食彩 Speciality Foods

〈食彩 2008.11.14 update〉

寄稿

持続的なオホーツク農業を目指して基盤整備を展開

〜オホーツク・エリア・アイデンティティー(オホツクAI)を目指して〜

網走支庁産業振興部 整備課長 守屋   明
網走支庁東部耕地出張所 所長 市川 智啓
網走支庁中部耕地出張所 所長 大西 秀典
網走支庁西部耕地出張所 所長 野長瀬 隆


▲畑総事業 北見北地区 畑かん状況

【管内の概要】
 網走管内は、約278kmの海岸線でオホーツク海に面し、南北に約80km、東西に約200kmの広がりを持っている。17・18年度の市町村合併により26から19市町村に再編され、人口は33万人で全道の約6%、総面積は10,690km2で全道の約13%でほぼ秋田県と同じ大きさ、耕地面積は168,000haで全道の約14%、農耕期間の平均気温は15〜16℃、年間の降水量は600〜800mmと降水量が少ないことが特徴的である。
 最近、小雨傾向ではあるが、局所的に10分間に10mmのような豪雨に見舞われることがあり、表土流亡被害が発生している。また、雹被害・竜巻被害も起きており、近年気象変動の幅が大きく変化している。
 農業は、てん菜・麦類・馬鈴しょの畑作3品を中心に、タマネギ・野菜・豆類等を作付け、また、酪農・肉用牛の生産が盛んな地域で、非常に豊かな農業地帯である。
 いま、網走地方ではオホーツク・エリア・アイデンティティーを展開中で、オホーツク地域の農産物のブランド化や持続的オホーツク農業の確立を目指している。
 管内の農地は、泥炭土、火山性土、重粘土など、道内で最も多様な土壌分布をしている地域であり、農地の改良、客土・土壌改良による作土の物理性の改善、暗渠排水による湿害の解消、土づくりによる収穫量増・品質向上が図られてきた。
 さらなる農畜産物の品質向上、安全性の確保、オホーツクブランド化を目指すためにも、農地の基盤整備がより以上に重要性を増しているところである。

【事業の推進】
 事業の実施部門として、網走市、北見市、紋別市に3出張所が配置されている。

▲東部 畑地整備(除レキ):畑総事業 第2福梅地区 ▲東部 農道整備:畑総総合整備事業 小清水南部地区

『東部耕地出張所』の特色
 東部耕地出張所は、斜網地域を担当。
 農家1戸当たりの耕地面積が大きな畑作地帯で、専業農家によるてん菜・馬鈴しょ・麦類を中心に機械化された生産性の高い農業が行われており、20年度は21地区・事業費28億円あまりを実施している。
 事業の特徴としては、昭和50年度代に広域農道整備事業で整備し30年経過した函渠について、経年変化や交通量の増加などにより劣化が著しいため、19年度調査設計・20年度河川等下流域への汚濁を防止しながら工事を実施、危険を回避してん菜・馬鈴しょ等畑作物の広域輸送網の安全を確保する。
 また、経営体育成基盤整備事業「女満別豊住」地区では、「どじょうを どうしよう」をキャッチフレーズに、地域の小学生と協働して貴重種のフクドジョウ・ヤマメ・トヨミなどの引っ越し作戦を実施、環境配慮型の排水路整備を行っている。

▲中部 排水路工事:畑総総合整備事業 端野上右岸地区 ▲中部 畑地整備:中山間総合整備事業 端野豊北地区

『中部耕地出張所』の特色
 中部耕地出張所は、北見地域を担当。
 農家1戸当たりの耕地面積は斜網地域ほど大きくはないが、気象・土壌条件に恵まれ、畑作を基幹にタマネギなどの園芸作物・豆類・水稲・酪農など生産性の高い農業が行われており、今年度は20地区・事業費27億円あまりを実施している。
 近年、6〜7月、農作物に対し必要な時に雨が降らない小雨傾向で、有効雨量が足りない状況が続いている。畑地の有効土層の水分の保持を効果的にするための畑地かんがい施設が有効な手段で、地域においても畑かん施設の重要性が再認識されている。
畑地帯総合整備事業の北見北地区でリールマシンを購入、また、留辺蘂温根湯地区では水利権の変更に併せて畑かん施設の整備を行う予定である。
 これらの施設整備とともに、畑地の客土・暗渠排水などを実施しているほか、食の安全・安心や表土流亡対策のための土づくりや、排水路や農地などの適正な維持管理の取り組みが行われている。

▲西部 農道特別 野上地区 第1工区 ▲西部 ブロック(40t)据付状況
海岸保全事業 東地区 H19 離岸堤工事
▲西部 海岸保全事業 東地区 H19 施工 離岸堤工事 完成

『西部耕地出張所』の特色
 西部耕地出張所は紋別・遠軽地域を担当。
 東紋地域は酪農を基幹として園芸作物や薬用作物などの栽培に取り組み、また、西紋地域は草地などの飼料基盤を中心とした大規模酪農が広く行われており、今年度は11地区・事業費23億円あまりを実施している。
 事業の特徴としては、草地整備事業公共牧場「はまなす」地区において、機能強化・育成牛の預託を受け入れるための育成舎・ほ育舎、管理棟、バンカーサイロ、堆肥舎、ふん尿処理施設など、20年秋の預託開始に向けて整備を進めている。
 この育成舎は木造構造としており、紋別地域で森林認証(環境に配慮した森林管理・整備・植林などを行う)を受けている森林から搬出される木材が使われる予定で、地域一帯となった地産地消・CO2の発生を抑える(鋼材よりも加工段階で、また、広域搬送より地域材を地域で加工することで発生量を抑えることができる)取り組みが行われている。
 地域では、コントラ・TMRセンター建設等を契機に分業化が推進されており、効率的な酪農経営や労働力の軽減を図ることを目指している。

 今後とも持続可能なオホーツク農業を目指し、食料自給率を向上させるために基盤整備を展開していく。


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