建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年12月号〉

特集・日本道路公団北海道支社

道東自動車道 夕張〜十勝清水間の本線工事に着手

JH帯広工事事務所所管・占冠IC〜十勝清水IC間事業概要

北海道横断自動車道・黒松内釧路線は寿都郡黒松内町を起点に、小樽市、札幌市、千歳市、夕張市、帯広市、釧路市を経由して根室市に至る延長約538kmの路線である。
このうち今年全線着工の運びとなったのは、道東自動車道 夕張〜十勝清水間の延長約81kmである。この路線は既に道東自動車道として開通している千歳恵庭jct〜夕張IC間と十勝清水IC〜本別IC・足寄IC間を繋ぐ区間であり、地域住民のみならず、道民からも永く建設が望まれてきた。
日本道路公団北海道支社では、夕張IC〜占冠IC間(詳細には占冠ICから東へ約2.5kmまで)を千歳工事事務所、占冠IC〜十勝清水ICを帯広工事事務所の担当区間として鋭意建設を進めている。
道東自動車道 夕張〜十勝清水間の整備効果
北海道の物流は大消費地と道外輸送のターミナルを擁する道央圏への輸送が中心である。しかし道央圏と道東地域との間には東西を隔てる山脈が連なっており、峠部を経由せざるを得ない状況だ。特に国道274号日勝峠は急峻な地形と過酷な気象条件によって、道内最大の難所となっている。
道東道は従来路線よりも最高標高を約400m下げ、道路線形・勾配も大幅に改善することで峠区間の延長を約30km短縮している。これにより交通障害が発生するリスクを大幅に軽減するとともに、災害時の代替路としても大きな役割を果たす。
これにより、道央圏及び空港・港湾などの物流拠点施設への時間短縮・定時制などの物流の安定化と、道東地域の観光拠点間の定時制が確保。物流・観光産業の活性化、ひいては北海道全体の発展に大きく貢献する。
帯広工事事務所所管・占冠IC〜十勝清水IC間路線概要
帯広工事事務所の所管する占冠IC〜十勝清水IC間は、占冠村を起点に、南富良野町、新得町を経由し、清水町に至る延長約44kmの路線である。
路線は急峻な日高山脈の西側を南北に通る国道237号線に接続する占冠ICから市街地を避け、占川大橋、東占冠第一橋、第二橋、第三橋、第四橋で鵡川と交差・並行して北東に向かい、橋梁を挟みながら東占冠トンネル(約2,500m)、滝の沢トンネル(約1,000m)、ホロカトマムトンネル(約2,000m)、下トマム(約800m)のトンネル連続区間を通過する。
その後は道道の付替を行いながらjr石勝線の橋梁をアンダーパスしたあと、トマムリゾートの向かい側の山すそを切盛りしながら主要道道夕張新得線に接続するトマムICに至る。
この占冠IC〜トマムIC間(延長約26km)については地元の了解が得られたところから用地取得を実施しており、9月1日現在の用地取得率は約60%、工事発注率は約10%である。昨年9月に準備工事としてトマム地区付替道路工事に着手したのを手始めに、今年7月には本格的な本線工事となる東占冠トンネル工事を発注し、今冬期からトンネル掘削を開始する予定であり、今後も順次本線工事を発注していく予定である。
トマムICからは国道274号・日勝峠と国道38号・狩勝峠のほぼ中間点にあたる日高山脈北側部(標高600m〜250m)を通過する。山岳中腹部を第一狩勝トンネル(約2,400m)、第二狩勝トンネル(約2,600m)、広内トンネル(約1,000m)などの長大トンネルや、広内第一橋、広内第二橋、北清水橋などの橋梁で通過し、十勝平野部の既供用区間である十勝清水ICに至る。
▲広内第二橋
このトマムIC〜十勝清水IC間については、夕張IC〜トマムIC間よりも施行命令が一年先行したこともあり、用地取得率は約90%、工事発注率は100%で、全延長にわたって工事が発注され、全面展開している。平成14年3月に着手した広内トンネルについては既に本体工事は完成し、今後の土運搬ルートとして活用する計画であり、また残る2本のトンネル工事・土工工事・橋梁工事についても順調に工事が進んでいる。
路線の道路構造は1種2級b規格、設計速度100km/hの暫定2車線(用地4車線、工事2車線)である。占冠IC〜トマムIC間(約26km)では、構造物比率が約30%であり、内訳は土工約18km、トンネル約6km、橋梁約2km、となっている。トマムIC〜十勝清水IC間については構造物比率約33%、内訳は土工約14km、トンネル約6km、橋梁約1kmとなっている。
コスト削減への取り組み
トマムIC〜十勝清水IC間には、広内第一橋、広内第二橋、北清水橋などの橋梁を建設しているが、広内第二橋では新技術・新工法である波形鋼板ウェブpc箱桁橋を採用している。
これはプレストレスコンクリート(PC)橋のウェブ(側壁部)を波形形状に加工した鋼板に置き換えたもので、上部構造の自重が大幅に軽減されるとともに、下部構造(橋脚・基礎)への負担が軽減され、橋梁工事費のコスト削減が可能となる。なお、広内第二橋では約18億円の総工費のうち、約4,000万円のコスト縮減に成功している。
▲広内第一橋付近から札幌方向を望む ▲東占冠トンネル東坑口
自然環境に配慮
同路線の周辺には自然環境豊かな森林地帯や河川流域が分布している。そのため、貴重・希少な動植物をはじめ、多くの野生動物の生息域となっている。工事にあたっては、自然環境の復元や共生に努める一方で、工事中の濁水処理や防塵対策に万全を期し、十分な環境保全対策を行っている。

周辺市町村の高速道路にかける期待

地域間の交流と連携に大きな期待

夕張市長 後藤 健二
 道東自動車道「夕張〜十勝清水間」の全線着工を迎えましたことは関係市町村の深い喜びとするところで、誠に感謝に堪えない次第であります。
 この道東自動車道「夕張〜十勝清水間」の工事が一日も早く完成することにより、さらに日高・十勝を結ぶ北海道の幹線として、地域経済の活性化、高度医療、観光産業的にも発展するものと大きな期待を寄せているものであります。
 昨年の国土開発幹線自動車建設会議において、北海道の高速道路整備の中でも、特に「夕張〜十勝清水間」は全国的にも高いランク付けをされました。このことは高速交通ネットワークの効果が最も大きなウエートを占める地域であるとの認識をいただいた結果であります。
 近い将来「夕張〜十勝清水間」の都市が、よりスムーズに結ばれることによって、人、物、文化をつなぎ、地域間交流がさらに深まり、地域開発の基盤となります高速道路の整備は、必要不可欠なものと位置付けられているものであります,
 しかしながら、北海道の高規格幹線道路の整備は、全国と比較していまだ十分とはいえない状況にあります。
 広大な面積と豊かな資源を有する北海道は、道央、道南、道北、道東の四圏域からなり、自動車交通への依存度が高いこれらの圏域ネットワーク化が最大の課題であります,
 四圏域間の時間距離の短縮、物流の円滑化など、地域間の交流と連携を促進するためには、観光開発・産業整備の発展を担う高速道路を中心としたネットワークが重要で、一日も早い完成を切望いたします。

道東自動車道は道産物流の大動脈

日高町長 西尾 正
 
 「地方の時代」と言われて久しい訳ですが、分権法の制定や三位一体改革、あるいは道州制などの論議が高まりを見せ、現実的になって参りました。
 同時に求められていることとして、地域の自主自立・個性化などの言葉で表現されています。
 これらを念頭に置くとき、第一に交通ネットワークの整備が何よりも急がれると言うことであります。
 北海道経済にとって、道東自動車道は1次産業物流の大動脈であり、大きな期待が寄せられるのも当然であります。
 わが町では以前から交流人口の拡大に向けて各種対策に取り組んできましたが、現在この自動車道を意識しながら、「セカンドハウス村計画」や「北日高山系登山」など新たな取り組みも進めています。
 1日も早い全線開通を願っています。
 また、併行する国道274号日勝道路の安全対策工事についても順調な進捗を願っております。

北海道横断自動車道にかける期待

夕張〜十勝清水間の早期整備を

清水町長  高薄 渡
 北海道横断自動車道の整備につきましては、昭和41年7月に国土開発幹線自動車道に位置づけられましたが、現在でも北海道の高速ネットワークが完成していない状況であり、整備済みの地域との受益格差は拡大する一方であります。
 北海道の物流、文化の中心地道央圏の移動につきましては、冬季間の自然条件が特に厳しい国道274号日勝峠、国道38号狩勝峠を通行しなくては道央圏には行けない状況であり、道東で生活している人々は、高次医療施設への搬送時間の短縮や農畜産物の安全輸送、分岐観光の振興、災害時の危機管理対応のために早期の高速自動車交通網整備に大きな期待をしている次第です。
 本町におきましては、道央圏よりの十勝、道東の玄関口の町とし国道通過車両も年々増加しています、夕張〜十勝清水間の整備が実現しますと、本町はもとより十勝、道東の観光、物流において、高速自動車道路の更なる利用拡大が実現すると確信しています。
 つきましては、高速交通ネットワークの構築のため、着工している区間については早期完成が図られことを期待するものです。
道東自動車道 占冠IC〜十勝清水IC間の整備に貢献する精鋭企業群
HOME