協賛広告/株式会社 大林組 東京本店 川俣ダム工事事務所

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地域と観光客に見守られながら目指すダムリフレッシュ工事の完遂

 

株式会社 大林組 東京本店
川俣ダム工事事務所 所長

北村 広志

 

1.はじめに

川俣ダムは1966年、利根川水系鬼怒川の最上流部に建設されたアーチ式コンクリートダムである。堤高117m、堤体長131mで両岸が切りたった断崖の急峻な地形に構築されたダムである。

川俣ダムは貯水池の水圧を両岸の岩盤に伝え支持するアーチ構造のため、岩盤の安定性を確保する方策として、岩盤内にPC鋼線を挿入し緊結して補強する岩盤PS工法により、支持岩盤の一体化を図ってきた。

川俣ダム周辺部補強工事は、約50年を経過した既設の岩盤補強アンカーの健全性を調査・検討した結果、追加の岩盤補強が必要と判断されたことから、既設のアンカーの間に新たに更新アンカーを施工し支持岩盤を補強する工事である。

写真 -1 更新アンカー計画箇所

2.工事概要とその特徴

工事はダム下流左右岸の切りたった断崖絶壁にアンカー施工用の構台を設け、それを足掛かりに更新アンカーを施工する。
更新アンカーは国内でも最大規模の削孔径216㎜、アンカー長最大75m、緊張力2,400kNであり、写真-1の赤丸の位置に左右岸とも各8段計画されている。

施工設備は資機材運搬用として左右岸を跨ぐ4.5t吊り固定式ケーブルクレーン、左岸側に1.2t吊り、ブーム長42mのタワークレーンを設置した。一方、右岸側にはダム下流のフーチング上から仮設足場を組み上げクレーン用構台を設け25tラフタークレーンを配置した。当工事の特徴を(1)~(3)に記述する。

写真 -2 右岸側構台(左)、写真 -3 左岸側構台(右)

(1)アンカーの高い施工精度

更新アンカーは既設アンカーの間に施工するため、近接する既設アンカーや他の地中構造物に支障してはならない。削孔時の孔曲がりを極力少なくすることや、長いアンカー体(テンドン)を破損することなく運搬し、正確に孔に挿入するなど技術的にも施工的にも高い精度を要した。

このため、削孔中の掘削データを収集、解析するとともに独自の孔内水中カメラを開発して地質状況を確認し、次孔の施工にフィードバックするシステムを構築した。さらに大口径ならではのロッド継ぎ足し時の精度を向上させる工夫も合わせて行った。また、作業に熟達した作業員を確保し、得られた各種データを参考に削孔機の稼働具合を調整しながら慎重に作業した。

テンドンの運搬、挿入に関してはテンドンの曲げ破損を防止する専用の運搬器具を製作するとともに、挿入用にテンドンを吊り替える装置を付加するなど様々な機械的技術を導入した。

結果、孔曲がりが少なく精度よく削孔することができ、かつ、テンドンを破損することなく正確に挿入することができた。

(2)断崖絶壁に設置する構台

「川俣ダム 足場」で検索すると必ず出てくる構台である。8段分の構台を下から上まで一気に組み上げると高さ80m近くなる。
ネットで有名になった右岸の構台はさらにその上にクレーン構台の足場が繋がったように見えたため、高さ100m越えの足場のようになった。

一方、左岸側は運用中のダムのため、出水期(6月15日~9月30日)にはゲート放流の可能性があり、特記仕様書にEL879m以下に仮設物を存置できないことになっていた。この制限標高にぎりぎり掛からない3段目アンカー構台を通年存置できるようブラケット構造にし、4段目以高の構台をその上に載せていく計画とした。

また、各段のアンカー本数が多いことから施工箇所を上下流方向に2分割し、上下段で同時施工することで工期の短縮を図った。

図 -1 アンカー配置概要図

(3)現場すべてが高所

左右岸とも切り立った断崖に構台を設置しているため、現場すべてが高所。作業すべてが高所作業となり、墜落・転落や飛来落下災害が起きた場合は、間違いなく重大災害となる。一方、川俣ダム下流には風光明媚な瀬戸合狭の遊歩道と「渡らっしゃい吊り橋」があり、休日ともなると観光客が多数来場し、橋上から現場全体が見える状況にある。SNSなどで好意的な評価を受けたこともあり、マスコミや足場を目的にした観光客が来るに至って「この現場で働く作業員に絶対に怪我はさせない」という思いを新たにした。

3.地域交流と伝統行事

川俣地区はダムができたときに移転された方々が住む地域である。今回の川俣ダムリフレッシュ工事を契機に、同じく移転した総鎮守の神社もリフレッシュさせたいという地域住民の熱心な思いを受け地域貢献として応えることにした。たまたま同時期に当社で日光輪王寺の改修工事を請負っており、日光東照宮なども手掛ける宮大工を手配することができた。地域住民の心の拠所である神社の改修も無事済み自治会からは感謝の意を表された。

また、春のダム湖周辺クリーンアップ作戦や日光市主催のふるさとサマーウォークなど観光地ならではのイベントがあり、当工事事務所も地域の一員との思いでお手伝いさせていただいた。

そのような縁もあり、夏の例大祭にお招きいただき、地域伝統の獅子舞奉納を幹部席で拝観させていただいた。激しい舞の動きもさることながら、青年団の代表者が舞の評価を幹部に問う場面では数百年の伝統の重さに、感動で体の芯が震えるようだった。

写真 -4 獅子舞奉納

4.おわりに

2020年、高齢化が進む川俣地区では新型コロナウイルス感染症の影響が大きいとして、観光イベントや伝統行事がすべて中止となった。たいへん残念である。行事がなくなっても四季おりおりに工事の状況を説明するなどして、地元の理解と協力を得て工事の完成に努めていきたい。

 


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