December.2007

国会会期中でありながら、民主党・小沢党首の辞任と撤回騒動によって、またも同党の脆弱体制が露呈した。原因となったのは福田首相を通じて持ちかけられた政権の連立話だが、小沢党首としては連立後の多数派工作による政権奪取を狙っていたのではないかと推測されている。しかし、せっかく参院選で大勝を果たした民主党としては、次期衆院選でも大勝によって政権奪取を狙うというのが王道であり、それを実現したいと考えるのはもっともだ。そのため、連立構想に過敏に反応し、挙って反対するのも頷ける話で、ワンマン気質の小沢氏がそれに直情的に憤慨し、「委員らによる不信任」といった極端な感情的解釈によって、咄嗟に辞任を表明したと見られている。傍観者の目には、まるで子供の喧嘩のような話だが、民主党はその直後に慌てて慰留したのであるから、よく分からない政党である。

状況を見れば、完全なる物別れの決裂状態であるから、党としては小沢党首を強いて慰留する必要はなかったはずだ。独自政党として政権を獲得しようとする基本戦略において、連立の選択肢を捨てなかった小沢氏は、その役職がトップの最高責任者であるだけに危険人物であろう。しかし、連立構想を言下に拒否せずに持ち帰ったことを批判しつつも、役職だけは継続してもらうというのは腑に落ちない。

報道では、トロイカ体制で各派閥をバランス良く率いるに足るだけの運営力と求心力を持つ人材がないことが、最大の理由と解釈されている。しかし、それは表向きの話で、小沢党首は撤回会見で「私は東北の田舎気質で…」と自らを評したが、田舎を理解し、郡部票を獲得できる人材がいないことが民主党にとっての痛手であろう。

民主党リーダーの構成を見れば、旧自民系の小沢党首と鳩山代表代行を除けば、旧民社・社民連系と社会党右派、中には高名な女性活動家の薫陶を受けた異色のフェミニストもおり、強引な寄せ集め集団である。人材は多彩といえるが、まとまりに欠けており、いわばかつてブームを巻き起こした勝手連の延長線上にあるようなものだ。勝手連は固定したリーダーを持とうとせず、細胞たる個人が、テーマごとに勝手に連合しては勝手に散会し、組織的な体制と実体を持たないことを生き様とするアメーバ集団であった。よって、トロイカ体制は各細胞の不満を吸収し、バランスを取るための苦肉の策として構築されたものだろうが、かえって実権を持つ本当のリーダーが誰なのか、権限の所在が曖昧になりがちだ。

しかも支持基盤は、革新的になればなるほど都市部が中心になるとされる全国的な構造から、マンション族、団地族の住む都市部が中心となり、田舎者の票を集めるには東北・岩手を基盤とし、鄙の論理を理解する小沢党首に頼らざるを得ないのが、痛恨の弱点といえよう。前回参院選での勝因は、自民への批判票を抜け目なく小沢党首が吸収していった結果でもある。

したがって、辞任はその弱点を見越したもので、小沢体制の下で党内を統括し、君臨するための一芝居だったとする見方もあるが、あながち納得できない話でもない。問題は、そうした脆弱性を持つ政党に政権を任せることができるかどうかである。トロイカ体制の最大の問題点は、意思決定のスピードの遅さと責任の所在が曖昧なところにある。原油価格が高騰し、物価が上昇しつつある中で、小泉−安倍政権によってボーダーライン以下に追い込まれた国民は、一分一秒を待ってはいられない経済環境に置かれているのである。


過去の路地裏問答