建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年7月号〉

特集 未来を拓く・わが国の新幹線整備

東北の明日を拓く・東北新幹線八戸〜新青森間

区間の60%がトンネル構造−最新の土木技術を駆使し、建設が進む

鉄道建設・運輸施設整備支援機構 東北新幹線建設局

東北新幹線は東京〜青森間の延長675kmの路線である。
平成14年12月には北東北の拠点都市・盛岡と八戸市を結ぶ延長96.6km区間が開業。現在はさらに北へ延伸する八戸〜新青森間の建設工事が進められている。東北新幹線は北東北の魅力を再発見する起爆剤となり、その効果はさらに北へと広がりはじめている。東北の未来を拓く、東北新幹線について特集する。
鉄道・運輸機構鉄道建設本部 東北新幹線建設局の概要
鉄道・運輸機構鉄道建設本部東北新幹線建設局がこれまでに開業した線区は、東北新幹線(盛岡〜八戸間)、jr田沢湖線、岩泉線、気仙沼線、津軽海峡線、第3セクターの三陸鉄道線、秋田内陸縦貫鉄道線、阿武隈急行線、及び仙台市営地下鉄南北線であり、いずれも東北地方の方々の貴重な交通手段としてまた地域経済の発展、文化の交流などに大きく貢献している。
東北新幹線(盛岡〜八戸間)は、平成15年2月の青森冬季アジア競技大会の交通手段として大きな役割を果たした。開業後2年以上経過した現在でも利用者数は開業前の50%増を維持しており、八戸〜青森間に対しても早期開業が期待されている。
東北新幹線八戸〜青森間の路線概要と工事進捗状況
<事業の経緯>
東北新幹線盛岡〜新青森間の整備は、全国新幹線鉄道整備法に基づき、昭和47年6月に基本計画が決定され、昭和48年11月に整備計画が決定。その後の工事実施計画については段階的に許可を受け、工事が進められてきた。
現在建設が進められている八戸〜新青森間については平成3年8月に実施計画が認可され、平成13年4月に概ね12年後の完成を目指す変更認可がなされた。
本線用地取得状況は、全線における取得率は約91%で、平成17年度内に残された用地の取得を目指す。
事業費は、平成16年度で484億円、平成17年度は499億円が認可されている。
▲新青森駅付近上空
<八戸〜新青森間路線概要>
同区間は既に開業した盛岡〜八戸間をさらに青森まで延伸する約82kmの路線であり、構造は切取・盛土約10.5km(13%)、橋梁約2.9km(4%)、高架橋約17.9km(22%)、トンネル約49.9km(61%)である。
通過する沿線市町村は、八戸市、五戸町、下田町、六戸町、東北町、十和田市、七戸町、青森市の3市5町。設置予定駅は、開業済の八戸駅の他に七戸駅(仮称)、新青森駅が予定され、さらに新青森駅の北側に車両基地が設置される。新青森駅はjr奥羽線現駅併設となる。
道路・河川・鉄道との交差については、県道以上の交差箇所が20箇所、1級河川交差箇所が3箇所、2級河川交差箇所9箇所の設置を予定。在来線との交差箇所は2箇所で、六戸町で十和田観光電鉄と交差し、新青森駅ではjr東日本奥羽本線と交差する。
八戸・新青森間で最初に完成した船岡高架橋(l=316m)では、平成13年冬期から4シーズンに渡り散水消雪試験を行い、効率的で経済的な消雪方式を検討している。
▲尻内高架橋
<工事概況>
工事は、八戸駅北部に位置する八戸電留線後端を工事始点とし、八戸駅付近では東北本線と並行したルートであり、平野部の田園地帯を通過する。地質は沖積層が厚く分布する軟弱地盤であるため、当区間に施工する盛土の盛上部はプレローディングによる圧密促進工法を採用。高架橋部については、φ1,500mm長さ40mの場所打ち杭(オールケーシングエ法)基礎を有するラーメン構造とした。
尻内高架橋は平成13年4月に着工し、現在は完了している。
ルートは、野辺地層(鮮新世〜更新世)を基盤とした新第三紀〜第四紀の広大な火山灰等からなる堆積台地を中小のトンネル群で抜ける。
八戸・新青森間の最初のトンネルとなる延長267mの南部山トンネルは土被りが浅く上部には南部山アイスアリーナがある。トンネルは既に完成している。
南部山トンネルと次の高館トンネルの間に位置する南部山blは腐植土層が厚く地震時の地盤変位に対応するため、12径間連続rc桁形式という特殊な構造とした。
高館トンネルの先にある延長925mの市川トンネルは、土被りが約2〜17mと浅く、トンネル終点部で百石自動車専用道路、国道45号と土被り約4mで交差する。工事は、トンネル部分の掘削が完了し、覆工コンクリート、明り区間の高架橋を施工中である。
ルートは、五戸川を橋梁で渡り、五戸町の北端を五戸トンネルで通過する。
五戸トンネルは延長1,065m、トンネル工事は完了し路盤・鉄筋コンクリート施工中である。
▲奥入瀬川橋梁
▲三本木原トンネルsensシールド機械
▲金浜高架橋
▲八甲田トンネル(東京方坑口)
▲八甲田トンネル(築木工区)
長大ベルトコンベア
▲八甲田連峰
▲八甲田トンネル貫通式「ねぶた」
トンネルを抜けると下田町に入り高架橋で通過し、奥入瀬川では本区間最長の奥入瀬川橋梁(l=406m)で渡る。橋梁形式は4径間連続合成桁を計画している。現在、3基のケーソン工事に着手し沈下がほぼ完了している。
六戸町の大部分をトンネルで通過し、初めの六戸トンネルでは十和田観光電鉄と交差する。
六戸トンネルは延長3,810m、地質は野辺地層及びその上位の地層である火山灰層が主体で、n値も低くばらつきがあり地下水位の高い未固結地山であることから、地山安定のためディープウエル工法による地下水の低下、天端崩落防止としての鋼管先受工等の補助工法を用いて施工している。掘削は平成14年4月から開始している。
六戸トンネルを通過後は、延長4,280mの三本木原トンネルを通過する。トンネル延長は八甲田トンネルに次ぐ長さであり、土被りは最小約2m〜最大約45m(平均約23m)で、地質は六戸トンネルと同様である。掘削方法はnatm工法で青森方より掘削を行ってきたが、平成16年7月、経済的かつ安全な施工方法としてシールドを用いた場所打ち支保システム(sens工法)を新たに採用し、東京方坑口より掘削している。
三本木原トンネル途中で東北町を通過し十和田市に入ると1級河川砂土路川を橋梁で渡る。その後、牛鍵トンネル(延長2,070m)を通過する。地質は野辺地層上部砂層を主体とし、土被りが最小約2〜最大10m(平均約6m)と非常に薄く全線に渡り1d以下のため、地表面の制約が無い区間については、地上から開削をして予め地山改良を行い、埋め戻した後にnatm機械掘削で施工している。
牛鍵トンネルの途中からは、高架橋及び小トンネルで通過し七戸町に入る。七戸駅(仮称)は、切取区間の地上駅で相対式2面2線で計画されている。同駅は十和田市、三沢市、野辺地町に近く周辺地域の利便性に優れ、観光上からも今後の発展が期待されている駅である。
七戸駅(仮称)から八甲田トンネルの入口までは、七戸町を切取、盛土、高架橋で通過し、現在高架橋、路線の地盤改良の施工を行っている。
八甲田トンネルは、みちのく有料道路とほぼ並行した延長26,455mの長大山岳トンネル。地質構造は新第三紀層の固結した火山岩主体の地質で、全体としてはトンネル中央部に背斜軸を持った大きな摺曲構造をしている。施工は6工区に分割し、両坑口及び4本の斜路で施工している。各斜路の延長は約700〜1,300mである。全6工区のうち最後まで残っていた大坪工区と折紙工区との間が平成17年2月27日に貫通した。複線断面トンネルの陸上トンネルとしては世界最長のトンネルである。現在インバートコンクリート覆工コンクリート及び路盤コンクリートを施工中である。
八甲田トンネルは、同鉱山地帯を通過するため周辺に数多くの鉱脈型鉱床が分布し、鉱脈周辺には鉱化作用時の熱水変質作用を受けた黄鉄鉱に富士鉱化変質岩が広範囲に分布している。鉱化変質岩の中の黄鉄鉱は、地下水や空気中の酸素と反応し、酸性水とともに重金属を溶出させ、周辺環境に影響をおよぼす可能性があった。このため八甲田トンネルでは、掘削発生土の処分に独自の判定方法を設け適切な分別・処理を行い環境保全に努めている。
このことは、環境に配慮した大規模トンネル工事として地域の環境保全対策に大きく寄与するものとし、平成16年土木学会環境賞を受賞した。
また、第5工区の築木工区は掘削発生土の運搬にトンネル坑口から土捨場までの、約1.7km間に長大カーブベルトコンベアを設置し、周辺に生息する希少動物に悪影響を与えないよう環境へも配慮している。
八甲田トンネル通過後は駒込川を橋りょうで渡り、田茂木野トンネルに入る。
田茂木野トンネルを抜け横内川を橋りょうで渡り、雲谷平トンネル(650m)、横内トンネル(145m)、松森トンネル(78m)の3本の小トンネルの工事と路盤、橋りょう工事を含む雲谷平トンネル工区に入る。現在、雲谷平トンネル、横内トンネルは掘削を完了し松森トンネルを掘削中である。
雲谷平トンネルからは橋梁及び高架橋が細越トンネルまで続く。この橋梁・高架橋区間では、金浜bl工区(719m)が平成15年8月に着手し、現在高架橋がほぼ完成した姿になっている。
細越トンネルは延長3,010mで、平成12年3月に着手し、平成15年10月に貫通している。現在、路盤鉄筋コンクリートを施工している。
その後東北縦貫道を橋りょうで渡り、三内丸山遺跡の西側を通過し、その後国道環状7号線及び沖館川を橋梁で渡り、青森市街地を経由して新青森駅に至る。
新青森駅は、島式2面4線の高架駅で、奥羽本線新青森駅に併設される。青森市は県庁所在地として商工業及び文化の中枢機能を担う中核都市であり、また北海道への玄関口として交通の要衝となっている。
東北新幹線の終着駅である新青森駅では1.6km北側には車両基地が計画されている。車両基地は新幹線車両の留置及び検修整備等を行う場所で、面積は約12ha、トンネルの発生土を利用した盛土約40万m3の施工が完了している。
北海道新幹線の概要
北海道新幹線新青森・札幌間の整備は全国新幹線鉄道整備法に基づき昭和47年6月に基本計画が決定され、昭和48年11月に整備計画が決定された。
その後、環境影響評価書の公告縦覧を行い平成14年1月に北海道新幹線新青森・札幌間の工事実施計画(その1)の認可申請を行った。
平成17年4月19日に北海道新幹線新青森・新函館間の工事実施計画追加認可申請を行い、平成17年4月27日に認可となった。
東北新幹線局の工事担当範囲は、新青森駅から大平トンネル入口までの約29kmの新設区間及び大平トンネルから青函トンネル入口(現jr津軽海峡線)までの貨物列車等との供用区間の約15km。今後は地元青森県と協力体制を整えて事業を進めていく予定である。
東北新幹線・八戸〜新青森間の整備に貢献
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