September.2007

今年もまた終戦記念日を迎える時期が来た。長崎にファットマンが投下され、そして広島にエノラゲイが飛来し、リトルボーイが投下されて日本の戦力は尽き果てた。キノコ雲を見た後、人々は高熱を帯びた爆風と放射能にのたうち回り、62年の歳月が過ぎてもその傷が癒えることはない。戦勝国アメリカは原爆投下を正当化し、柳沢防衛大臣が「やむなし」と発言したことで波紋を呼んだ。反面、先の参院選で大勝を果たした民主党の小沢党首は、シーファー駐日米大使との会談で、テロ対策特措法の延期要請を拒否するなど、強気の外交姿勢で話題を呼んでいる。日米の新しいあり方と、改めて大戦の意義を問い直す時期を迎ているのかも知れない。

先頃、BSで「真珠湾への道」と題する検証番組が放映された。近衛文麿の子孫と、戦前戦後の日系アメリカ人の子孫とによって、国内と国外の二つの視点から近衛内閣の外交政策と国際情勢を検証し、開戦に至る道筋を振り返るドキュメンタリーである。

中国戦略を批判された日本の脱退によって、国際連盟は国際機関としての機能を失い、さらにドイツの脱退によって、ヨーロッパ連合組織としての機能も失った。一方、連盟とは一線を画していたアメリカ国内では、日本の対中政策への反感が強まり、日系人への排斥運動が何度も展開された。ヨーロッパと対立し、アメリカとも反目し、そして中国と敵対する孤立状況の中で、一部には中国との和睦によって戦争を回避しようとの動きもあったが、関東軍の強固姿勢に呼応するかのように、国内世論も強固な主戦論へと傾き、そうした回避策はことごとく未完に終わってしまった。

日本は明治維新後、欧米列強の文明を採り入れて近代化を進めた結果、それらと同等の文明と軍事力を持つとともに、それを維持するには列強と同じ資源・物資が必要になった。これは当然ながら、利権の衝突を生む。後進勢力を抑えようとする先進国の抑圧に対抗するには、さらに強大な力が必要となり、それを行使するには大義も必要である。大東亜共栄圏の理念は、そのために利用された格好になったが、それは中国、ひいてはアジアの独立を目指す代理戦争の様相をも呈していた。

この番組が放映される数日前には、革命戦士・チェ=ゲバラの伝記映画や、その最期までを検証するドキュメンタリー番組も放映された。アルゼンチンの富裕な家庭に生まれ、医師を目指しながらも、南米各地への放浪の旅を通じて、アメリカ資本の南米支配による貧困の現実に衝撃を受ける。その結果、彼はキューバの革命家・フィデル=カストロの釈放に伴い、キューバ独立の戦いに参戦してこれを実現させた。カストロ政権樹立後は海外使節団に参加し、日本の工場を視察したり、広島原爆慰霊碑への参拝も行っている。

しかし、彼の人生の目標は、新生キューバ政権の要人でいることではなかった。内政に一定の目途が立ってからは要職を退き、コンゴ革命、ボリビア革命にまで身を投じていったが、米CIAの計略の結果、これが最後の戦いとなって命を落とした。彼にとっての大義は、北米資本からの独立と、軍事政権による圧政からの国民の解放にあった。

世界の先進国を巻き込んだ世界大戦は資本主義の戦争であり、ゲバラのゲリラ戦は共産革命の戦いであるから、イデオロギーにおいては対照的である。だが、その根底にあった大義においては、相通じるものがあったような気がしてならない。


過去の路地裏問答