建設グラフインターネットダイジェスト

札幌ドーム建設最前線 (2000/1)


「HIROBA OF DREAMS」の実現に札幌市が託す大きな夢

建設状況 平成11年秋

 2002年W杯サッカー大会の開催地のひとつとして札幌市が手掛ける「札幌ドーム(愛称:HIROBA)」の建設は、着工してから早くも1年半が経過した。
 進捗率は11月末現在で全体の約45%が完成。積雪シーズンまでには、屋根を両端から頂上へ組立ていく鉄骨工事がほぼ終了。年明けには観客席などの内部工事や、注目を浴びる“ホヴァリングサッカーステージ”にいよいよ着手する見込みだ。

  

 完成は、W杯開催の1年前となる2001年5月末を予定している。
 札幌ドームは、東京、大阪、ナゴヤ、福岡の各ドームに次ぐ日本の5大ドームのひとつとして数えられることになる。収容人員は東京ドームに次いで、また、空間の大きさでは福岡ドームに次いで日本では2番目となる巨大施設。
 ここでの最大のイベントといえばやはり、国内開催地となる10自治体のひとつに選ばれている2002年W杯サッカー大会だが、札幌ドームにはこの世界的なビッグイベントを支えるための最高技術、最新設備、地域特性を捉えた周辺環境など世界のあらゆる人々の心を引きつける工夫が凝縮されている。
 なかでも、屋内(closedアリーナ)、屋外(openアリーナ)の2つのアリーナ“デュアル(2つの)アリーナ”の間を移動式天然芝サッカーフィールド「ホヴァリングサッカーステージ」が空気圧により浮上して移動する世界初のシステムを採用し、人工芝の野球場と天然芝のサッカー場を両立させたことだ。
 ステージの重さはなんとジャンボジェット機20機分に相当する約8,300t。これを空気圧により約7cm浮かせて10分の1の重さにした後、36個の車輪で移動させる仕組みだ。これにより通常は天然芝をopenアリーナで自然の状態で日光に当てて育てることができ、試合のときにはclosedアリーナに引き入れることによって、ベストコンディションの天然芝で競技することを可能にした。
 このほか、世界レベルのライヴイベントや展示会などを一段と引き立たせる設備を整えた魅力溢れる施設という顔も併せ持つ。北海道の屋内施設で4万人以上の観客を収容できるのは札幌ドームが初めてで、エンドステージとセンターステージに対応する吊り支点をはじめ、優れた音響空間や暗転も可能とするなど、大規模空間を活かした様々な舞台アレンジや演出も可能だ。
 また、展示スペース14,500uの大空間も北海道最大。3m×3mの展示ブースの場合、約500小間設置可能で、インターセクションも加えると、17,800uまで展示スペースを拡大できる。
 多様性を生かして、アリーナ1万席と全スタンド席を利用した場合、最大席数は52,300席にも及び、アリーナ面に超大型ステージを設営すれば格闘技大会をはじめ、ミュージカルや演劇、地域イベントなどにも対応する。
 このほか、札幌市を一望できる展望台や、ドームに隣接して置かれる長さ150mのガラスシェルタータウンには、通年営業のレストランとカフェ、ドームショップを設ける。
 一方、駐車場は、敷地内に一般用約1,000台と、緑化スペースを利用した臨時駐車場約750台とを合わせた約1,750台(うち身障者用40台含む)の駐車が可能。これらとは別に関係者用駐車場約200台も完備する。バスターミナルは、敷地内に24バースのバスターミナルを設置し、大型イベント開催時には、地下鉄駅やJR駅などから、臨時バスの運行も計画中だ。



PR用ポスター

 ドーム建設に至る経緯は、1992年7月に2002年ワールドカップサッカー日本招致委員会に対して開催地としての立候補出願書を提出したことから始まった。その後札幌市は、札幌開催に向けた招致活動を進め、1994年1月には、豊平区が羊ヶ丘の北海道農業試験場の一部用地の取得と、ワールドカップ開催が可能なサッカー場を中核としたスポーツエリア整備を表明。同年4月に、札幌商工会議所とホワイトドーム推進会議が札幌市に対し、サッカー場のドーム化を要望。
 1996年1月に、札幌市がドーム化を正式に決定した。同年12月にワールドカップサッカー国内開催地10自治体が決定。翌1997年2月に札幌ドーム設計技術提案競技(コンペ)の最優秀作品が決定し、審査結果を公表した。
 同年5月、ドーム基本設計が開始し、翌6月には北海道農業試験場の一部用地を取得した。同年9月にはドーム実施設計が開始、翌1998年6月にいよいよ工事着手に至った。
 同年10月には、桂信雄札幌市長を代表取締役社長としたドームの企画、運営を担当する且D幌ドームを設立。さらに今年3月には、「HIROBA」と愛称も決定し、10月には、札幌ドーム条例が可決成立、シンボルマークも決定したばかりだ。
 札幌ドームの立地上の特徴は何といっても、豊かな自然環境に置かれていること。白旗山を後背地とした「豊かな自然環境」という立地条件から、「ガードニング=庭づくり」という設計方針のもと、ドームと周辺の自然環境の保全を両立させた「スポーツの庭」づくりをめざしたコンセプトは、北の大地ならではの提案といえよう。
 他のワールドカップ会場は、そのほとんどが陸上競技場との併用施設で、大会後のあと利用が心配されているが、札幌の場合、ドーム化したことにより、サッカーのみならず、野球、コンサート、展示会など様々なイベントに有効活用が可能となった。
 21世紀の幕開けの年、北海道に新たなる夢、感動の舞台が誕生する。

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