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「ワシントンの大酋長へ。そして、未来に生きる、すべての兄弟たちへ。 どうしたら、空を買えるというのだろう?そして大地を。 私には、わからない。風の匂いや、水のきらめきを。 あなたは一体、どうやって買おうというのだろう? あらゆるものが、つながっている。 私たちが、この命の織物を織ったのではない。 私たちは、その中の一本の糸にすぎないのだ。 すべて、この地上にあるものは、私たちにとって、神聖なもの。 松の葉の一本一本、岸辺の砂の一粒一粒、深い森を満たす霧や 草原になびく草の葉、葉かげで羽音を立てる虫の一匹一匹に至るまで、 すべては、私たちの遠い記憶のなかで、神聖に輝くもの。 私の体に、血が巡るように、木々の中を樹液が流れている。 私はこの大地の一部であり、大地は私自身なのだ。 川を流れる、まぶしい水ではない。 それは、祖父のそのまた祖父たちの血。 小川のせせらぎは、祖母のそのまた祖母たちの声。 湖の水面にゆれるほのかな影は、私たちの遠い思いを語る 川は、私たちの兄弟。 渇きを癒し、カヌーを運び、子供たちに、惜しげもなく食べ物を与える。 だから白い人よ。 どうか、あなたの兄弟にするように、川に優しくしてほしい。 生れたばかりの赤ん坊が、母親の胸の鼓動を慕うように、私たちはこの大地を慕っている。 もし、私たちがどうしても、ここを立ち去らなければならないのだとしたら、 どうか、白い人よ。 私たちが大切にしたように、この大地を大切にしてほしい。 美しい大地の思い出を、受け取ったときのままの姿で、心に刻みつけておいてほしい。 そして、あなたの子供の、そのまた子供たちのために、 この大地を守りつづけ、私たちが愛したように、愛してほしい。 いつまでも、どうかいつまでも」 |