糸魚川農地事務所管内は、新潟県の最西端に位置し、1市3町を所管する。全域が中山間地域であり、特別豪雪地帯でもある。また糸魚川市の一部を除く全地域が急傾斜地域の指定も受けている。
さらに、本州を東西に二分する糸魚川静岡構造線が通り複雑な地質を成している。特にこの東側の区域は地層の年代が新しく脆弱なため、全国でも有数の地すべり地帯となっている。この指定面積は管内面積の19%に及ぶ。
一方、周辺の山岳部は、中部山岳や上信越高原の2国立公園に接し、8つの温泉地も有するなど観光資源に恵まれた地域でもある。
■農業農村整備の主な取組
農業農村整備は、管内面積の4%・3,270haの耕地を中心に展開しており、中山間地域の生産振興と農村活性化を狙った整備及び地すべり対策など農地保全整備を重点的に推進している。
ほ場整備された水田は、姫川や早川、能生川、名立川等の河川沿いに帯状に広がる比較的平坦部が主であり、全体として整備割合は49%である。
農地や農業用施設などを結び、谷間往来の不便さ解消に期待がかかる広域農道の整備では、平成13年度に姫川に架かる「翡翠橋」が完成し、糸魚川工区である姫川か
ら早川地域までの直接的な連携が整ったところである。今後は残る能生、名立の2工区の早期完成が待望されている。
中山間地域における総合的な整備として現在まで3地区を対象に整備を進め、生産基盤の整備と併せて生活環境向上のための整備に力を入れてきた。昨年完成した活性化施設「おててこ会館」は、国の重要無形文化財「おててこ舞」の保存伝承や都市との交流促進に効果を発揮している。
山間部の地すべり指定地においては、農業を持続し農地や農業用施設を良好に維持保全するため、地すべり対策工により重点的に整備を進め、これまでに48地区の中で25地区の概成を見た。
また、地域の用水源として重要な山腹水路については、中山間地域総合農地防災で2路線の整備を
始め、防災効果の発揮と維持管理労力の軽減を目指している。
■今後の主な展開
管内では厳しい自然条件が一因ともなって過疎化・高齢化の進行に歯止めがかからず、また山間農地は未整備が多く耕作放棄地も増加しているのが実態である。このため、同事務所では中山間地域総合対策や農業集落排水、防災対策など各種事業を計画的・総合的に展開し、地域の実情に応じた整備を推進して、農業の持続性確保と快適で美しい農村空間の創造、安全な県土の形成に努めていく。
特に、高齢化等の影響により管理が困難になっている長大な山腹水路を整備促進し、用水安定供給による農地の維持保全は勿論のこと、地域用水や親水空間の提供など多面的機能の増進を図る。