信濃川の治水安全度を高めるために

信濃川の治水安全度を高めるために

信濃川の治水安全度を高めるために

―― 大河津分水路 令和の大改修

国土交通省 北陸地方整備局
信濃川河川事務所 所長 福島 雅紀

1.はじめに

信濃川は、その源を甲武信ヶ岳(標高2,475m)に発し、長野市を経由、新潟市で日本海に注ぐ、日本一の幹川流路延長367㎞を持つ大河です。その流域は北アルプス、三国山脈などの豪雪域を抱えているため年間を通じて水量が豊富であることも特徴のひとつです。また、氾濫域には本州日本海唯一の政令指定都市である新潟市、施行時特例市である長岡市といった地方中心都市を有し、被害ポテンシャルは高くなっています。

信濃川河川事務所は、そのうち新潟県内の中流域と呼ばれている、大河津分水路河口から長野県境に近い十日町市の宮中取水ダムまでの85.6㎞、支川魚野川27.9㎞他を含めて総延長114.7㎞を管理し、地域の安全と安心を確保するための治水事業を行っています。

図1 大河津分水路改修事業区間平面図

2.大河津分水路改修事業(令和の大改修)の概要

大河津分水路は、信濃川水系信濃川の新潟県燕市付近より分派し、同長岡市の寺泊付近で日本海に注ぐ、延長約10kmの人工河川で、大正11年(1922)に通水し、令和4年には通水100周年を迎えました。

大河津分水路は、建設当時の技術的制約などから、河口に向かって漏斗状に狭まる形状であり、大河津可動堰付近の川幅約720mから、河口付近では約180mとなっています。このため、堰上げによる水位上昇が生じるなど流下能力が不足しています。また、分水路通水後100年が経過し、河床低下を抑制する要の施設である「第二床固」など施設の老朽化等が生じています。

こうした課題の解消のため、平成27年(2015)より大河津分水路改修事業が開始され、「令和の大改修」と命名して、山地部掘削・低水路掘削、第二床固改築、野積橋架替等を行われています。全体事業費は約1,765億円、事業期間は22年間で令和20年度の完成に向けて事業を進められています。

図2 大河津分水路改修工事の状況

3.大河津分水路改修事業(令和の大改修)の工事実施状況

平成30年度より河口部山地部掘削が本格的に着手され、掘削土砂はこれまでに大河津分水路右岸堤防の強化に用いられているほか、近隣自治体等で実施している公共事業に活用されるなど、地域の活性化に資する土砂の有効活用が図られています。また、令和2年度からは、低水路掘削が開始されています。

第二床固の改築にあたっては、現在の第二床固の約200m下流に新たに新第二床固(本体工:全長280m、天端高T.P.5.0m、下流水叩き高T.P.-4.0m、減勢工、護床工、魚道(両岸))を設置する計画で、平成31年2月に第Ⅰ期工事が着手され、令和6年度の完成を目指して鋭意工事を進められているところです。これまでに新第二床固本体の一部となる鋼殻ケーソンについて、全9基のうち6基の据付けを完了し、引き続き、3基の据付けに向け、工事を進めます。

図3 新第二床固 鋼殻ケーソン据付・設置状況

4.大河津分水路改修事業(令和の大改修)における先進的な取り組み

信濃川河川事務所は、全国の「i-Constructionモデル事務所」10事務所のうちの一つであり、「3次元情報活用モデル事業」として、これまで試行的に、3次元データを契約図書化として扱う工事の発注や監督・検査時のBIM/CIMモデルの活用検討などを進めているところです。また、VR空間に仮想現場を構築し多人数が同時に遠隔から参加し、デジタル技術を駆使して、BIM/CIMモデル、点群データ、画像データなどを組み合わせ、事業の「見える化」を行い、他者との合意形成や業務の効率化を図っています。このような取り組みを通じて、更に事業の生産性向上や職員の働き方改革にもつなげていきたいと考えています。

5.おわりに

大河津分水路の第二床固改築や山地部掘削等の事業推進にあたっては、厳しい現場条件や施工時の制約条件など、困難かつ大きな課題が存在します。このため関係機関との緊密な連携のもと取り組みます。

引き続き、着実な河川整備を地域の皆様のご理解・ご協力、さらには支援頂いている団体等との協働によって安全・安心な信濃川を目指して参ります。

北陸地方整備局カテゴリの最新記事