▲芝転換システム |
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北海道の都市と農耕地は、ともに、その歴史において世界の東西から移植された直交系平面の計画方法に依っており、この一致は、はからずも都市と農耕地とを統一的に把握する「ガードニング(庭造り)」の方法が文化的に所在することを示唆している。庭は古来、自然と考案が、身体と意識が融合する場所であり、刻々変化する様態(モード)の表出が意図された場所であった。札幌ドームは、いわば自然が埠頭のように都市に延びてきている農耕地の先端に位置しており、その敷地全域は農耕地に属しつつ、「スポーツの庭」へと置換的にカードニングされる。この庭は、羊ヶ丘のゆるやかな地形にあわせたいくつかの層で構成されるが、市街地としての都市は、線型の「小さな町(タウン)」として、国道36号と平行して移植される。ドームの屋根は、あずまやであり、フィールドや観客席は地形である。特にサッカーの芝のフィールドは、「ホヴァリングステージ」として浮遊する地形であり、様々な様態を誘起する。 札幌ドームの多様な用途上の様態は、閉じられた(closed)状態と開かれた(open)状態とが同時に、あるいは操作的に表出されるclopen(クロープン)の空間構造の概念を誘導する。clopenの空間構造は、なだらかな地形の形成をめざす「シングルスロープスタンド」のアリーナと、自然の草地からなる「グラススタンド」のアリーナからなる「デュアル(相対の)アリーナ」のガードニングによって基礎づけられる。次に、「デュアルアリーナ」は、90mスパンのボウブリッジによって力学的に均衡づけられ大きな開口部をもつ「clopenシェル」の屋根によって、それぞれ閉じられたアリーナと開かれたアリーナの相補的な対となる。さらに、しつらいとして「ホヴァリングステージ」をふくむさまざまな可動装置群からなる「モビールシステム」が、さまざまな使用の様態にあわせて、clopen空間の諸特性をその都度表出する。札幌ドームはモビールシステムによって現象する「デュアルアリーナのclopenドーム」である。 この全く新しい「デュアルアリーナ」をもつドームは、高度なスポーツ活動の展開とその享受ばかりでなく、市民による多面的な活動を誘起するであろう、「デュアルアリーナ」と「モビールシステム」は市民の手にゆだねられ、新しいガードニングが次々と展開されるであろう。と同時に、ドームをめぐる風景自体の力、広い敷地に出現する庭の力は、常時多くの人々を集めると思われる。そうした人々のために、「アミューズメントコンプレックス」が「小さな町」の延長として用意される。これもまた、ドームは閉じていても、公共空間としてのドーム、縮小された都市は生きている、clopenの空間構造のひとつの現象である。 |
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