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コンペ報告 札幌ドーム


原グループが他の優秀作より抜きん出てVゴール

世界初の空気圧による芝入れ替えシステムを導入

【最優秀作品】


●原広司グループ

設計者:原 広司(日本)[総括代表]
    株式会社アトリエ・ファイ建築研究所(日本)
    株式会社アトリエブンク(日本)
建設会社:株式会社竹中工務店北海道支店(日本)
     大成建設株式会社札幌支店(日本)
     Schal Bovis,Inc.(アメリカ)

 札幌市は2月17日、市内のホテルで、「(仮称)札幌ドーム」設計・技術提案競技(コンペ)の最優秀作品を発表し、デュアルアリーナを持つ原広司グループ(原広司、アトリエ・ファイ建築研究所、アトリエブンク、竹中工務店、大成建設、シャールボヴィスインク)の作品を選出した。
 2月6日,7日の両日に札幌芸術の森アートホールで海外を含む9チームが提出した作品を一般公開した後、審査会で優秀作品を5点に絞り、同月15日の公開面接審査を経て、最優秀作品1点が選ばれた。
 (仮称)札幌ドーム提案競技審査委員会(委員長・伊藤滋慶応大学教授)は、最優秀作品について「投票の結果、全会一致で決まった。ほかの4案には見られない明らかな思想的主張を備え、主張が案の全体に理論的な一貫性を持って浸み込んでおり、委員全員が深い感銘を受けた」と選考理由を説明。
 ここでいう主張とは、札幌ドームが建設地である羊ヶ丘の風土・環境と対立するものであってはならず、融和する造形物にしなければならないというもの。特に、羊ヶ丘、札幌の自然と歴史的変遷への愛情が読み取れ、自然と調和したデザイン、デュアルアリーナという新しい発想が、最優秀作品に相応しいものとなったと評価されている。
 原グループの作品は、天然芝と人工芝の入れ替えシステムのほか、デュアルアリーナ、芝の入れ替えに圧縮空気を使うホヴァリングステージを、世界初の試みとして取り入れている。
 ドーム部分のクローズドアリーナと隣接する屋外部分の天然芝オープンアリーナとで構成されており、ドームで天然芝を使って競技を行う場合は、オープンアリーナの天然芝を空気圧で浮上させ、二つのアリーナの間に設けた幅90mのゲートを通してドーム内に引き入れる。
 天然芝のフィールドは、芝への日当たりや観客の視野に配慮するため、いずれのアリーナでも活用できるようにしてある。ドームの姿はパソコンのマウスを二つ合わせたような優しくスマートな形で、周辺景観へのインパクトを抑えるためアリーナを約15m掘り下げ、その分、屋根の高さを抑えてある。
 今回のコンペは、国際化の時代を反映し、WTO政府調達協定の対象物件となるもので、アメリカ、オランダ、韓国、トルコ、オーストラリア、スイスなど海外から14社が参加する国際色豊かなコンペとなった。また、積雪寒冷地において初めてとなる大規模ドームコンペには、国内外の代表ゼネコン、重工業メーカーらも参加し、「世界初」の個性溢れる最新工業技術を建築技術に応用していた。




【審査講評】

 白旗山を後背地に、雄大に広がる自然への入り口となっている敷地とドームの構想を、“ガードニング(庭造り)”の手法により、一貫して理性的に創りあげており、その提案からは様々な情景が発想される。
 主要市道羊ヶ丘線沿いに直線540mにわたり、北海道の歴史的な「殖民区画」のモデュールを取り入れ、札幌の風景とマッチさせた直線的樹木の配置が特徴的である。
 国道36号沿いに位置するアミューズメントコンプレックスである小さな町“タウン”には、レストラン、売店等を内包した線型の町が形成されており、都心の街方向に対して魅力的な情景を与えている。
 クローズドアリーナとグラススタンドを持つオープンアリーナから成るデュアルアリーナは、一体利用が可能であることから多様な利用形態が考えられる。このデュアルアリーナ実現のために提案されたクロープンシェルによる閉じたアリーナと開かれたアリーナの対比は見事であり、また全てのフォルムは滑らかに形づくられている。
 芝の可動装置は、空気圧による浮上方式であり、旋回によりクローズドアリーナにおいては、サッカーの軸と野球の軸を一致させることができ、所要諸室の共用化が可能となっている。また、屋外にあっては、芝の育成に必要な日射量の確保が可能であることなどよく検討された計画といえる。
 ドームの支持地盤、地下水脈への影響、土量バランスを考慮し、フィールドのレベルを設定していることは評価できる。また、ドームの半地下化、ムービングウォールからの自然採光、外気を積極的に取入れることによる自然換気、外気冷房の採用など自然エネルギーの有効活用にも意を用いている。
 クローズドアリーナのシングルスロープスタンドは、臨場感のある客室空間を創り出すとともに観客席上部でのセキュリティー管理を一元化していることも高く評価できる。また、最適なサイトラインの確保とゆるやかな勾配は、見る側の立場に立った快適性・安全性に配慮されたものとなっている。
 また、避難動線が積雪時と非積雪時において一致している計画は、観客の安全性に配慮した提案であり評価できる。



【入賞作品】

◆MOTION2002

◆グループWAKE UP

◆グループ・ひつじ

◆サッポロKTMSグループ

【その他の参加作品】

◆石本・NBBJ・鴻池組・安藤建設・プロジェクトチーム

◆メフメット・アルマン・グラン(アルーラン設計事務所)

◆ARGE B&E/H&W/I&R

◆姉妹都市・ポートランドアーキテクト,AIA


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