書 評
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全国知事会長である土屋義彦埼玉県知事が2月に発表した著書「小が大を呑む」-埼玉独立論(講談社)は、地方自治のあり方と地方分権を考える上で、非常に興味深い。タイトルからしてセンセーショナルだが、とかく中央依存体質の強い地方自治体は、いかにして自立が可能なのかを筆者自らの体験をもって検証したもので、全国自治体にとっても貴重な手引き書となりそうだ。 |
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土屋 義彦 つちや・よしひこ 大正15年生まれ。中央大学卒。昭和34年から埼玉県会議員を2期、昭和40年から参議院議員を5期務める。この間、昭和54年に環境庁長官として入閣、昭和63年第17代参議院議長に就任。 |
埼玉県といえば、厚生省事務次官、厚生省から出向していた県課長、そして彩福祉グループらによる汚職事件の舞台となったことから、この4月から国からの出向人事を返上し、新体制を敷いて再スタートを切った。現在、「彩の国さいたま」とのキャッチフレーズで、従来の東京のベッドタウンから自立した業務都市への脱皮を目指している。
そうした中で、現職2期目を迎えた筆者が、様々な国の規制の中で自治体の可能性を最大限に模索し、自立していくため、試行錯誤を通じて得た経験則を説き明かしたのがこの書。
構成は「まえがき」と「あとがき」を除き全5章構成で、前半は回想録的色彩が強く、県政における様々な改革や新規政策の紹介が大部分を占める。