力をいただき、ここから応援に向かったのです。このように、市内でも被害が発生している状況にありながらも、他都市への応援に当たる立場にあり、拠点都市としての役割を持っています。
 釧路市公営企業管理者
 鈴木 信
 すずき・まこと
  
 昭和54年 3月 北海道大学経済部経済学科 卒業
 昭和55年 6月 釧路市 奉職/釧路市議会議事課
 平成 5年 4月 ラムサール会議準備室 専門員
 平成 9年 4月 審議室国際交流課 課長補佐
 平成10年 4月 経済水産部商工労働課 課長補佐
 平成12年 4月 経済水産部商工労働課長
 平成14年 4月 企画財政部企画課長
 平成16年 4月 企画財政部次長
 平成18年 4月 福祉部次長
 平成21年 4月 福祉部部長
 平成22年 4月 財政健全化推進参事
 平成23年 4月 総合政策部長
 平成25年 4月 上下水道部長
 平成25年 10月 公営企業管理者
─― 総合政策部長を経験されているので、今後、柔軟なアイデアが期待されるのでは
鈴木 しかし、水道下水道は失敗は許されないので、成否はともかくアイデアでチャレンジを、というわけにはいきません。老朽施設は一気に更新時期を迎えますが、一気には更新できないので、超長期的な視野に立って延命化を図りながら、平準化して将来につなげることが大切です。  また、将来世代との負担の公平化も重要です。100%企業債に依存して負担を先送りするわけにはいきません。そのため収支見通しの立て方をどうするか、出資債の制度など、企業会計、一般会計の双方で合理的な説明の成り立つ制度活用を検討したいと思っています。

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