January.2007

郵政民営化に反対して離党を余儀なくされた造反組の復党をめぐって、世論が割れている。割れているというよりも、むしろ批判的な声が過半数で、多くの国民は否定的だ。
 武部前幹事長は「参院選のための復党であってはならない」と強調したが、前回衆院選で、なりふりかまわずあらゆる人脈を駆使し、青物市場の店主までも駆り出して彼らの選挙区に刺客を送り込み、落選に追いやった小泉本隊の司令官であっただけに、彼らの復党による軋轢や報復を懸念する心情は無理もない。
 選挙のために政治信条を曲げるような打算的振る舞いは許されないという主張は、確かにもっともで、それが国民の民意でもある。しかし視点を変えれば、それは口先のきれい事でしかない。数の論理が先行するデモクラシーにあっては、参院選はもとより今春の統一選に向けても、選挙応援要員となる党員を一人でも確保したいのが政党側の本音だろう。安倍首相としても、政権と政局の安定化を図る上では、まずは統一選で足下の支持基盤を固め、参院選で大勝することで体制を固めたいと考えるのは、政治に臨む立場としては自然な発想でもある。
 実際に、党籍を失った造反組は、やむなく独自のミニ政党を設立したが、少数派であるがゆえに後援会事務所に毛の生えた程度の体制でしかなく、現実的な政治的成果を上げているとはいえないのが実態だ。極論すれば、政党助成金が目当てではないかとも見られる。
 一方、第三者的に見れば、復党組の代表者らによる記者会見で「郵政民営化法案には反対したが、民営化に反対とは選挙中も言ってない」と主張した堀内氏は、なぜ民営化賛成、法案反対のスタンスにあった民主党へ鞍替えしないのかと、素朴な意味でも嫌味の意味でも首を傾げたくなる。一方、民主党側についても、資金の扱いと多数派工作に長けた小沢代表が、造反組の吸収へと動かなかったのも不思議だ。

安倍内閣の支持率が、発足当初の60パーセント超から52パーセント代へと降下している。新内閣というものは、発足してから3ヶ月間くらいは、もの珍しさと新鮮味から国民も好意的で、高支持率であるのが通例と言われる。だが、北朝鮮の核実験直後の対応で高得点を稼ぎ、国内では景気も拡大基調へと向かっており、政策執行の素地は順境にあるため、もう少し高支持率が続くかと思われた。
 ところが、自民党広報戦略チームが外部機関に委託した調査では、最近になって若年層の支持率が下がっているという。原因は、雇用政策と年金対策を求めているのに対し、安倍内閣は教育改革と景気拡大政策が主要な内政テーマとなりつつあるためという。
 美しい国をつくるには、確かに教育は欠かせない。教育に基づく思想も理念もないために、言葉も振る舞いも支離滅裂な者が増えたとは、昨今言われることである。また、ある工場の若い作業員が、漢字が読めないために、作業所に掲示されていた注意書きが理解できず、重大なミスを犯し、これに頭を痛めた責任者が、全従業員に漢字の講習と試験を研修として始めたという事例が報道番組で紹介されていた。番組では、携帯電話によるメールの普及で漢字の知識を使わなくなったり、生活の中で手書きという作業が激減したことが原因と結論づけていたが、少なくとも義務教育は受けて卒業した成人ばかりである。にも関わらず、こうした事例が見られるのは、我が国の教育や躾の内容と質が劣化していることの現れだろう。
 国家が美しいかどうかは、安倍首相の個人的な美意識の問題だが、将来像や理想像を描き示すことは重要である。ただ、100m先を見るだけでなく、足下の1m四方を見渡すことも必要だ。ようやく拡大局面を迎えた景気を、企業レベルだけでなく個人レベルでも実感できる政策も、置き去りには出来ない緊急課題である。今なお不正規雇用の不安な立場に置かれている若者達は、むしろそこに救いの手を求めているということだろう。


過去の路地裏問答